MongoDB: ドキュメント指向型NoSQLの魅力を解説する記事
本記事の目標
MongoDBをWeb開発で使う理由とその魅力を説明できること
本記事の対象とする読者
- 他のデータベース(MySQLやPostgreSQL等)を学んだり、実務で触ったりした経験はあるものの、MongoDBについて知らない人
- NoSQLについて知りたい人
- MongoDBをこれから学ぼうと思っている人
- ドキュメント指向型のデータベースに興味がある人
- MongoDB以外のNoSQLについて既に学んでいて、MongoDBをこれから学ぼうと思っている人
MongoDBとは
MongoDBとは、SQLを使わずにデータベースを設計するNoSQLデータベースの一つである。C++言語で開発されたオープンソースのNoSQLデータベースだ。
MongoDBはMySQL等のRDBMSとは違って、レコードをテーブルに格納するのではなく、「ドキュメント」と呼ばれる構造的なデータをJSON形式で表現し、そのドキュメントの集合を「コレクション」として管理する。
要は、MongoDBはMySQLやPostgreSQLのようにSQLを使ってデータベースを操作しない。MongoDBのデータベースを操作する上で必要なものはJSONとJavaScriptに関する知識である。
MongoDBの持つ特徴
以下に、MongoDBが持つ特徴をいくつか列挙する。
- ドキュメント指向
- スケーラビリティ
- 豊富な機能
- 地理空間インデックス
ドキュメント指向
MongoDBはデータをBSON(Binary JSON)と呼ばれる形式のドキュメントで保存する。これは、フィールドと値のペアの集合体で、ネストや配列など複雑なデータ構造を簡単に表現できる。MongoDBはこの機能で、MySQL等のRDBMSよりも柔軟にスキーマを変更できる。
スケーラビリティ
MongoDBは水平分散をサポートしているので、データベースの成長に合わせてリソースを増やすことができる。これは、大量のデータとユーザを効率的に管理する必要のあるアプリケーションにとって重要だ。
豊富な機能
MongoDBには、データベースの操作や処理を効率化するための機能が豊富である。MongoDBに搭載されている主な機能を以下に挙げる。
- 組み込みの全文検索
- フィールド、範囲検索、正規表現等の多種多様な検索機能
地理空間インデックス
MongoDBは地理空間データとインデックスをサポートしており、地理的な位置情報に基づいたクエリを実行できる。
MongoDBのメリット
MongoDBをWeb開発で用いるメリットについては、主に以下のようなものがある。
- スケーラビリティ
- 柔軟性が高い
- ドキュメント指向による恩恵
- リアルタイムの処理が得意
- 高可用性
スケーラビリティ
先程の説明と重複するところがあるが、MongoDBは水平分散をサポートしている。MongoDBのデータベースが成長するに連れて、新しいサーバを追加することで簡単に容量を増加できるのだ。
これは、データベースに大量のデータが流入するWebアプリケーションを開発する上で非常に有用である。
柔軟性が高い
MongoDBはデータベースに保存するデータの構造を自由に変更できる。これは、新しい機能を迅速に追加したり、アプリケーションの要件が変わったりするときにデータベースのスキーマを変更する必要がないので、開発にかかる時間を短縮できる。
ドキュメント指向による恩恵
MongoDBはドキュメント指向のデータベースで、BSON形式でデータを保存する。これは、データの取得と書き込みを直感的に行うことができる。さらに、データのベストや複数の値を持つフィールドを簡単に扱える。
リアルタイムの処理が得意
MongoDBはリアルタイムのデータ処理に優れている。これは、チャットアプリ等のリアルタイムで挙動を確認するアプリケーションを開発する上で重宝する。
高可用性
MongoDBには自動でデータベースを修復する機能がデフォルトで備わっている。これにより、サーバの障害が発生しても安全にデータを保管でき、データベースのランタイムを最小限にできる。
MongoDBのデメリット
このように、Web開発においてMongoDBは数多くの強みを持つものの、当然デメリットが存在する。MongoDBは不得意とすることは以下の通り。
- 複雑なトランザクション
- 結合操作(
JOIN
文) - 正規化
- 一貫性を保ったデータベースの管理
複雑なトランザクション
MongoDBは、一般的に活用されているRDBMSにおけるトランザクションが不得意である。しかし、MongoDB 4.0以降ではマルチドキュメントトランザクションがサポートされており、一部のトランザクションに対応できるようになっている。
ただ、トランザクションを活用する場合はMongoDBを使うのを控えたほうがいいだろう。
結合操作
SQLデータベースでは、JOIN
操作を使って複数のテーブルからデータを結合するのが一般的だ。ところが、MongoDBはこのような操作を得意としない。ただ、MongoDBにも$lookup
というJOIN
のような結合機能はあるものの、パフォーマンスに影響を与える可能性が高い。
データの正規化
データの重複を避けるために、データを正規化する必要がある場合はRDBMSのほうが得意である。MongoDBはドキュメント指向のデータベースで、データの非正規化、要はデータの重複が許される設計に向いている。
一貫性を保ったデータベースの管理
データスキーマが変更されない、一貫性が重要視される環境においては、従来のRDBMSのほうが得意な場合がある。
MongoDBが使われる主なアプリケーション
MongoDBはJSONでデータベースのスキーマを自由自在に変更できるので、スケーラビリティや柔軟性が重視されるアプリケーションとの相性が抜群だ。
リアルタイムアナリティクス
MongoDBのスケーラビリティの高さは、リアルタイムの大規模データ分析との相性が抜群である。例えば、ユーザの行動を追跡してリアルタイムで分析し、Webサイトをユーザ向けに最適化するために使われる。
コンテンツ管理システム
コンテンツ管理システム(CMS)は、eコマースサイト、オンライン出版物、文書管理プラットフォーム、その他のアプリケーションやサービスにアクセスする際に、良好なユーザー体験を確保するための重要な役割を果たす強力なツールだ。
MongoDBで、単一のデータベースを使用し、高可用性でオンラインアプリケーションやウェブサイトに新機能や属性を簡単に追加できるのだ。
ユーザ情報管理
MongoDBは大量のユーザデータを効率的に整理するのが得意なデータベースである。ユーザプロファイル、認証情報や地理的位置情報等を保存して、必要に応じスケールアップできる。
MongoDBの活用事例(プログラミング言語)
MongoDBは多種多様なプログラミング言語に対応している。その中でも、代表的な5つの言語を紹介する。
JavaScript(Node.js)
MongoDBはJavaScriptのオブジェクト記述言語であるJSONと非常に互換性が高いため、JavaScriptベースのNode.jsとの組み合わせがよく見られる。例えば、リアルタイムのチャットアプリケーションでは、MongoDBはユーザーデータ、チャット履歴、リアルタイムのメッセージ等を効率的に保存・取得する。
Python
PythonのデータサイエンスライブラリとMongoDBを組み合わせることで、大量のデータを効率的に分析・可視化できるようになる。たとえば、MongoDBはWebスクレイピングの結果を保存し、後にPythonのPandasやMatplotlibを用いて解析・可視化する基盤となることがある。
Java
大規模なエンタープライズアプリケーションでは、JavaとMongoDBを組み合わせることがよくある。MongoDBはその高いスケーラビリティとパフォーマンスで、大規模なユーザーベースとトランザクションを持つアプリケーションのデータ管理を支える。
Ruby(Ruby on Rails)
Ruby on Railsを用いたWebアプリケーション開発では、MongoDBがアクティブレコードパターンの代替として使われる。柔軟なスキーマを持つMongoDBは、アプリケーションの進化に合わせてデータモデルを素早く変更できるようになる。
PHP
ダイナミックなウェブコンテンツの作成には、PHPとMongoDBを組み合わせることがある。例えば、ブログやニュースサイトでは、頻繁に更新される記事やコメントを効率的に管理するためにMongoDBが使用される。
MonoDBを使うべきプログラマーとシステム
- リアルタイムアプリケーションの開発者
- スタートアップのプログラマー
- 大規模なデータを扱うシステム
- 地理的なデータを扱うシステム
- MEAN/MERNStackの開発者
- 高いセキュリティを必要とするシステム
リアルタイムアプリケーションの開発者
MongoDBはリアルタイムデータ処理に優れている。これは、リアルタイムアプリケーションや、ユーザーの行動をリアルタイムで追跡するような場合に重宝する。
スタートアップのプログラマー
スタートアップの環境では、ビジネスの要件やデータ構造が素早く変化することがある。MongoDBはスキーマレスであるため、データベースのスキーマを変更することなく、アプリケーションの要件を素早く変更できる。
大規模なデータを扱うシステム
MongoDBは水平分散をサポートしており、大量のデータを効率的に処理できる。そのため、大規模なユーザーベースやトランザクションを扱うシステムや、ビッグデータアプリケーションに適している。
地理的なデータを扱うシステム
MongoDBは地理空間インデックスをサポートしており、地理的な位置情報に基づいたクエリを実行できる。そのため、位置情報に基づいたサービスやアプリケーションを開発する際には特に便利だ。
MEAN/MERNスタック開発者
MongoDBはJavaScriptとの相性が良く、JavaScript全スタックのMEAN (MongoDB, Express.js, AngularJS, Node.js) やMERN (MongoDB, Express.js, React.js, Node.js) のアプリケーションを開発するプログラマーにとってはうってつけだ。JavaScriptの知識があれば、フロントエンドからバックエンドまで一貫した開発体験が得られます。
高いセキュリティを必要とするシステム
MongoDBはロールベースのアクセス制御、SSL/TLSデータ暗号化、監査トレイルなどの高度なセキュリティ機能を提供している。このため、セキュリティが重要なシステムやアプリケーションにも適している。
まとめ
本記事では、Webエンジニアリングにおいて、ドキュメント指向のNoSQLである「MongoDB」を使う魅力を解説した。
参考サイト一覧
Discussion