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デジタル・イノベーション人材育成プログラム「課題解決ブートキャンプ」に参加してきた

2024/03/04に公開

概要

2024年2月24日(土)に静岡市で開催されたデジタル・イノベーション人材育成プログラム in静岡 第2期 課題解決ブートキャンプに参加してきました。
今回はその内容紹介と受講してみての感想を記載していきたいと思います。

動機と自己紹介

私は普段、静岡で主にBtoBのサービス開発に携わっている新卒9年目のエンジニアです。
主戦場はフロントエンド(Web,スマホネイティブ)ですが、年次が上がるにつれてバックエンドやクラウドインフラ(主にAWS)までを扱うようになっており、所謂フルスタックエンジニアを目指している最中です。

そんな私がデジタル・イノベーション人材育成プログラム in静岡 第2期 課題解決ブートキャンプに参加した動機ですが、私自身のキャリア変遷によるところが大きいです。
というのも、ここ最近は開発だけでなくマネジメントや新規企画系の立場でプロジェクトに関わることが多くなり「開発者とは異なった視点、頭の使い方」が求められる機会が増えてきました。
平たく言うなら今までやっていた「システム開発」はビジネス全体の中の1プロセスであるため、もっと広い視点・異なるレイヤーの知識や考え方・マインドを知る必要が出てきました。
なので、自分の中の新しい引き出しを増やしたい思いで参加することにしました。

前提知識

静岡県外の方には(あるいは県内でも)耳馴染みのない単語がいくつかあるかと思うので、先に紹介します。

「デジタル・イノベーション人材育成プログラム」とは

約7ヶ月の期間に渡り、ICTを中心にさまざまな分野の大学教授や専門家の講義・セミナー・ワークショップを受けることができる講座です。
学生から社会人まで多様な受講者が学び、交流することができる場としても機能しています。

今期が2期目で、昨年2023年の8月から開始しています。

参考:SHIP - デジタル・イノベーション人材育成プログラムの第2期を開講します!【受講料無料】
参考:SHIP - 受講者募集チラシ

「課題解決ブートキャンプ」とは

私が参加したのが、上記の「デジタル・イノベーション人材育成プログラム in静岡 第2期」の最終プログラムである 「課題解決ブートキャンプ」 です。
「デジタル・イノベーション人材育成プログラム」の受講生の方にプラスして、本ブートキャンプからの参加者を含めたメンバーで行われます。

https://boot-camp-202402.peatix.com/

「デジタル・イノベーション人材育成プログラム」の受講生の方にとっては、ここまで学んできた内容の総決算の内容で、一部おさらい的なもの以外は基本的にワークショップ形式で進んでいきます。

狙いとして「ビジネスイノベーションの実践方法を短期間で体感する」が挙げられ、以下のようなキーワードが重要とされます。

  • 未来思考
  • エフェクチュエーション
  • 共創

未来思考

「未来」を描き、それを実現するために必要な思考法です。
具体的なアプローチとして、既知であり充足されている 「Known領域」 と対になる 「Unknown領域」 を捉えます。
その際に何を基軸にするかがポイントで、例えば「自分(自社)あるいは他者(他者)からも見えていない(考慮できていない)領域はなんだろう?」といった形で関係性から深掘りしていく方法などがあります。

エフェクチュエーション

サラス・サラスバシー教授(バージニア大学ダーデン経営大学院)が提唱した理論で、優れた起業家たちが「予測不可能な未来」や「目的の曖昧性」に直面しながらどのようにビジネスを創り出すか、の思考や行動パターンを分析した意思決定における理論です。

特に有名なのが、起業家の暗黙知を表した5つの行動原則で以下のようなものです。

  • ①「手中の鳥」の原則
    • 目的からでなく、既存の手段で何か新しいものを作る
  • ②「許容可能な損失」の原則
    • 期待される利益、ではなく「どこまでの損失を許容できるか」を基軸にする
  • ③「クレイジーキルト」の原則
    • 多くの利害関係者を巻き込み一体となってゴールを目指していく
    • 大きさや形や色、図柄が異なる布から作られた一枚布「クレイジーキルト」のイメージ
  • ④「レモネード」の原則
    • ネガティブな状況(予測不能、期待した効果が得られない、失敗etc...)さえも利用して対応していく
    • アメリカの諺 「When life gives you lemons, make lemonade(レモンを与えられたなら、レモネードを作ればいい)」 より
  • ⑤「飛行機の中のパイロット」の原則
    • 不確実な状況、未来に対してコントロールできる要素を駆使して対応する

エフェクチュエーションはしばしば「コーゼーション」と対立関係にあるかのように語られます。
コーゼーションとはゴール(求める結果)から立脚して「そのためには何をすればいいか」を考えていく方法です。
確かにアプローチの方法としては真逆ではありますが、 どちらか片方が優れているというわけではなく(二者択一というわけではなく) 、状況に応じてそれぞれを柔軟に取り入れていく必要があります。

共創

誰も思いつかなかったようなアイデアとは往々にして個人から生まれるものでなく、複数人のアイデアの掛け合わせ(化学反応)によって生まれます。
1人目のアイデアAと2人目のアイデアBを掛け合わせてアイデアCが生まれ、さらにそこに3人目のアイデアDを掛け合わせることでアイデアEが生まれる、といった具合に専門領域やバックグラウンドが異なる人と共創することが「Unknown」を生み出すカギになります。

当日の流れ

先に書いた通り 「デジタル・イノベーション人材育成プログラム」の最終フェーズが今回の「課題解決ブートキャンプ」であるため、まずは今までの内容を総さらいする感じで始まりました。
私の立場(課題解決ブートキャンプからの参加者)からするとどれも新鮮な内容で、先の「未来思考」や「エフェクチュエーション」などの手法について概要を理解しました。

その上で「今、世の中で起こっていること(新しく生まれたテクノロジーetc...)」や「地域、社会が抱える課題」をどのようにキャッチしていくか、そしてそれを踏まえてどのように課題を設定していくかを学びます。
ポイントは 「課題」と「問題」は異なる ということで、現在から未来への時間軸をベースにしたときに「現状とあるべき姿とのギャップを解消するのが問題解決」であり、「あるべき姿と理想の姿とのギャップを解消するのが課題解決」です。
ここでいう「理想の姿」というのが先ほど出てきた「Unknownの領域」に内包されます。
ここから先のワークでも「課題」と「問題」という言葉は明確に使い分けがされていました。

ここまでで2時間弱の座学、その後はグループワーク形式で実際に「課題」を定めて、それに対してどういったアプローチを取っていくかを深掘りしていきます。
チームメンバーが最近身近に感じている地域の課題を共有していくことから始まり、ランダムに抽出された新聞記事をそこに加えて「社会にはこういう課題が存在する」というのを共通認識化します。
その上で解決策としては何があるのか、をこれまたランダムに抽出された「技術」や「ビジネスアイデア」や「データ」から発想していきます。
そして抽象的に考えていたアイデアに対して、ビジネスとして成立させるために必要な事項(ステークホルダーのや、キャッシュフロー)の定義を肉付けしていくことで最終的なビジネスアイデアを完成させるという流れです。

そして最後に、出来上がったビジネスアイデアに対して「自分は何ができるか(あるいはどんなことを知らないといけないか)」を考えます。構想段階のビジネスである以上、どこかに深掘りされていない(もしくは未知の)領域があるため、そこを自覚して行動計画を立てていきます。

全体の流れとしては以上です。

参加してみての感想

ほとんどがグループワークなので手を動かしながら、意見を交わしながら進めていくことになります。
このグループワークが本当に「普段とは異なる頭の使い方」の連続で、後半はだいぶ思考疲れしてしまいました。
職業柄、論理的思考をすることはあまり苦にならないのですが、アイデア出しや発想を飛躍させるクリエイティブな思考はどうしても考えが堂々巡りしたりスクラップ&ビルドを繰り返す必要があるので、いい刺激になったように思えます。
メンバー同士の何気ない会話をきっかけにアイデアを練り直したり全く別なアイデアが浮かんだり、とまさに「共創」の効果を感じることが多く、最終的には当初のアイデア草案からは思いつかないような成果物が出来上がりました。世の中の革新的なビジネスはこのようにして生まれるんだな、というのを疑似体験できたのが大きな経験です。

総じて、新しく得るものが多く密度の濃い1日でした。
疲労感に見合った経験を得られたので、もし次回開催があるなら自分のように「課題解決ブートキャンプ」のみでの参加も断然おすすめです。もちろん、中長期的に体系立てて学びたいという方は「デジタル・イノベーション人材育成プログラム」を受講するのもアリだと思います。

第3期がある場合はアナウンスがされると思うので、興味のある方はぜひぜひチェックしてみてください。
https://ship-shizuoka.jp/news/

また、SHIP(Shizuoka innovation platform)では様々なイベントが開催されていますのでそちらもぜひチェックしてみてください。
https://ship-shizuoka.jp/events/

追記(2024/06/14)

3期生の募集が始まっていました!
https://ship-shizuoka.jp/2024/06/10/1906/

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