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「エンジニアの仕事はなくなるのか?」──50%ホライゾンで読み解くAIの進化と人間の役割

2025/03/22に公開

AIの進化が話題になるたび、「プログラマーの仕事はAIに奪われるのか?」という疑問が繰り返し浮上します。特に、近年の生成AIの躍進は目覚ましく、「ChatGPTがコードを書ける」「AIがバグ修正してくれた」といった体験をした方も多いでしょう。

しかし、このような体感ベースではなく、より体系的に「AIがどのレベルの仕事をこなせるのか?」を測る方法があります。それが50%ホライゾンという指標です。

この指標を用いることで、「どの時点でエンジニアのどの仕事がAIに代替され得るか?」という問いに、より具体的な予測を立てることが可能になります。


🔍 まずは「50%ホライゾン」とは何か?

「50%ホライゾン」とは、AIが人間と同じタスクを50%の成功率でこなせるようになる難易度レベルを「人間がかける作業時間」で表した指標です。

たとえば、以下のように見ていきます:

  • 2025年時点:AIは50分かかるタスクまで50%の確率でこなせる
  • 2027年には:5時間のタスクで50%成功できるようになる
  • 2030年には:**190時間(=1ヶ月相当)**のタスクで50%の成功率に達する

このように、年々指数関数的に成長しており、現在のトレンドが続けば、2030年ごろには人間のフルタイム労働1ヶ月分に相当する仕事を、AIが一定の精度でこなせるようになると予想されています。


👨‍💻 エンジニアの仕事を「時間」と「性質」で分解してみる

エンジニアの仕事と一言でいっても、実際には以下のように多岐に渡ります:

タスク例 人間の所要時間 特徴 2025年時点の代替可能性
単体の関数を実装 数分〜30分 明確な仕様、短時間 ✅ ほぼ代替済み
簡単なWebアプリを作成 2〜5時間 定型的、再利用可能 ✅ 一部代替可能
バグ修正・デバッグ 1〜10時間 コンテキスト依存 🟡 条件付きで可能
技術選定・設計 数日 経験・文脈が重要 🔴 難しい
チームとの調整・要件定義 数週間 コミュニケーション重視 🔴 非代替的
複雑なMLモデルの設計 数週間〜1ヶ月 深い専門性と試行錯誤 🔴 現在は不可能

この表からわかるように、「短く、明確に定義されたタスク」ほど、AIによる代替が早い傾向があります。一方で、

  • コンテキストの把握
  • 長期的な計画と実行
  • チームや顧客とのやりとり
  • 状況に応じた意思決定

といった要素が求められる仕事は、AIが苦手とする分野です。


📈 50%ホライゾンをもとにした今後の見通し

以下は、50%ホライゾンの外挿と、それに対応して可能になるタスクの目安です:

50%ホライゾン 代替が進むタスク例
2025年 50分 テストケース生成、関数の分割と整理
2026年 1.5時間 簡単なバックエンドAPIの構築
2027年 5時間 小規模なツール作成、簡単な機能追加
2028年 18時間 フル機能のWebアプリ初期構築
2029年 57時間 システム全体のプロトタイプ、ユースケース実装
2030年 190時間(約1ヶ月) 中規模製品の設計〜初期開発

これを見ると、2030年ごろには、スタートアップのエンジニアが1ヶ月でやるような製品開発の初期段階をAIが主導できるようになる可能性があります。


💡 「エンジニアの仕事がなくなる」とはどういうことか?

ここで重要なのは、「エンジニアという職業が全て不要になる」のではなく、

エンジニアの中でAIで自動化できる部分がどんどん増える
→ 人間はより「上流」「抽象的」「チーム的」な仕事にシフトしていく

という変化が起こるということです。

たとえば:

  • 今後求められるスキルの変化

    • ✅ AIを使って素早くプロトタイピングできるスキル
    • ✅ 複雑な依存関係や制約を整理する能力
    • ✅ チームで合意形成を進めるファシリテーション能力
    • ✅ 顧客のニーズを翻訳してAIに伝える力
  • なくなりつつあるスキル

    • ❌ boilerplateコードを1から書く力
    • ❌ Webフレームワークの使い方を覚えることだけに特化したスキル
    • ❌ パターン化されたエラー修正のみを行う作業

🤖 AIに「できること」と「できないこと」

分類 内容 AIによる代替の可能性
明確な目標 + 明確な入力 仕様がある関数の実装など ✅ 可能
曖昧なゴール + 多様なステップ プロジェクト設計、ユーザー要求の翻訳 🟡 限界あり
継続的な判断 + 人との関係 チームビルディング、要件変更への対応 🔴 非代替的

🧭 エンジニアが向かうべき未来

エンジニアという職業はなくなるどころか、むしろ進化し続ける職業です。

過去を振り返れば、

  • アセンブリ言語 → C → Python → ライブラリ → ノーコード
    と抽象度が上がっても、エンジニアの数は減るどころか増えています

これからのエンジニアには、

  • AIを正しく使いこなすリテラシー
  • プロジェクトを抽象的に定義できる力
  • 他者と協働しながら問題を解決する力

といった、人間らしい「上位スキル」がより強く求められるようになります。


✨ 結論:エンジニアの仕事は「変わる」、でも「なくならない」

50%ホライゾンで見たとき、AIは急速にエンジニアの補助として強力な力を持ちつつあります。しかし、その進化が意味するのは、

「仕事がなくなる」のではなく、
「仕事の本質が変わる」ということ。

これからのエンジニアは、「AIがコードを書ける世界」でどう価値を出すかを考え、むしろその力を借りて、より創造的で、人間らしい仕事に集中できるようになるでしょう。

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