ACP(Agent Client Protocol)と AgentHQ について
JetBrains はなぜ ACP を支持し、「推し」を作らないのか
こんにちは、JetBrains公式代理店NATTOSYSTEMのねばねばです。
2025年12月、JetBrains は公式ブログで
Agents, Protocols, and Why We’re Not Playing Favorites
という記事を公開しました。
この記事は、
AIエージェント時代において、IDEはどこに立つべきか
という思想を語っています。
本記事では、その内容をご紹介いたします。
1. いま起きている変化:AIは「機能」から「主体」へ
これまでのAI支援は、IDEの中の一機能でした。
人間 → IDE → AI
しかし今後は、AIは単なる補助ではなく
タスクを任される主体(エージェント)になるでしょう。
人間 ─┬─ IDE
└─ AIエージェント
- 調査する
- 修正する
- 判断する
- 提案する
これらを 自律的に行う存在としてAIが扱われ始めています。
2. 問題の本質:「エージェントとIDEはどうつながるのか?」
AIエージェントが増えれば、次の問題が出てきます。
- IDEごとに接続方法が違う
- エージェントごとに操作方法が違う
- 特定プラットフォームに依存する
[IDE A] ── 独自接続 ── [Agent X]
[IDE B] ── 独自接続 ── [Agent Y]
[IDE C] ── 独自接続 ── [Agent Z]
3. ACPとはなにか
ここで JetBrains が支持しているのがACP(Agent Client Protocol) です。
ACP は、AIエージェントとエディタ/IDE の間でのやり取りを共通のルールセットとして標準化するプロトコルです。ジェットブレインズは Zed と共同でこのプロトコルを策定しており、すでにベータ実装として自社IDE群への統合も進んでいます。
ACPの特徴
-
オープンで中立的:特定ベンダーに依存せず誰でも実装可能。
-
相互運用性:複数のIDE(例:IntelliJ IDEA, PyCharm, Zed など)と、様々なAIエージェントが同じルールで通信可能。
-
機能通信の標準化:ファイルアクセス、コード修正提案、テストの実行など、エージェントとのやり取りが統一された形式に。
AI版の LSP(Language Server Protocol)のような位置付けです。JetBrains の開発者はこれを “open protocol any IDE or agent can speak(どのIDEやエージェントでも話せるオープンなプロトコル)” と表現しています。
ACPの位置づけ
┌───────────┐
│ AI Agent A│
├───────────┤
│ AI Agent B│
└───────────┘
▲
│ ACP(共通プロトコル)
▼
┌─────────────────────────┐
│ IDE / Editor │
│ (JetBrains, Zed, others)│
└─────────────────────────┘
4. AgentHQとはなにか
同時期に GitHub は AgentHQ という別の仕組みを発表しました。これについても多くの問い合わせが寄せられているため、JetBrains はあらためて両者の違いを説明しています。
AgentHQは複数のAIエージェントを統合し、GitHub のワークフローの中で統一的に管理・利用するプラットフォーム。
GitHub を AI エージェントの “本部(HQ)” にして、
- 複数のエージェントを並列実行
- タスク振り分け・進捗管理
- 権限・セキュリティ・メトリクス管理
などの総合管理機能を提供する。
AgentHQの特徴
-
GitHub エコシステム内の「エージェント統括基盤」
-
エージェントの起動・停止・権限・ガバナンスを一元管理
-
進捗・ログ・メトリクス管理
-
GitHub / VS Code との深い統合
AgentHQの位置づけ
┌─────────────────────────┐
│ GitHub │
│ (Repo / PR / Actions) │
└───────────┬─────────────┘
│
┌───▼─────────┐
│ Agent HQ │
│ (Control │
│ Platform) │
└───┬─────────┘
│
┌────────▼────────┐
│ AI Agents群 │
└─────────────────┘
5. ACP と AgentHQ
両者を同じ土俵で比較すると誤解が生まれます。
レイヤー比較
┌────────────────────────────┐
│ 運用・管理レイヤー │ ← AgentHQ
├────────────────────────────┤
│ 通信・相互運用レイヤー │ ← ACP
├────────────────────────────┤
│ IDE / クライアント │
└────────────────────────────┘
ACP は「通信規約」です。AgentHQ のような “管理層” を提供するものではなく、あくまで エージェントとIDE間のやり取りを標準化するプロトコル に特化しています。
6. なぜ JetBrains は「推し」を作らないのか
記事タイトルの、Why We’re Not Playing Favoritesとは
-
特定のエージェントやプロトコルにロックインしない
JetBrains は ACP の採用を進める一方で、将来的に他のプロトコルが広まれば、対応する意欲があると述べています。 -
ユーザーが自由に選べるエコシステムを目指す
JetBrains は、どのエージェントが優れているか分からない現在の状況を踏まえ、選択の自由を重視しています。 -
JetBrains のビジョンは、エージェントが単一のIDEやクラウドに縛られず、どこでも同じように使える状態を実現することです。
この観点は、AIエージェントの 自由な移植性と開発者の選択肢拡大につながる重要な考え方だと思います。
IDE を中心に
├─ どのAIでも
├─ どのエージェントでも
└─ 同じ体験を提供する
結論
ACP は 業界標準化への動きとして注目されています。複数のIDEやエージェントをまたいだ相互運用性を実現する標準仕様として期待されているため、エコシステム全体の成長につながる可能性があります。
JetBrainsは、
- エージェント通信の標準化(ACP)を推進
- 特定プラットフォーム依存の仕組みに偏らない
- ユーザーが好みのツール・エージェントを自由に選べる仕組みを目指す
今後のエージェント動向を見守っていきましょう。
参考資料
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