1時間のスプリントでスクラムを回してみた

2025/02/07に公開

NCDCのコンサルタントチームでは週1回の頻度で、スクラムの勉強会をスクラムをしながら開催しています。
初学者はスクラムを理解することを、経験者はより深くスクラムを理解することを目的として行っており、スクラムの基本を体験できる実践的なプロジェクトを通して皆で学習を進めます。

スクラム開発の中心には、短期間のスプリントを通じて継続的な価値提供を目指すプロセスがあります。一般的には1~4週間程度のスプリントが採用されますが、「もしスプリントを1時間に短縮したらどうなるのか?」という疑問から実験を行いました。この記事では、その実験の背景、プロセス、得られた発見について共有します。

なぜ1時間のスプリント?

1時間のスプリントを開始する前は、1ヶ月や2週間という期間を区切ったスプリントを実施しており
勉強会の時間がすなわちスクラムイベントを実施する時間としていました。
スクラムイベントというのは主に、スプリントプランニングやスプリントレビュー、レトロスペクティブです。
しかしながら勉強会という特性上、実務に影響があってはいけません。
実務の都合上、POやスクラムマスターがスクラムイベントに参加できなくなるなど、障害が発生しました。
そこで、勉強会1時間の枠でスプリントを実施し、その中でプランニング、開発、レビュー、レトロスペクティブを行おうと思い立ちました。

プロセス

まず、スプリント0として、プロジェクトゴールとそれに必要なバックログアイテムを作成しました。
またそれに対して、完了条件とストーリーポイントをつけています。
・プロジェクトゴール
各自にSlackアプリのGoogleカレンダーを連携してもらって、不在予定をいれてもらう

・BacklogItem
休暇取得者としてGoogleカレンダーアプリを連携する 8pt
休暇取得者としてGoogleカレンダーに休暇を登録する 8pt
休暇管理者としてSlackで休暇ステータスを確認する 8pt

1時間のスプリントでは、通常のスクラムプロセスを以下のように圧縮しました:

  • スプリントプランニング(10分)
    タスクを明確化し、1時間内で達成可能なスプリントゴール、スプリントバックログを設定しました。
    例: 「SlackとGoogleカレンダーの連携手順作成」や「Googleカレンダーでの不在登録方法手順書作作成」など。

  • デイリースクラム、スプリント作業(30分)
    スウォーミングでバックログの消化

  • スプリントレビュー(10分)
    成果物をチーム内でレビューします

  • レトロスペクティブ(10分)
    次回の改善点を洗い出します

実際にやってみて気づいたこと

メリット

1. 迅速なフィードバック

1時間のスプリントでは、非常に短いサイクルで作業を進めるため、フィードバックを早期に得ることができます。これにより、問題を早期に発見し、すぐに対応することができるため、プロジェクトの進行がスムーズになります。

2. 集中力の向上

短い時間枠でスプリントを行うことで、チームメンバーはより集中して作業を行うことが求められます。長時間の作業では注意力が散漫になることがありますが、1時間に絞ることで集中力が高まり、効率的に作業が進みます。

3. 小さなステップでの成果物の確認

1時間という短い期間でタスクを終わらせることを目指すため、より小さなステップで開発を進めることができます。このアプローチにより、進行中の成果物が常に確認でき、リリースまでの道筋が明確になります。
逆を言うと、できないという判断も早急にできるようになります。

4. 正確な見積

1時間のスプリントだと、開発が30分になります。そうすると、見通しが十分にできるため見積が正確になります。

デメリット

1. 準備期間が長く必要

スプリント0とも呼ばれますが、スプリントを回す前の全体的な構想を練る時間や、1スプリントで完了させられるようにストーリーを細分化する時間が必要となります。準備不足では、スプリント内で成果を上げることが難しくなります。

2. 進捗が小さすぎる

1時間という短いサイクルでは、タスクの進捗が非常に小さく、スプリント終了時に達成感を感じにくい場合があります。また、スプリント間で大きな問題に取り組むことができないため、重要な機能や大規模な課題に対しては効果的でないこともあります。

3. 大きなソフトウェアは開発できない

2番とも関連がありますが、1時間という枠で進んでいき、長期的な計画や戦略が難しいため、大きなソフトウェアは取り組めません。短期的にできる身近な業務改善のためのソフトウェアや取り組みが成果物となります。

まとめ

1時間のスプリントは、通常のスプリントと比較すると
短期間で集中できるためスウォーミングでのタスク消化がしやすく、課題解決の速度やチーム間の連携力が向上しました。しかし、長期的な視点や計画の精度を保つことが重要であり、適切なバランスを見つけることが今後の課題です。

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