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LLMにおけるRAG(Retrieval-Augmented Generation)とは?
1. RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは?
RAG(検索拡張生成) とは、大規模言語モデル(LLM)が外部の情報を検索(Retrieval)し、その情報を基に文章を生成(Generation)する手法です。
通常のLLMは事前に学習した知識のみを使用して応答を生成しますが、RAGを利用すると、最新の情報や特定のデータセットを組み合わせた高精度な応答が可能になります。
2. RAGの仕組み
RAGは主に2つのフェーズから成り立ちます。
-
検索フェーズ(Retrieval)
- LLMの応答を強化するために、外部のデータベースや検索システム(ベクトルデータベースなど)から関連情報を取得します。
- 例:
質問 → 検索エンジンやナレッジベースをクエリ → 関連情報を取得
-
生成フェーズ(Generation)
- 検索で取得した情報を元に、LLMが回答を生成します。
- 例:
検索結果 + LLMの推論 → 質問に対する高精度な回答を生成
💡 ポイント: 通常のLLMは事前学習データの範囲でしか回答できませんが、RAGを使うと動的に情報を取得できるため、最新情報や専門的な知識を反映できます。
3. なぜRAGが必要なのか?
LLM単体では、以下の問題点があります。
課題 | RAGの解決策 |
---|---|
事前学習データが固定 | RAGで最新情報を取得できる |
正確性の欠如(ハルシネーション) | 検索で信頼できる情報を補強 |
特定のドメイン知識が不足 | カスタムデータを検索し、専門知識を提供 |
プライベートデータにアクセス不可 | 内部データベースや企業内ナレッジを統合 |
4. RAGのアーキテクチャ
RAGを実装するには、以下のコンポーネントが必要です。
(1) クエリの処理
- ユーザーからの質問をLLMに入力
- クエリの意味をベクトル化(エンコーディング)
(2) 情報検索(Retrieval)
- 検索対象: ベクトルデータベース(FAISS, Pinecone, ChromaDB など)、従来の全文検索(Elasticsearch など)
- 検索手法: k-Nearest Neighbors(k-NN)、BM25、類似度検索(cosine similarity)
(3) 応答生成(Generation)
- 検索結果をプロンプトに追加
- LLMがコンテキストを考慮して最適な回答を生成
(4) 応答の提供
- ユーザーに自然な回答を返す
- 信頼スコアや出典情報を付与可能
5. RAGの具体的な活用例
RAGはさまざまな分野で活用されています。
用途 | 説明 | 具体例 |
---|---|---|
チャットボット | LLMがFAQデータベースや企業ナレッジを検索して回答 | AIカスタマーサポート |
法律・医療 | 最新の法律文書や医療論文を検索し、専門的な回答を生成 | AI弁護士、AI診断システム |
ドキュメント検索 | 社内ドキュメントを検索し、適切な情報を提示 | 企業内検索エンジン |
ニュース要約 | 最新のニュース記事を検索し、要約を生成 | ジャーナリズム、報道AI |
学術研究 | 研究論文を検索し、関連する情報を統合 | AIリサーチアシスタント |
6. RAGの実装方法
RAGをPythonで実装する例を示します。
📌 ① FAISSを用いたRAGの簡単な実装
from langchain.embeddings import OpenAIEmbeddings
from langchain.vectorstores import FAISS
from langchain.chains import RetrievalQA
from langchain.chat_models import ChatOpenAI
# 1. データをベクトル化し、FAISSに保存
documents = ["LLMとは?", "RAGの仕組み", "GPT-4は何ができるか?"]
embeddings = OpenAIEmbeddings()
vectorstore = FAISS.from_texts(documents, embeddings)
# 2. クエリを受け取り、検索する
retriever = vectorstore.as_retriever()
qa_chain = RetrievalQA.from_chain_type(llm=ChatOpenAI(), retriever=retriever)
# 3. 質問を入力
query = "RAGとは何ですか?"
response = qa_chain.run(query)
print(response)
このコードでは、FAISS(Facebook AI Similarity Search)を使ってテキストデータをベクトル化し、検索→生成を行うRAGモデルを構築しています。
📌 ② Pineconeを使用したRAG
from pinecone import Pinecone
import openai
# Pineconeのセットアップ
pc = Pinecone(api_key="YOUR_API_KEY")
index = pc.Index("rag-database")
# クエリの埋め込みを取得
query_embedding = openai.Embedding.create(
model="text-embedding-ada-002",
input="最新のAI技術を教えて"
)["data"][0]["embedding"]
# 近似検索
results = index.query(query_embedding, top_k=3)
# LLMへの入力
context = "\n".join([match["text"] for match in results])
prompt = f"以下の情報をもとに質問に答えてください。\n\n{context}\n\n質問: 最新のAI技術とは?"
# OpenAI GPTで回答生成
response = openai.Completion.create(model="gpt-4", prompt=prompt)
print(response["choices"][0]["text"])
Pineconeを使用すると、大規模なベクトル検索を効率的に行い、RAGのスケールアップが可能になります。
7. RAGとファインチューニングの違い
LLMを改善する方法として、**RAGとファインチューニング(Fine-tuning)**がありますが、違いを比較します。
手法 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
RAG | 動的に情報を検索し、応答を生成 | - 最新情報に対応可能 - ファインチューニング不要 |
- 外部データが必要 - 検索精度に依存 |
ファインチューニング | 事前学習済みのモデルに追加学習を行う | - 特定のタスクに最適化 - 一度学習すれば高速 |
- 最新情報を反映できない - 計算コストが高い |
💡 動的な情報取得が必要ならRAG、特定のタスクに最適化するならファインチューニングが適しています。
8. まとめ
- **RAG(Retrieval-Augmented Generation)**は、LLMが外部の知識を検索して回答を生成する手法。
- 最新情報や専門知識を取り入れられるため、汎用LLMよりも正確な回答が可能。
- ベクトル検索(FAISS, Pinecone)と組み合わせて実装すると効果的。
- ファインチューニングとは異なり、動的なデータ更新が可能。
LLMを強化する手法として、RAGは今後さらに重要になるでしょう!
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