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生産性の高いチームに共通する「三角形の法則」

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はじめに

今年読んだ本の中で一番面白いと感じた書籍をご紹介させてください。
書籍は『トリニティ組織 : 人が幸せになり、生産性が上がる「三角形の法則」』になります。

ちなみに「トリニティ(Trinity)」とは「三位一体」を意味し、本書では 3人が互いにつながった「三角形」の関係 を指しています。

社会人として働く中で、「チームの雰囲気が良いと仕事がはかどる😊」「なんとなく居心地が悪いチームでは成果が出にくい😢」と感じたことはないでしょうか?
この本は、そんな「なんとなく」を、データに基づいて分析・考察した内容となっています。

📚 書籍紹介

トリニティ組織

📚トリニティ組織:人が幸せになり、生産性が上がる「三角形の法則」

著者の矢野和男さんは、日立製作所フェローであり、理論物理の考え方を組織論に応用した研究を行っています。2020年にはIEEE Frederik Phillips Award(権威ある賞🏆)を受賞されています。

特筆すべきは、ウェアラブルセンサを用いてビッグデータとして人間の行動を解析し、「幸せ」と「人間関係」の相関を探った点です。

💡 データが示す結論:幸せと生産性の源は「よい人間関係」

本書が主張する結論は、極めてシンプルです。

「様々な境遇のある中で、幸福な人生に寄与するのは よい人間関係

本書の中での「良い人間関係」とは、自分だけではなく 「それに関わる人達が幸せな関係」 を指します。

意外なデータ分析結果

また書籍の中で興味深かったのは、本書の分析において「幸せ」との相関が見られなかった要素です。

  • 対面コミュニケーションの多さ
  • 職場でのコミュニケーションする人の数の多さ

「働く」という誰もが経験していることなので、経験則的に上記は「幸せ」に関係しそうに思えます🤔が、本書のデータ分析では明確な相関が見られなかったとのことです。もちろん個人差や状況によって異なる可能性はありますが、先入観に惑わされやすい部分かもしれませんね。

🔺 三角形の法則:V字と三角形の違い

では、どんな状態が「良い人間関係」なのでしょうか?

本書の核心となる主張がこちらです。

  • 自分の周りにV字の関係が多いと、「良い人間関係」になりにくい
  • 自分の周りに三角形の関係が多いと、「良い人間関係」になりやすい

V字の関係(「良い人間関係」になりにくい)

V字とは、自分が2人の人と繋がっているが、その2人同士は繋がっていない関係です。

    自分
   /    \
  A      B
(AとBは繋がっていない)

この状態では、「自分」は「孤立感」を感じやすくなります。

問題があるのは、あなたにとってはどちらもよく会話する相手なのに、自分以外の2人同士は会話しない関係の場合です。これがあなたを不幸せにしやすいということなのです。

V字の関係では、自分が常に「ハブ」となって調整役を担う必要があり、区別や優先度の決定にエネルギーを費やしてしまいます。これは「用事だけのつながり」とも言えます。

三角形の関係(「良い人間関係」になりやすい)

一方、三角形とは、自分を含めた3人全員が互いに繋がっている関係です。

    自分
   /    \
  A ---- B
(全員が繋がっている)

この状態では、

  • つなげてもらう
  • 連携する
  • 協力し合う
  • フォローする

といった関係が自然に生まれ、「仲間関係」が構築されます。用件以外のことも話せる、人柄や体験をも共有しあう仲であり、信頼しあって結束した、透明性の高い関係です😊

🧠 トリニティ・シンキング

本書では、この三角形の関係を作る思考法を「トリニティ・シンキング」と呼んでいます。

あなたは日々、異質なものを区別するのか、一体化するかという選択を迫られています。その最小単位がV字か三角形か、というつながりの形なのです。

トリニティ・シンキングの3つのポイント:

  1. 自分の利益だけを追求しない - 自分にとっての損得とそのKPIにこだわらず、損得だけからものを見ない
  2. 区別をしない - 自分と他者、担当範囲と担当外などの分類や区別を柔軟にする
  3. 関係の捉え方を変える - 必要な分だけ人とつながるのではなく、必ずしも必要ではない関わりをも歓迎する

👨‍💻 エンジニア組織への示唆

私は本を読み進めるうちに、この「三角形の法則」はエンジニア組織を考える上でも示唆に富んでいると感じました。

従来型のPjM(プロジェクトマネージャ)の問題

従来型のPjMが「コミュニケーションのハブ」として機能する構造は、まさにV字の関係を生み出しやすい形です。PjMを介さないとチームメンバー同士が繋がれない状態は、PjMやメンバーの孤立感を生む可能性が出てきそうですね。

スクラムと三角形の関係

一方で、スクラムの考え方は三角形の関係を作り込みやすい構造です。少人数のチームで、PO,SM,開発者(デザイナ、エンジニア)から構成されるメンバー全員が互いにコミュニケーションを取る形は、自然と三角形のネットワークが形成される構造で面白いですね。

どちらの手法でプロジェクトを進めていくにしても、人のつながりの構造を意識できるようになると、一段上のプロジェクトマネジメントに繋がりそうです。

✅ 実践への第一歩

まずは、自分の仕事の関係者間で、三角形がうまくできているか?を振り返ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。

  • 自分がよく話す相手同士は、互いに話しているか?
  • V字の関係があれば、その2人を繋げることはできないか?
  • チーム内で孤立している人はいないか?

私自身もEMとして、コミュニケーション設計を考える際に、この「三角形の法則」を意識するようになりました💪。 また、開発組織のLTでも共有して、皆さんに知ってもらうことから始めています。

📝 まとめ

  • 幸せと生産性を分けるのは「良い人間関係」に相関性あり
  • V字の関係は孤立感を生み、三角形の関係は幸せを生む「良い人間関係」に
  • コミュニケーションの「構造」(三角形)が重要
  • 自分の周りの関係性を三角形にする意識が大切

人間関係の「構造」という視点は、なかなか新鮮でした。もちろん、本書の主張がすべての状況に当てはまるわけではなく、あくまで一つの視点・仮説として捉える必要があると考えています。ただ、チームや組織を考える上でのヒントとして、私自身は参考にしていきたいと思います。

興味を持たれた方は、ぜひ書籍を手に取ってみてください📖 本記事で紹介しきれなかった「フロー状態」や「必要な多様性の法則」など、他にも興味深い内容が多く含まれています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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