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技術を感じさせないテック企業「くら寿司」

2025/01/23に公開

導入

皆さんはくら寿司好きですか?


E PARKくら寿司ページより引用

くら寿司は日本の大人気寿司チェーン店で、これを読んでいる方も行ったことがある人が多いでしょう。

そんなくら寿司には、ただの寿司屋とは思えない最先端技術が沢山導入されていることをご存知でしょうか?

話題になったポスト

先日、このようなポストがXで話題になりました。

このポストは、持ち帰り商品の表示をしているモニターからラズパイがぶら下がっている様子をユーザーが写真を取って投稿したものです。
このポストは現時点で1万いいね、2000RTされるほど話題になりました。

私は、以前にもくら寿司でラズパイを見たというポストを見たことを思い出し、検索をしてみると沢山の人がくら寿司でラズパイを発見していることが分かりました。

くら寿司にラズパイがある...

次が、一部のツイートです。

このように、くら寿司では1店舗のみではなく、多くの店舗でラズパイを導入していることが分かります。

そして調べてみると、沢山の技術が見えないところで使われているのがわかりました。

ポストの正体

先ほど例に上げたこのポストは、くら寿司の入口にある、状態待ちモニターの写真で、そこから垂れるようにラズパイが見える状態で置いてあったそうです。

このラズパイの動作としては、モニターに直接ラズパイをつけてブラウザを表示させているだけのようです。

前章、最後のポストを拡大してみてみると、ドメインが写っており、調べてみると株式会社EPG,Inc.が運営している順番待ち&予約システム「EPARK」というシステムを使用していて、そのサーバーで処理されたデータをブラウザで表示しているようです。

このシステムは75件もの特許を取得しているらしく、2019年には約200億の資金調達を行い、2020年にはユーザー数3000万人の大人気サービスとなっています。

このようなサービスを使うことで、くら寿司のスムーズな客の流れを作ることが出来ているのです。

技術一覧

調べてみると、くら寿司には沢山の技術があることが分かりました。それら全てを説明しようととても長くなってしまうため、探してみて見つけられた技術を一通り上げてみます。

  • スマホで予約機能(独自アプリ)
  • 順番待ち&予約システム「EPARK」
  • 専用機を使ったチェックイン
  • 画面をタッチせずに操作可能な端末
  • 自動で席の案内
  • テーブル内収納
  • 抗菌寿司カバー
  • スマホで注文
  • オーダーレーンを使用した注文の自動配達
  • リミットスイッチを使用した皿カウンター水回収システム
  • ビッくらポン!
  • 皿の枚数を自動でカウントする仕組み
  • セルフ会計
  • 流す商品、数量、タイミングの自動分析
  • 自動炙り機
  • 製造管理システム
  • 椀リング開発
  • 時間制限管理システム
  • 寿司ネタ供給装置
  • これ以外に特許は大量にあります

このように目玉技術を上げるだけでこれだけあり、更にこれに連なる技術は沢山あります。
今回は「皿の枚数を自動でカウントする仕組み」についてのみ議題に取り詳細に掘り下げます。

皿の自動カウント問題

まず、ご存知でない方のために、説明すると、くら寿司では会計の効率化を図るために、自動で食べた皿の枚数を計算して、値段の判定を行っています。

既存の問題点

昔の多くの回転寿司では、会計時にスタッフの方が席まで来て、皿の枚数を値段ごとに一枚ずつ数え合計を計算していました。毎回スタッフが来て数えなかったと行けないため、人件費的な問題はもちろん、数え間違えや皿単体の金額のミス、皿の隠蔽など多くの問題があったと思われます。

そこをくら寿司は、それらの問題を技術で解決しました。
皿を数えるという一見シンプルなことですが、ここには色々な問題があり、それを技術を持って解決しました。それらの問題や対策するための技術についてくら寿司の注文方法から一つずつ紐解いていきます。

くら寿司の注文方法

くら寿司の注文方法として次が挙げられます。

くら寿司の注文方法

  • 流れてくる寿司を取る
  • タッチパネルを使って注文する
  • スマホを使って注文する

投入口からの判定

回転寿司であるくら寿司では、寿司がテーブルの横を回転しています。
そして、その寿司を取っているかの判定は、シンプルで下の写真のような机の横にある投入口にいれることで、横にあるリミットスイッチが皿のカウントを行いサーバーに送るシステムになっています。

くら寿司公式ページから引用

因みに、この投入口から入った皿は下で流れている水のレーンを辿って洗い場まで流れるような仕組みになっています。この技術によって皿のカウントが出来ると同時に、今まで会計後に運んでいたスタッフの労働を減らすことが出来ました。

この技術からくら寿司の中でも古くからあり、長年に渡って使われてきました。
しかし、皿の隠蔽や取れれた皿の種類やスイッチのごまかしなどまだ多くの問題が残っています。

新AIカメラシステム

そこで考えられたのが、「新AIカメラシステム」です。下の画像が特許申請時の画像になります。


特許情報プラットフォーム J-PlatPatから引用

41と42にカメラが有り、これらのカメラがAIを使って開閉をされたかを判定しています。公式からの発表は次のような文章になっています。

回転レーンによる商品提供への不安を払拭し、回転寿司の文化を守るために、これらの迷惑行為に対応するAIテクノロジーを活用した「新AIカメラシステム」を開発いたしました。本システムでは、回転レーン上に設置されたAIカメラにより、回転レーンを流れる「抗菌寿司カバー」の不審な開閉を検知すると、当社本部でアラートが鳴り、本部担当者が直ちに該当店舗の責任者へ電話連絡。連絡を受けた店舗では、異常が検知された寿司皿を速やかに撤去し、お客様へお声がけいたします。また、「店舗遠隔支援システム」を活用することで、迷惑行為発生時の録画映像や対応中の店舗の様子も確認でき、場合によっては、速やかな警察への通報も可能となります

公式より引用 https://www.kurasushi.co.jp/author/004447.html

結構、物騒なことがメインに書かれていますが、寿司が開閉したかを判定する技術を作りました。何のネタが取られたかまでは分からなくそのテーブルで寿司が開閉されたのかを判定する仕組みを作ることができました。

次世代版 新AIカメラシステム

そして、この技術の発表から少しの月日が立ち、この技術を進化させ、取れられたネタの種類までを判定するようになりました。

しかし、取れれたネタの判定をするのは、非常に難しく新たな技術が導入されました。

実現するために、くら寿司は回転する寿司のケースを改良しQRコードを後ろにつけました。

この事例に対して、Google Developersさんから詳しく説明が上がっていたため、その内容を引用して紹介します。

くら寿司ではレーンを流れる寿司には”抗菌寿司カバー「鮮度くん」”という透明なプラスチックのケースが付い ています。これは寿司の鮮度を保ち、誰も触れないことで清潔さを守るためのケースです。
このケース上部には寿司ネタの種類を記載したQRコードを設置しています。


Google Developersより引用

⼀⽅、レーンに沿って配置された各テーブルには、レーンの上流と下流に、レーンの直上となる場所にカメラを設置しています。このカメラは TensorFlow の処理を⾼速化する Coral を搭載したRaspberry Pi に付属したもので す。


Google Developersより引用

このカメラでQRコードを識別するとともに、TensorFlow を⽤いて鮮度くんから⽫が取られたかどうかを認識しています。


Google Developersより引用

具体的には上流を通過した時点で鮮度くんが閉まっている事を検知し、下流で開いている場合、そのテーブルで鮮度くんから⽫が取られたと判断することができます。ここでQRコードで識別した寿司の種別をあわせることで、どの寿司がどのテーブルで取られたかを識別することができます。
これらの識別や検知のデータは Raspberry Pi 内で⾼速に⾏われ、原則としてその結果のみが店内に設置された サーバに送信されるため、システム全体としてのデータのやりとりは⼩さなものとなります。
検知デバイスとして Raspberry Pi を選んだ理由はくら寿司が持つ経験に基づいています。ローカルで TensorFlow の⾼速処理を実現するために Coral Edge TPU を⽤いていますが、Coral ⽤に設計された Dev Board を⽤いるのではなく、すでに別の⽤途で店舗で数千台稼働させた経験のある Raspberry Pi に Coral を搭載する形態を採⽤しています。

Google Developers | TensorFlow 事例 : Coral を⽤いて回転寿司の会計を⾃動化するくら寿司より引用

https://developers-jp.googleblog.com/2021/04/tensorflow-coral.html

このようにして、くら寿司では2つのカメラを利用して皿の裏にあるQRコードをCoral を搭載したRaspberry Piを使用してTensorFlowを使って分析を行いどの皿が取れれたかを判定して、サーバーにデータを送っています。

Raspberry Piが選ばれたのは、既にくら寿司で大量の使用スタックがあったというのだから驚きです。やはり、くら寿司には数千台のラズパイが稼働していたんですね...

このような技術を使うことで、くら寿司は会計の自動化を行っているらしいです。
消費者には、この複雑な技術を感じさせることなく、ユーザー体験の非常に素晴らしいものを使わせてもらっています。

https://ameblo.jp/omochi-benrishi/entry-12794346616.html

あとがき

技術への挑戦

このようにして調べてみて、くら寿司は技術に対して一生懸命なんだなと思いました。
調べてみると、色々試行錯誤してるのが見つかりました。

https://x.com/dpsk/status/1375727527633715200
https://x.com/chikun_JPN/status/1767503737071997294
https://x.com/pomo/status/1289895652344791040

iPadとかUbuntuとかAndroidとか色々試行錯誤している様子が伺えます。

https://www.kurasushi.co.jp/author/002296.html
https://www.cio.com/article/2076212/くら寿司、ロボティクス活用での非接触型店舗実.html

また、本文を書くにあたり、特許を色々と調べて分かったのですが、いろいろな試行錯誤の様子が伺えて非常に特許ページ見るの楽しかったです。

くら寿司は単なる寿司屋ではなくテック企業なのかもしれないと感じました。

面白かった例を次に上げて本記事を終わります。

下から出てくる寿司

パッカーンする寿司

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