「仕様書」の役割と考え方
はじめに
Web制作の現場では「仕様書」というドキュメントを作ることがあります。
しかし、初めてWeb業界に入った方にとっては「何のために必要なのか?」が分かりにくいものです。
この記事では、仕様書が持つ本当の役割と、そのためどのように書けば良いかを整理して紹介します。
仕様書とは何か
仕様書は 「仕様をチームと顧客が共通して理解するためのドキュメント📕」 です。
- 顧客にとって:提案内容を確認し、共通の仕様理解・仕様決定を得るためのもの
- 制作チームにとって:実装やデザインを進める際の迷いをなくすためのもの
- 将来の開発者にとって:改修や追加機能を検討する際に全体像をつかむための入口。開発者は、いきなり設計書を見るよりも、仕様書で全体像をざっくり理解することが多いです(個人的に)
例えば・・・
- 仕様書:どんな料理を、誰のために、何人分、どんなシチュエーションで出すのか
- 設計書:材料、手順だけ
もし仕様書がなければ、「これって家庭用?パーティー用?」「大人向け?子供向け?」といった基本的な前提から迷ってしまいます。
👉 仕様書は「今のため」だけでなく「保守運用のため」にも存在します。
「目的」を明記する重要性
仕様そのものだけでなく、「なぜその仕様なのか」 を明記することが大事になります。
例
- 仕様:「エラーはユーザー全体に影響しないようにする」
- 目的:「サービス全体の安定性を優先するため」
目的を書かないと起こる問題
- 運用フェーズで別の人に引き継がれたとき、背景を知らずに安易に変更してしまうかも
- 開発者自身も数年後には要望を忘れてしまい、意図と違う修正が入るかも
- 品質や要件の本質を損ねるリスクがある
👉 目的は「仕様の本質的な意味」であり、品質を担保するため重要になります。
仕様書に書くべき内容
では、仕様書の使われ方、見る人を理解した上で、どのような事を記載すれば良いでしょうか?
上記を踏まえて、仕様書に書くべき必要な要素について説明します。
以下は代表的な項目です。
1. 目的
上記の**「目的」を明記する重要性**で説明したとおりです。
- なぜこの仕様なのか
- この機能・画面の存在意義
- 品質や要件の背景
2. 方針
顧客とチームが共通して理解するため記載します。
- 全体の方向性や設計方針
- 実装時のルールや制約
3. 機能仕様
顧客とチームが共通して理解するため記載します。
また、開発者が改修や追加機能を検討する際に役立ちます。
- 機能ごとの概要説明
4. 画面仕様
「ユーザーがどう操作し、どう見えるか」を統一し、関係者間の認識合わせ、品質確保のため記載します。
- 画面名・ページ構成
- UI要素(ボタン、入力フォーム、リンクなど)
5. エラーハンドリング
「異常時にどう振る舞うか」を統一するため記載します。
- エラー内容と条件
- エラーメッセージ文言
- 発生時の対応方法
例:「メールアドレス未入力時 → エラーメッセージ表示『メールアドレスを入力してください』」
仕様書と他ドキュメントとの違い
- 要件定義書:顧客が「何をやりたいか」を整理したもの
- 仕様書:その要件をどういう仕様で実現するかをまとめたもの
- 設計書:仕様をどう作るか(技術的手順)を記したもの
この違いを理解していないと、「仕様書が設計書っぽくなる」「顧客視点が抜け落ちる」といったズレが起きやすいです。
まとめ
仕様書は、顧客とチームが共通して理解するためのものです。
「目的」を明記することで、今後の改修や品質維持にも役立ちます。
また、要件定義・仕様書・設計書の違いを理解し、必要な項目を整理して記載することも大切です。
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