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システム思考とヒューマンセンタード思考の勉強会に参加して

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こんにちは、ネクストビートでプロジェクトマネージャーとして働いている一石です。
先日こちらの勉強会で、システム思考とヒューマンセンタード思考について学ぶ機会がありました。自分の頭の整理も兼ねてこちらで紹介したいと思います。本記事の内容は、学んできた内容のまとめとなります。

1. システム思考とヒューマンセンタード思考について

システム思考とは、複雑な事象の全体像を俯瞰して捉えるための思考法です。
複雑な事象を細かい要素の単位に分解し、複数の要素がどのように相互作用し合うかを分析して、全体としてどのような動きやパターンが生まれるかを再構築します。

ヒューマンセンタード思考とは、人間を中心に捉えた思考法です。
人間の感情や心理の側面に着目し、ロジカルシンキングでは合理的に捉えることのできない人間行動を捉えていきます。

2つの思考法を組み合わせることで、システムとして最適化されているだけでなく、ユーザーニーズに沿った実用的なサービスを生み出すことができます。
プロダクト作りやチームビルディング、業務フローの改善など様々なところで応用できます。
この2つの思考法を実践する上でのポイントについて勉強会では以下の観点でまとめられています。

2. システム思考のポイント

2-1. 全体俯瞰(Holistic View)

  • 部分最適ではなく全体最適を目指す

ある特定の事象のみにフォーカスするのではなく、一連の事象の全体像を捉えます。
例えばある機能でバグが見つかったとして、バグの発生箇所を修正することだけを見るのではなく、機能全体を俯瞰し関連する前後の処理まで目を向けることでより良い改善案を得られます。
また、ある業務を遂行するのに複雑な申請手順があったとして、ただ手順の簡略化を検討するのではなく業務フロー全体を見直すことでそもそも申請自体をなくす、といったアプローチができるようになります。

2-2. フィードバックループ(Feedback Loop)

  • 長期的にみてどのようなフィードバックループが働くかを把握する

フィードバックループとは、ある要素Xがある要素Yに影響を与え、その結果要素Yが再度要素Xに影響を与えていく循環構造のことを指します。
大きく以下2種類の循環構造があります。

  • 正のループ(増幅ループ)
    • ある変化がさらに同じ方向の変化を促進すること
      • 例:SNSのバズ
  • 負のループ(抑制・安定化ループ)
    • ある変化が起こった時に、それを打ち消したり安定化させる作用が働くこと
      • 例:サーバのオートスケーリング

一時点での状況だけでなく、時間経過とともにどのような変化が起こっていくかを捉えることが重要です。

2-3. ボトルネック特定とレバレッジポイント

  • ここを改善すれば大きな効果を得られるテコ入れポイントを探す

システム思考で全体を俯瞰し、どこがボトルネックなのか、また最小限の変更で最大の効果を得られるポイント(レバレッジポイント)を特定します。
本質的な課題箇所・攻め所はどこかを見定め最適化を図ります。

2-4. 時間軸と遅延効果

  • 瞬間的な因果関係だけでなく、時系列による変化に注目する

論理思考で瞬間的な因果関係を追うだけでは、誤った判断を行うリスクがあります。
顧客満足を考慮しない短期利益の追求や、データ量が増えると負荷が爆増するデータ処理などです。
前述のフィードバックループによる変化や、教育やブランディングといったすぐに効果は出ないが後から効果を発揮するもの(遅延効果)など、時間の流れによる変化まで捉えていく必要があります。

3. ヒューマンセンタード思考のポイント

3-1. 共感(Empathy)

  • "相手の本音や感情の動き、光景を見る"という行為を徹底的に行う

相手の感情の動きや相手の視点で物事がどう見えるかを徹底的に分析していかないと、表面上のニーズだけで本質的なニーズが見えずに「思っていたのと違う」というあさっての方向の結論に辿りつきます。
論理的に正解を導くことが難しい部分になるので、丁寧に観察や対話を行うことが重要です。

3-2. 反復的な検証(Iterative Process)

  • 最初から完璧を目指すのではなく、プロトタイプを作ってテストし、フィードバックを受け、修正するを繰り返す

出した結論が本当に対象者のニーズを捉えているのか、フィードバックを得ながら改善していくことが重要です。
実際に試してみることで、対象者との認識齟齬や、対象者自身も把握していなかったインサイトを見つけることができます。
何度も改良を重ねることで、ユーザー心理や行動を的確に捉えたプロダクトや仕組みを整えていくことが重要です。

3-3. 全体最適(Holistic Approach)

  • 関係者全員がWin-Winとなる仕組みを志向する

特定のステークホルダーだけが喜ぶものではなく、関係者全員に歓迎されるようにチューニングをおこなっていく必要があります。
「顧客満足を追求した結果サービス提供者側に重い負担がかかる」、「機能の細部に凝りすぎてエンジニアの開発負荷が増大する」、「営業効率を最優先してバックオフィスの負荷が増す」など、関係者が一部でも大きな負荷を背負いすぎると長期的には綻びが生じ、継続が難しくなります。
最適なバランスを保つために、ステークホルダー間で対話し「未来にわたって自走可能な状態」を模索していくことが重要です。

4. 2つの思考を組み合わせる

システム思考とヒューマンセンタード思考は、それぞれ単独では限界があります。

  • システム思考だけでは、ユーザーの感情や直感的な行動を無視してしまう可能性がある
  • ヒューマンセンタード思考だけでは、システムの無駄や非効率を見逃すことがある

たとえば「完璧なワークフローを作ったはずなのに現場で使われない」「ユーザーフレンドリーにこだわった設計だが成果が伸びない」といった時にはどちらかの思考に偏っていないか見直してみるとよいでしょう。

2つの思考法を組み合わせることで相互に補完しあい、システム全体の最適化を図りながらユーザーにとって使いやすく価値のあるものを築いていくことができます。

5. 感想

2つの思考法について、いままで字面だけを見てなんとなく分かった気になっていましたが、改めて要素を分解しポイントを見ていくことで少し解像度があがりました。
どちらの思考法でも「フィードバックループ」や「反復的な検証」を重視する点に共通点を感じ、PDCAを回していくことの重要性・アジャイル思考との親和性を感じました。
少し抽象度が高く日常で2つの思考法を明確に意識する機会は多くありませんが、業務で詰まった時などにはこれらの思考法を振り返って解決の糸口を探してみようと思います。

参加イベント:
「生成AI時代に求められる思考法の基礎 ~システム思考×ヒューマンセンタード思考~」

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