香港法人のオーナーが日本に住む方法 - 実体験で解説するビザと税務のすべて
こんにちは、中野哲平です。
「香港で会社作ったら日本に住めなくなるの?」
「海外法人の株主だとビザって取れるの?」
こんな疑問をよく聞かれます。結論から言うと、香港法人を保有していても、日本に住むことは全く問題ありません。
私自身、2017年から香港でAI・ブロックチェーン・量子コンピューティングの受託開発会社を経営しながら、日本を拠点に生活しています。今回は、その実体験をもとに、香港法人オーナーが日本に住む方法について詳しく解説したいと思います。
🏡 香港法人を持ちながら日本に住む基本的な仕組み
居住地と会社の所在地は別問題
まず大前提として理解しておきたいのは、会社の所在地と個人の居住地は全く別の話だということです。
- 香港法人 = 香港で設立・登記された会社
- 日本居住者 = 日本に住所を置き、日本で生活する人
この2つは独立した概念なので、香港に会社があるからといって、必ずしも香港に住む必要はありません。
日本の居住者判定は「住所」で決まる
日本の税法上、居住者かどうかは以下の基準で判定されます:
- 住所が日本にある人
- 現在まで引き続いて1年以上居所が日本にある人
つまり、香港に会社を持っていても、日本に住所があり、実際に日本で生活していれば「日本の居住者」として扱われます。
🏢 法人オーナーとして日本に住む4つのパターン
香港法人のオーナーが日本に住む場合、以下の4つのパターンがあります:
1. 日本国籍者・永住者の場合
最もシンプルなパターンです。
✅ メリット
- ビザの心配一切なし
- 就労制限なし
- 永続的に日本居住可能
📋 必要な手続き
- 住民票の登録のみ
- 確定申告での海外所得申告
2. 配偶者ビザ(日本人・永住者の配偶者)の場合
日本人や永住者と結婚している外国人の場合です。
✅ メリット
- 就労制限なし
- 会社経営も自由
- 永住権への道筋もクリア
📋 必要な手続き
- 配偶者ビザの取得・更新
- 住民票の登録
- 確定申告
3. 経営・管理ビザで日本法人も運営
香港法人とは別に、日本でも法人を設立する場合です。
✅ メリット
- 日本でのビジネス展開が容易
- 香港法人との連携で国際事業を展開
- 最長5年の在留期間
📋 必要な条件
- 日本法人の設立
- 資本金500万円以上または常勤職員2名以上
- 実際の事業運営
4. 投資家・高度人材ビザ
政府が推進する外国人材誘致制度を活用する場合です。
✅ メリット
- 年収要件をクリアすれば取得可能
- 高度人材の場合、永住権への道筋が短縮
📋 必要な条件
- 高い年収(2,000万円以上など)
- 学歴・職歴・年収でのポイント制
⚠️ 注意すべきタックスヘイブン対策税制
香港法人を持ちながら日本に住む際の最大の注意点が、タックスヘイブン対策税制です。
タックスヘイブン対策税制とは?
日本の会社が、日本より法人税率の低い国にいわゆる「ペーパーカンパニー」を子会社等として持っていた場合、その「ペーパーカンパニー」の収益を日本の会社の収益とみなして、日本の法人税を課税するという税制です。
適用される条件
以下の条件を満たすと適用されます:
- 日本居住者が香港法人の株式を10%以上保有
- 香港法人に事業実体がない(ペーパーカンパニー)
- 香港の法人税率が日本より低い
適用されるとどうなる?
香港法人の利益が日本の個人所得として合算され、最高税率45%+住民税10%が課税される可能性があります。
🛡️ タックスヘイブン対策税制を回避する方法
1. 事業実体を持つ
最も重要なのは、香港法人に真の事業実体を持たせることです:
✅ 必要な要素
- 現地でオフィスをレンタル
- 責任者を置いて、実際に現地で業務を行う
- 香港での実際の売上・利益
- 香港において、事業の管理、支配及び運営を自ら行い、独立した法人としての実体を備えて活動している
2. 事前相談の重要性
このような論点は事前にきちんと整理し、税理士を通じて税務当局に事前相談に行くなどの十分な準備をしておくべきです。
3. 適用除外基準の活用
適用除外基準を全て満たす特定外国法人は、タックスヘイブン税制の適用除外となります:
- 事業基準:実際の事業活動を行っている
- 実体基準:現地での独立した実体がある
- 管理支配基準:現地で管理・支配が行われている
- 非関連者基準:第三者との取引が50%以上(特定業種)
💰 日本居住者として納税する際のポイント
1. 全世界所得課税
日本の居住者となる場合、全世界所得に対して課税されます:
- 日本での所得
- 香港法人からの配当・役員報酬
- その他海外所得
2. 外国税額控除の活用
香港で支払った税金は、外国税額控除により日本と海外における二重課税を排除できます。
3. 確定申告の義務
海外勤務中の非居住者も確定申告が必要?という疑問がありますが、日本居住者となった場合は、海外所得も含めて確定申告が必要です。
🚀 実際の運用例:私のケース
私の場合は以下のような形で運用しています:
会社構造
- 香港法人:AI・ブロックチェーン・量子の受託開発事業
- 日本での活動:顧客開拓、プロジェクト管理、戦略策定
居住・ビザ状況
- 日本国籍なのでビザは不要
- 住民票は日本に置いている
- 主な生活拠点は日本
税務対応
- 香港法人の事業実体をしっかり構築
- 専門の税理士と連携してタックスヘイブン対策税制をクリア
- 日本での確定申告で全世界所得を申告
- 外国税額控除を適切に適用
事業運営のコツ
- 香港での実際の事業活動を重視
- 現地スタッフの雇用と育成
- 香港での顧客開拓と売上確保
- 日本との明確な役割分担
📊 費用対効果の検証
香港法人設立・維持コスト
- 設立費用:約10万円〜20万円
- 年間維持費:約30万円〜50万円
- 税理士費用:年間100万円〜200万円
税務メリット
- 香港法人税率:200万香港ドルまでは8.25%、200万香港ドルを超える利益については16.5%
- パテントボックス制度:知的財産所得に5%の優遇税率
- 消費税:香港には存在しない
トータルでの判断
事業規模が年間売上5,000万円を超えてくれば、税務メリットが維持コストを大幅に上回る可能性が高いです。
⚖️ 専門家との連携が成功の鍵
必須の専門家チーム
- 国際税務に強い税理士(日本)
- 香港の会計士・秘書会社
- 入管業務専門の行政書士(外国籍の場合)
定期的な見直し
- 年1回の税務戦略見直し
- 法改正への対応
- 事業実体の維持・強化
🎯 まとめ:香港法人と日本居住は両立可能
香港法人を保有しながら日本に住むことは、正しい知識と適切な対応があれば全く問題ありません。
成功のポイント
✅ 事業実体の構築が最重要
✅ 専門家との連携でリスク回避
✅ 継続的な見直しで法改正に対応
✅ 明確な事業戦略で両国でのメリット最大化
注意点
⚠️ ペーパーカンパニーは絶対NG
⚠️ 事前相談なしでの見切り発車は危険
⚠️ 自己判断でのタックスヘイブン対策税制対応は避ける
香港の柔軟なビジネス環境と日本の安定した生活環境の**「いいとこ取り」**は十分可能です。
興味がある方は、まずは専門家に相談することから始めてみてください!
この記事は実体験に基づいていますが、税務・法務については個別の状況により異なります。実際の手続きの際は、必ず専門家にご相談ください。
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