ひろゆき氏の雑談論から学ぶ、エンジニアのための「生存確認」としてのコミュニケーション
こんにちは。
ネクスタで、SmartFの開発エンジニアをしている、コミュ障気味の日野岡です。
「最近、急に寒くなりましたね。」……と、あえて天気の話から入ってみました。。
私たちは普段、効率を重視する開発現場に身を置いているせいか、「意味のない会話」を避けがちです。特に弊社のフルリモート環境だと、「Gatherで雑談する時間があったらチケットを消化したい」「Slackでオチのない投稿をして通知を飛ばすのは申し訳ない」と考えてしまいがちです。 正直、私自身もかつては「雑談=ノイズ」と考えていた時期もありました。
しかし、先日読んだひろゆき氏の記事『こりゃ人間関係がぐっとラクになるわ…ひろゆきが「雑談は『今日は寒いですね』で十分」と言い切る深い理由』の内容が、今の開発チーム(どちらかと言えば私)におけるコミュニケーション課題にあまりにも刺さる内容だったので、技術的な視点も交えて整理してみたいと思います。
結論から言うと、雑談は「情報の伝達」ではなく、プロトコルレベルでの「接続確認(Ping)」だと捉えると、景色がガラッと変わりました!
「意味」ではなく「チューニング」としての会話
記事の中でひろゆき氏は、雑談の目的について以下のように語っています。
ひと言で言えば、雑談とは“チューニング”。理屈臭く言えば、人と人が接続するための通信確認。「この人、敵じゃないよね?」っていうWi-Fiチェックのようなものです。この接続確認をせずにいきなり本題に入ろうとすると、エラー表示が出る。
これを読んだ瞬間、「あ、これ完全にネットワークのハンドシェイクだ」と腑に落ちました(本当は、できるだけ上手い事言いたかっただけです・・・)。
私たちエンジニアは、つい会話の「ペイロード(中身・情報)」の質を気にしがちです。「面白い話をしなければ」「有益な情報を共有しなければ」と身構えてしまいます。でも、TCP通信で言えば、データ転送の前に SYN -> SYN-ACK -> ACK のやり取りが必要なように、人間関係にも「回線は繋がってますよ、安全ですよ」という確認プロセスが必要なのではないでしょうか。
リモートワークで「あの人、怒ってるのかな?」「この仕様変更、伝えづらいな……」と感じる時、それは多くの場合、情報の不足ではなく、この「接続確認(ハンドシェイク)」が不足している状態なのかもしれません。
「独り言」という最強の非同期コミュニケーション
では、具体的にどうやってその「接続」を作るのか。記事の中で紹介されていたトレーニング方法が非常に実践的でした。
要するに雑談の構造は、「独り言+相づち」。つきつめれば雑談とは、「独り言にリアクションが返ってくるだけ」のものです。
これは、開発現場における「分報(Times)」文化や、Slackのステータス活用に通じるものがあります。
例えば、オフィスで独り言を言うのは少し勇気がいりますが、Slackのつぶやきチャンネル、分報チャンネルなどであれば、まさにこの「独り言」が機能します。
- 「あー、このライブラリの依存関係、解決しないなー」
- 「VPNがまた切れた……」
- 「今日のデータベース、遅すぎない?」
これらは、業務上の「報告」としてはノイズかもしれません。でも、この独り言に対してチームメンバーがスタンプを一つ押してくれるだけで、「あ、見守られているな」「ここにいていいんだな」という心理的安全性(エアの握手)が生まれます。
記事にもある通り、オチなんて必要ないんです。「見たまま、感じたままを出力する」こと自体が、周囲に対する「私はオープンポートですよ(話しかけて大丈夫ですよ)」というアドバタイズになるのだと感じました。
「続ける力」より「始める力」
もう一つ、大きな気づきを得たのが以下の視点です。
大事なのは「話し続ける力」ではなく、「話し始める力」。
(中略)
だから僕は、雑談のコツを訊かれたら、必ず言います。「始めれば勝手に続く」と。
開発の文脈で言えば、完璧な設計書を書いてから共有するのではなく、ドラフト段階で「ちょっと方向性見てほしいかも」と投げかける感覚に近いかもしれません。
会話のラリーを続けることにリソースを割く必要はなく、ただ「トリガーを引く」だけでいい。Slackで言えば、「おはようございます、今日は寒いですね」と、つぶやきチャンネルに投げる。これだけで、場の空気が温まり(記事で言うところのエンジンオイルが回り)、その後のコードレビューや仕様確認の摩擦係数がぐっと下がるわけです。
まとめ
「雑談=サボり」ではなく、「システム(チーム)を安定稼働させるためのヘルスチェック」と再定義することで、明日からのチャットやミーティング前の沈黙が少し怖くなくなる気がします。
- 雑談は
Pingであり、Handshakeである。 - 中身(Payload)が空っぽでも、接続確立(Connection Established)に意味がある。
- 独り言(Logging)を吐き出すことで、異常検知や早期対応にも繋がる。
これからは、ミーティングの冒頭で沈黙が訪れたら、勇気を出して「今日は寒いですね」というパケットを投げてみようと思います。返事が「ですね〜」だけでも、それは立派な ACK ですから。
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