Neovim builtin LSP設定入門
はじめに
Neovim には組み込みのLSPクライアントがあります。少し前までは VSCode 並の開発体験を得るためにはcoc.nvim
を使うのがベストな選択肢でしたが、neovim builtin lsp(以下 nvim-lsp)でもかなりエコシステムが整備されており、VSCode 並の開発体験が得られるようになっています。この記事ではそんな nvim-lsp の設定の基本的なところを説明します。
環境
- Windows でも MacOS でも Linux でも動くはずです。
- Neovim stable 最新版もしくは nightly
- git コマンド
- その他 Mason から色々な物をインストールして使う際には
:checkhealth mason
で指定されたコマンドが必要となることがあります。
基本的な設定
必須プラグイン系
nvim-lsp は組み込みではあるものの、そのままだと扱いづらいため以下のプラグインが使用されることが多いです。
- nvim-lspconfig (https://github.com/neovim/nvim-lspconfig)
- mason.nvim (https://github.com/williamboman/mason.nvim)
- mason-lspconfig.nvim (https://github.com/williamboman/mason-lspconfig.nvim)
まず、各言語用の設定を提供するnvim-lspconfigです。neovim の公式で管理されています。LSP プロトコル自体はどの言語でも共通ですが LSP サーバーを起動するためのコマンドラインオプションやどういう場合にどの言語サーバーを起動させるべきか(例えばpackage.json
がある場合は Typescript の言語サーバーが起動してほしいなど)はそれぞれ違うのでこのプラグインが必要になります。
次に mason.nvim ですが、これは様々な外部依存パッケージを neovim 内からインストールできるようにするプラグインです。そして mason-lspconfig は mason.nvim でインストールした LSP サーバーを使うために必要です。
Neovim界で最も人気であろうパッケージマネージャのlazy.nvimを使った設定例が以下になります。
-- lazy.nvimのインストール
local lazypath = vim.fn.stdpath "data" .. "/lazy/lazy.nvim"
if not vim.loop.fs_stat(lazypath) then
vim.fn.system {
"git",
"clone",
"--filter=blob:none",
"--single-branch",
"https://github.com/folke/lazy.nvim.git",
lazypath,
}
end
vim.opt.runtimepath:prepend(lazypath)
-- lazy.nvimを使ってプラグインをインストール
require("lazy").setup({
{ "neovim/nvim-lspconfig" },
{ "williamboman/mason.nvim" },
{ "williamboman/mason-lspconfig.nvim" },
}, {})
-- LSPサーバアタッチ時の処理
vim.api.nvim_create_autocmd("LspAttach", {
callback = function(ctx)
local set = vim.keymap.set
set("n", "gD", "<cmd>lua vim.lsp.buf.declaration()<CR>", { buffer = true })
set("n", "gd", "<cmd>lua vim.lsp.buf.definition()<CR>", { buffer = true })
set("n", "K", "<cmd>lua vim.lsp.buf.hover()<CR>", { buffer = true })
set("n", "gi", "<cmd>lua vim.lsp.buf.implementation()<CR>", { buffer = true })
set("n", "<C-k>", "<cmd>lua vim.lsp.buf.signature_help()<CR>", { buffer = true })
set("n", "<space>wa", "<cmd>lua vim.lsp.buf.add_workspace_folder()<CR>", { buffer = true })
set("n", "<space>wr", "<cmd>lua vim.lsp.buf.remove_workspace_folder()<CR>", { buffer = true })
set("n", "<space>wl", "<cmd>lua print(vim.inspect(vim.lsp.buf.list_workspace_folders()))<CR>", { buffer = true })
set("n", "<space>D", "<cmd>lua vim.lsp.buf.type_definition()<CR>", { buffer = true })
set("n", "<space>rn", "<cmd>lua vim.lsp.buf.rename()<CR>", { buffer = true })
set("n", "<space>ca", "<cmd>lua vim.lsp.buf.code_action()<CR>", { buffer = true })
set("n", "gr", "<cmd>lua vim.lsp.buf.references()<CR>", { buffer = true })
set("n", "<space>e", "<cmd>lua vim.lsp.diagnostic.show_line_diagnostics()<CR>", { buffer = true })
set("n", "[d", "<cmd>lua vim.lsp.diagnostic.goto_prev()<CR>", { buffer = true })
set("n", "]d", "<cmd>lua vim.lsp.diagnostic.goto_next()<CR>", { buffer = true })
set("n", "<space>q", "<cmd>lua vim.lsp.diagnostic.set_loclist()<CR>", { buffer = true })
set("n", "<space>f", "<cmd>lua vim.lsp.buf.formatting()<CR>", { buffer = true })
end,
})
-- プラグインの設定
require("mason").setup()
require("mason-lspconfig").setup()
require("mason-lspconfig").setup_handlers {
function(server_name)
require("lspconfig")[server_name].setup {}
end,
}
このスニペットについて簡単に説明します。まず、上半分はプラグインマネージャの設定です。プラグインマネージャ自体と上で説明したプラグインをインストールします。
次にlocal on_attach
で始まる行では、LSPサーバーがアタッチ(つまりvimのバッファと紐付けられて起動)した際に実行される処理を記述しています。この中ではLSPサーバーに関係するキーマップを設定することが多いです。この設定例ではK
で「ホバー」、gd
で「定義へ移動」などを設定しています。もちろん自分が使いやすいように自由に変更することができます。
そして残った部分ではプラグインを設定します。ここでは、mason.nvim
でインストールした言語サーバが自動的に起動するように設定しています。
ではinit.lua
を書いて neovim を起動してみましょう。すると、lazy.nvimが自動でプラグインをインストールしてくれるはずです。
インストール後には、mason.nvim
により:LspInstall [server name]
というコマンドが使えるようになっています。
また、:Mason
コマンドを使うことで下図のようにインタラクティブなサーバーインストール画面を使うこともできます。
では試しに:LspInstall lua_ls
を実行してLuaの言語サーバをインストールしてみましょう。コマンド実行後にインストール画面が表示され、しばらくすればインストールが完了します。
完了後、一旦Neovimを再起動してinit.lua
を開くと自動で言語サーバが起動するはずです。LSPによる診断が表示され、上でも説明したようにK
でホバーを出すこともできます。
他にも LSP 経由で使える機能はここでは説明しきれないほど豊富にあります。:h lsp
に詳細な情報が載っているので読んでみると良いでしょう。
補完
これで LSP は動くようになりましたが、補完を行うには補完プラグインを入れる必要があります。Vim には様々な補完プラグインがありますが、LSP への対応度が高いnvim-cmpがおすすめです。この記事ではこれを使用します。
本体と LSP 用の補完ソースであるcmp-nvim-lsp
が分離されているため、両方インストールします。LSP 以外にも様々な補完ソースが開発されており、
下のサンプルではバッファのキーワードを補完してくれるcmp-buffer
を入れています。
他にもコマンドラインバッファの補完をしてくれるcmp-cmdlineなど便利なソースが多くあります。
また、LSP がスニペットを補完候補として送ってくることがあるためスニペットプラグインは実質的に必須です。ここではLuaSnipを使います。
-- lazy.nvimのプラグインテーブル内に追加
require("lazy").setup({
{ "L3MON4D3/LuaSnip" },
{ "hrsh7th/nvim-cmp" },
{ "hrsh7th/cmp-nvim-lsp" },
{ "hrsh7th/cmp-buffer" },
{ "saadparwaiz1/cmp_luasnip" },
}, {})
-- lspのハンドラーに設定
capabilities = require("cmp_nvim_lsp").default_capabilities(),
-- lspの設定後に追加
vim.opt.completeopt = "menu,menuone,noselect"
local cmp = require"cmp"
cmp.setup({
snippet = {
expand = function(args)
require("luasnip").lsp_expand(args.body)
end,
},
mapping = cmp.mapping.preset.insert({
["<C-p>"] = cmp.mapping.select_prev_item(),
["<C-n>"] = cmp.mapping.select_next_item(),
["<C-d>"] = cmp.mapping.scroll_docs(-4),
["<C-f>"] = cmp.mapping.scroll_docs(4),
["<C-Space>"] = cmp.mapping.complete(),
["<C-e>"] = cmp.mapping.close(),
["<CR>"] = cmp.mapping.confirm({ select = true }),
}),
sources = cmp.config.sources({
{ name = "nvim_lsp" },
{ name = "luasnip" },
}, {
{ name = "buffer" },
})
})
このように補完が出るようになりました!
他の補完プラグイン
nvim-cmp
以外にもnvim-lspで仕様できる補完プラグインがあるのでご紹介します。
- ddc.vim
denops.vimを使った補完プラグインで、nvim-lsp の sourceを入れれば nvim-lsp でも使えます。
- coq_nvim
coc.nvim に似ていますが別物です。Python 製ですが neovim 専用です。
フォーマッタ/リンタ
ついでにフォーマッタ/リンタの設定もしてしまいます。
neovim でフォーマッタ/リンタを動かす方法はいろいろありますが、ここではnone-lsを紹介します。
これは様々なツールの出力を LSP の形式に変換して nvim-lsp に送るという仕組みになっています。似たようなツールにdiagnostic-languageserverやefm-langserverがありますが、none-ls
はLua製の外部依存がないNeovimプラグインであることなどが利点です。
また様々なリンター/フォーマッタ用にあらかじめ設定が用意されているので簡単に設定できます。
詳しくはnull-ls のドキュメントを見てください。
これは Prettier の設定例です。npm でローカルにprettier
がインストールされていればそちらが、インストールされてなければグローバルのものが使用されます。
さらに、前述の mason.nvim で prettier をインストールすることもできます。mason.nvim はインストールしたパッケージの実行可能ファイルを neovim が認識するPATHに加えるため特別に設定しなくても使えます。
ちなみに neovim の:terminal
の中でも mason でインストールしたものはパスが通っており、実行することができます。
{ "nvimtools/none-ls.nvim", dependencies = { "nvim-lua/plenary.nvim" }
local null_ls = require "null-ls"
null_ls.setup {
sources = {
null_ls.builtins.formatting.prettier.with {
prefer_local = "node_modules/.bin",
},
},
}
発展的な設定例です。prettier の設定ファイルがあれば prettier を使い、なければ代わりにdeno fmt
を使います。さらにdeno
の設定ファイルがあれば null-ls 経由のdeno fmt
ではなく deno LSP の組み込みフォーマットを使います。
null_ls.setup {
sources = {
null_ls.builtins.formatting.deno_fmt.with {
condition = function(utils)
return not (utils.has_file { ".prettierrc", ".prettierrc.js", "deno.json", "deno.jsonc" })
end,
},
null_ls.builtins.formatting.prettier.with {
condition = function(utils)
return utils.has_file { ".prettierrc", ".prettierrc.js" }
end,
prefer_local = "node_modules/.bin",
},
},
capabilities = common_config.capabilities,
on_attach = common_config.on_attach,
}
いろいろなプラグイン達
ここまでで基本的な設定は完了ですが、LSP と連携して開発をより便利にしてくれるプラグインを紹介します。
また、こちらのリストがかなり網羅的で LSP 関連以外のプラグインを探す時にも便利です。
このリストの作成者さんの記事もありますのでこちらもどうぞ。
LSP 拡張系
-
lsp_signature.nvim
https://github.com/ray-x/lsp_signature.nvim
関数の引数を入力しているときにシグネチャヘルプを表示してくれます。
-
lspkind-nvim
https://github.com/onsails/lspkind-nvim
補完にアイコンを追加してくれます。
-
fidget.nvim
https://github.com/j-hui/fidget.nvim
言語サーバの稼働状況などを表示してくれるやつです。VSCodeの右下に出ているものを再現できます。
-
noice.nvim
https://github.com/folke/noice.nvim
neovim の UI 全般を魔改造するプラグインです。lsp_signature.nvim と fidget.nvim を置き換えることができます。
特定の言語用のやつ
rust-analyzer におけるexperimental/externalDocs
(docs.rs を開く機能)のように、言語サーバはそれぞれ LSP の標準にはない独自の仕様を定義していることがあります。
当然それらは nvim-lsp では扱えないのでプラグインが必要になります。
その他にも LSP では扱いきれないようなものがいろいろあったりするのでそれを扱ってくれるプラグインを以下で紹介します。
-
typescript.nvim
-
rust-tools.nvim
-
go.nvim
-
nvim-jdtls
-
flutter-tools.nvim
参考になるサイト
-
公式の LSP のドキュメント
-
r/neovim
https://www.reddit.com/r/neovim/
海外の巨大掲示板 Reddit の neovim subreddit です。新しいプラグインはよくここで宣伝されています。他にもいろいろな neovim の最新情報を知ることができます。
-
Github の dotfiles リポジトリ達
いろんな人が自分の好みの neovim のコンフィグを作って Github やらに上げています(Github で
nvim
とか検索すればたくさんでてきます)。参考になる設定が沢山あるので詰まったりしたら見てみるとよいでしょう。 -
https://neovim-mine.vercel.app/
手前味噌で申し訳ありませんが、Neovim のプラグインを見つけやすくするサイトを作ったので紹介しておきます。
先ほども挙げた https://github.com/yutkat/my-neovim-pluginlist とAwesome Neovimのデータを使用させてもらい、見やすい形(個人の感想)にまとめたサイトです。
最後に
この記事でやった設定ををまとめておきました。コメントとかも書き加えてあります。
ついでに自分の neovim の設定を置いておきます。よければ参考にしてください。
それではよい neovim ライフを。
この記事は https://note.nazo6.dev/blog/c2f16b07798bab とのクロスポストです。
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