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ゼロから築くAI協働【第一幕】2週間の作業が1日に。AIアシスタントを"育成"し、開発チームの生産性を爆上げした全記録

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「この仕様、誰に聞けば分かるんだっけ…?」

開発チームなら、一度は経験するこんな場面。その原因は、ドキュメントが古びて"遺跡"化しているか、更新が追いつかないか、あるいは——そもそもドキュ-メントなんてものが、存在しないか

私たちのチームが直面していたのは、まさに最後の「ドキュメントが無い」という状況でした。全てがチームメンバーの頭の中にしかない、いわゆる"暗黙知"の状態です。

正直、ドキュメント作りって、めちゃくちゃ大事なのは分かっているけど、ゼロから作り上げるのは、本当に骨の折れる作業なんですよね。

もし、そんな絶望的な状況から、チームの"教科書"となるドキュメントをたった1日で作り上げられるとしたら…?

こんにちは!株式会社Nextaでエンジニアをしているbikです。

これは、私たちのチームが生成AIを単なる「ツール」から、自律的に思考し、驚異的なアウトプットを出す「アシスタント」へと"育成"し、開発プロセスに革命を起こした物語です。

本記事は、私たちがAIと共に歩んだ、成功と失敗、そして驚きの発見を綴る物語の、第一幕。私たちのチームがいかにして圧倒的な生産性を手に入れたのか、その軌跡を余すところなくお伝えします。

はじまりの小さな一歩:面倒な資料作成も、AIとやれば半分以下の時間で

私たちの挑戦は、どのチームにもありがちな、ささいな、でも放っておくとジワジワ効いてくる、そんな問題から始まりました。新しく立ち上がったBlazorプロダクトのチームで、開発者ごとにコーディングのスタイルが微妙に違っていて、レビューでの「ここの書き方、統一しましょうよ」というやり取りが、結構な時間になっていたんです。

「この課題を解決するため、まずはEditorConfigやコードクリーンアップのルールを網羅した、チームの"教科書"を作ろう!」

そう考えたものの、公式ドキュメントを読み解いて、全ルールをまとめるのはなかなかの重労働。普通にやったら、集中しても丸1日は潰れてしまう。そんな作業でした。
「もしかして、これってAIにやらせられるんじゃ…?」

私たちの戦略は 「AIの適材適所」 です。

  1. 調査員 (by Perplexity): まず、Web検索が得意なPerplexityに、Microsoftの公式ドキュメントのURLをポンと渡し、「この記事から、設定ルールを全部リストアップして!」と丸投げ。これで、網羅的な一次情報を集めてもらいます。
  2. 執筆者 (by Gemini): 次に、その生の情報を文章構成が得意なGeminiに見せて、「エンジニア向けに、このルールのメリットと具体例を分かりやすく解説して」と、対話を通じてドキュメントを"教育"していきました。

このAIとの共同作業の結果、8時間以上かかると見込んでいた作業は、わずか3〜4時間で完了。実に50%以上の工数削減です。
この「小さな成功体験」が、「AI、こいつはただの便利ツールじゃないぞ…?」と私たちの見方を変える、大きなきっかけになったんです。

最大の挑戦:2週間の絶望が、1日の希望に変わった日

小さな成功で味をしめた私たちが次に挑んだのは、チームが抱える最大の課題。プロジェクト固有のアーキテクチャや共通コンポーネントの仕様をまとめた 「基盤指南書」 の作成です。

約10画面、6種類の独自パネルコンポーネントを含むこのドキュメント。手作業で見積もってみると、チームの主力メンバーが2週間、他の仕事をほぼ止めて取り組まないと終わらない。 そんな、ちょっとした"絶望感"さえ漂う作業でした。

「これも、AIに任せてみたらどうなる…?」

手法は、ある意味とても無謀でした。私たちのプロジェクトのソースコード一式を、AI(Cursor)に丸ごと読み込ませたのです。そして、こうお願いしました。

「このプロジェクトの全体像と、主要なコンポーネントの役割を説明するドキュメントのドラフトを作ってくれない?」

AIが数時間で吐き出したドラフトは、驚くほど正確で、「え、ここまでやってくれるの?」というのがチームの正直な感想でした。

もちろん、AIは完璧じゃありません。コードの構造は理解できても、その裏にある**「なぜその実装にしたのか」という設計の"意図"**までは汲み取れない。ここからが、人間とAIの共同作業の見せ所です。

AIが作ったドラフトという「最高のタタキ台」を元に、私たち人間がレビューを行い、「その解釈は少し違うな。このコンポーネントの本当の価値は〇〇を実現するところにあるんだよ」といった "魂" をAIにフィードバックし、文章を修正させていく。このサイクルを繰り返しました。

この、2週間以上かかると覚悟した作業が、AIとの共同作業により、実質的なドラフト完成までにかかった時間は、わずか1日。実に90%以上の工数削減です。AIは、私たちのチームの生産性を根底から覆す、強力なパートナーになった瞬間でした。

まとめ:AIは"育成"するパートナーである

結局のところ、AIはやっぱり魔法の杖じゃなかったんですよね。AIの能力を最大限に引き出す鍵は、人間が「監督」となり、的確な指示とフィードバックで、対話を通じてAIを"育成"していくことにありました。

人間の役割は、手を動かす「実行者」から、AIを導く「ディレクター」へ。これって、なんだか新しい時代の働き方みたいで、ワクワクしませんか?

しかし、私たちのAIとの旅は、こんな輝かしい成功ばかりではありませんでした。

次回、第2話では、このプロジェクトの裏で私たちが経験した、手痛い失敗——「生成AIのAPIで5万円溶かした話」——について、正直にお話ししたいと思います。お楽しみに。


皆さんの話も聞かせてください!

この記事を読んで、皆さんのチームではどう思いましたか?「うちではこんな風にAIを使ってるよ!」とか、「こんな挑戦をしてみたい!」とか、あなたの声を聞かせてください!気軽に絡んでくれると、めちゃくちゃ嬉しいです。

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