Appleに学ぶ、機能開発以外の大事なこと
何でもサッカーに例えられるという持論があります。
企業が決めるべきゴールは「持続的な利益創出」。
では、ゴールのための「シュート」は何でしょうか?
分類すると「コスト削減シュート」と「価値の向上シュート」の2種類になります。
今回は、この観点からテック企業におけるテストやデプロイを考えてみます。
参考:「ストーリーとしての企業戦略」
Appleのシュート
みんな大好きAppleのシュートは何でしょうか?
Appleといえば、ジョブズが磨き上げた洗練されたデザイン。
PCベンダーと一線を画す、独自の価値を作り上げた結果、みんながiPhoneやMacBookを欲しくなっているのではないでしょうか。
この点で、アップルは「価値の向上」シュートを決めている印象があります。
では、現在のCEOティム・クックは、「価値の向上」を実現するビジョナリーなのでしょうか。
クックはオペレーションのプロフェッショナル
アップルといえば、iPhoneにタートルネックと革命的なプレゼンのジョブズ。現在のCEOのクックについては知らないことが多いのではないでしょうか?
クックは元々大学ではエンジニアリングを志していましたが、アウトソーシングやサプライチェーンマネジメント、工場・在庫の管理で頭角を表しました。
在庫の管理、地味だと思いましたか?
実はこのクックの素養が、Appleの成功につながっています。
Appleの危機
ジョブズは一時期、自社工場にこだわるあまり、危機的な状況に陥っていました。
せっかく大人気の革命的製品が、供給不足で売ることができない。
また、売れると思った製品の在庫がダブつき、資産価値に重大な悪影響が出ていました。
オペレーションのプロフェッショナル、クックを雇い入れたのはそんな時です。
クックは下記のような改革を行ない、Appleは柔軟な供給体制を獲得しました。
- 台湾のフォックスコンを筆頭にアウトソーシングを推進した
- トヨタ式の「Just In Time生産方式」に近い方式で、在庫削減を目指した
このように、Appleは「価値の向上」シュートと「コスト削減」シュートをどちらも打てる、両利きの選手になったからこそ、世界を席巻しているのではないでしょうか。
テックスタートアップにとって、在庫とは「リリースを遅延させる要因」
テックスタートアップは、「価値の向上」シュートを何度も打ちます。
そのトライ回数を増やすために、「コスト削減」シュートすなわちオペレーションにも、力を入れるべきです。
Appleはハードウェアを売る会社ですが、ソフトウェアを売るテックスタートアップにおいて、「過剰な在庫」は何でしょうか?
それは、「リリースを遅延させる要因」だと考えます。
解消すべき「リリースを遅延させる要因」
例を挙げると、以下のようなものです。
- 手動でのデプロイによるミス
- 俗人化
- デプロイ時のアプリケーションのデグレ
- 人手でのアプリケーションの動作確認コスト
- 開発者の忌避感情・精神的疲労
- カオスなコード
- リソース不足
これらは各社の状況によりますが、ボトルネックから対処していくべきです。
「テストの自動化」「デプロイの自動化」「ドキュメンテーション」「リファクタリング」や、その組み合わせがクリティカルな対策となることが多いです。
※全てのリファクタリング・全ての自動化を行うべきではありません。「ゴール」から逆算して、有効な「シュート」となる対策を行うべきです。
かつてデザインだったAppleの花形部署は、オペレーション管理部になったそうです。
「インフラ系・開発者体験の改善は地味で、ゴールから遠い仕事」という印象がありませんか?デプロイの自動化や、リファクタリングは、場合によっては試合を決める強烈なシュートになるのだ、と気づきました。
あなたが御社のティム・クックかもしれない!
twitter: https://twitter.com/uddger
ティム・クックの名言
参考書籍
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