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偶然の出会いが変えた育児UX 〜「必要ない」と思っていたロボット掃除機がデジタルネイティブな息子にもたらしたもの

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1. イントロダクション:諦めていた家事の効率化

子育て中の家庭において、家事の負担軽減は永遠のテーマです。
私たちNCDCでも、クライアント企業の事業を通じて、いかにユーザーの日常的なペインポイントを解消し、より良い体験(UX)を提供できるかを常に考えています。

我が家も例に漏れず、共働きで4歳の息子と1歳の娘がいます。
ロボット掃除機の導入は検討はしていましたが、「床に置いているものが多いから、ロボット掃除機を導入したとしてもどうせ掃除機使うことになるからいらない」という結論に達していました。

これが、長らく我が家の持っていたインサイトでしたが、しかし、ひょんなことから無料でロボット掃除機を手に入れる機会があり、この固定観念は、たった数日で劇的に塗り替えられました。

本稿では、この偶然の出会いが、いかに我が家の育児UXを向上させたのかを、コンサルタント視点で分析します。


2. 導入前のインサイト:なぜロボット掃除機を「使えない」と思っていたのか

多くの家庭、特に幼い子どもがいる家庭では、おもちゃや絵本、洗濯物などが常に床に散乱しています。

従来の掃除機を使う場合、「まず床のモノを片付ける」→「掃除機をかける」という二段階の作業が発生します。この「片付け」こそが最大のボトルネックであり、私はロボット掃除機を導入しても「結局、床を片付ける手間は変わらない」と考えていました。
また、子供が遊ぶプレイマットや、子供用テントがあり、それらを片付けないとロボット掃除機が駆け回れるスペースなど微々たるものです。

つまり、導入前のハードルは、**「期待される効果(掃除)に対する、事前作業(片付け)のコストが高すぎる」**という、費用対効果の悪さだったのです。


3. UXの向上ポイント①:4歳児の「所有体験」と「ペット化」

ロボット掃除機が我が家に届いた瞬間から、4歳の息子の興奮は冷めやみませんでした。我が家の集合住宅では猫が飼えず、「猫を飼いたい」と言っていた息子にとって、動くロボットは、代替的なペットという位置づけになったようです。

彼はすぐにロボット掃除機に「ロボボ」と名前を付け、ゴミを「ロボボのエサ」と定義したようでした。

「ロボボ、ご飯だよ!」

と言わんばかりに、何も言わずに、黙々とちぎった雑紙をロボボのそばに置き、起動させて「餌やり」を始めたのです。

これは、デジタルネイティブ世代特有のUX認識かもしれません。
日頃からAlexaに話しかけて過ごす彼にとって、ロボットは単なる家電ではなく、対話可能で、自身の行動によってフィードバックが得られる「エージェント」なのです。
ロボットを
「ツール」ではなく「家族/ペット」として捉えることで、息子は初めて「自分のペット(ロボット)を自分で動かし、世話をする」という所有体験と責任感
を自発的に獲得したように思えます。


4. UXの向上ポイント②:間接的な「環境設計」と「家事参加」

この「ロボボのペット化」が、親にとって最大のメリットを生み出しました。

息子は、朝起きるなりロボボを起動させ、その動く様子を飽きずに眺めています。そして、ロボボが動きまわれるようテーブルや椅子を動かします。

親が「片付けなさい」という指示をするのではなく、息子が「ロボボが動けるように環境を設計しよう」という動機に基づいて行動するようになりました。

要素 Before (親主導) After (ロボボ主導)
モチベーション 親の指示による受動的な「片付け」 ロボボのための能動的な「環境整備」
タスク 「親の掃除」のための片付け 「ロボボの活動」のための片付け

結果、我が家の床は、毎日に綺麗な状態を保てています。
掃除機をかけるという作業を介さず、息子がロボボのために動くという行動変容を通じて、家事負担が軽減されたのです。
ロボボは、息子の家事参加の一役を担ってくれています。

もちろん、タイマーセットすればロボボは夜中に勝手に掃除を始めてくれますが、それでもロボボはテーブルや椅子は動かせません。その役割を息子が自発的にし始めたことに意義を感じています。


5. まとめ:高かった「導入ハードル」と低かった「利用継続ハードル」

結局のところ、ロボット掃除機の導入は、私たちの既存の行動様式を変えるという点で、導入前のハードルは非常に高いものでした。

しかし、ひとたび導入し、家族(特に子ども)がロボットを**「単なる家電」ではなく「愛着の対象」として再定義すると、その後の利用継続ハードルは極めて低くなる**ことが分かりました。

ロボット掃除機が提供する真の価値は、単なる「掃除機能」ではなく、「子供の行動を変容させ、家事への参加を促す機会」という新しい生活のUX設計にあると結論づけられました。

偶然手に入れたロボットですが、今や我が家にとって手放すことのできない育児のソリューションとなっています。

おそらく、普段のプロジェクトでも、このように実際に現場に取り入れてみないとどのような行動変容が起きるかわからないというのは多くあると思います。
その際は、高いモノを買うのではなく、MVPやPoCで必要最低限のものを導入してみるというアプローチで事業変革、企業変革の火種にしてみてはいかがでしょうか。

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