🐡

Evidently AI の落とし穴と注意点

2025/03/11に公開

はじめに

Evidently AI は、機械学習モデルのデータドリフトや精度の劣化を監視するのに便利なツールですが、適用する際にはいくつかの落とし穴があります。本記事では、Evidently AI の制限や注意すべきポイントについて詳しく解説します。


1. 落とし穴 ① : 過剰なデータドリフト検出

問題点

  • Evidently AI は統計的手法(Kolmogorov-Smirnov テスト、Jensen-Shannon ダイバージェンスなど)を使ってデータドリフトを検出しますが、少しの変化でも「ドリフト」と判定してしまうことがある
  • 実際には、モデルのパフォーマンスに影響を与えない変化もある。

対策

✅ しきい値 (p-valuedrift_score) を適切に調整する。
Evidently の結果だけでなく、実際の精度 (Accuracy, RMSE, AUC) も併せて監視する。

from evidently.metrics import DataDriftTable

# p-value のしきい値を 0.01 ではなく 0.05 に変更
data_drift = DataDriftTable(options={'p_value_threshold': 0.05})

2. 落とし穴 ② : カテゴリカルデータの扱い

問題点

  • Categorical な特徴量 (one-hot encoding された変数など) に対するデータドリフト検出が不正確になることがある。
  • 特に、カテゴリ数が多い場合(例:100以上のユニーク値)に誤判定が発生しやすい

対策

category_threshold を設定し、カテゴリ数が多い変数を連続変数として扱う。
PSI (Population Stability Index) を用いてカテゴリデータの変化を検出する。

from evidently.metrics import DatasetDriftMetric

# カテゴリ変数のしきい値を設定
dataset_drift = DatasetDriftMetric(options={'category_threshold': 50})

3. 落とし穴 ③ : スモールデータでの誤検出

問題点

  • データのサンプル数が少ない場合、統計的な有意性を得るのが難しくなり、Evidently が誤検出を起こしやすい
  • 特に、オンライン学習やストリーミングデータの監視では、サンプルサイズが小さくなりがち。

対策

min_sample_size を設定し、十分なデータ量が確保された場合のみドリフト検出を行う。
✅ 事前にサンプリング戦略を決め、バッチごとにデータを蓄積して評価する。

from evidently.metrics import DataDriftMetric

# 最低限のサンプルサイズを設定
data_drift = DataDriftMetric(options={'min_sample_size': 500})

4. 落とし穴 ④ : モデルのパフォーマンスとデータドリフトの関係が不明瞭

問題点

  • データドリフトが発生したとしても、それが実際にモデルのパフォーマンスに悪影響を与えているかは別の問題
  • 例えば、特徴量の一部が変化しても、モデルの精度に影響がない場合がある

対策

✅ Evidently AI のデータドリフトレポートと モデル評価メトリクス (AUC, MSE など) を組み合わせて監視する。
✅ SHAP や Feature Importance を活用し、重要な変数の変化を重点的に監視する。

from evidently.metric_preset import RegressionPreset

# モデルの評価メトリクスも確認
model_report = Report(metrics=[RegressionPreset()])
model_report.run(reference_data=reference_data, current_data=current_data)
model_report.show()

5. 落とし穴 ⑤ : リアルタイムモニタリングの負荷

問題点

  • リアルタイムのデータストリームに対して Evidently を実行すると、計算負荷が高くなる。
  • 特に、大量のデータを扱う場合、レスポンス時間が増加し、システムのパフォーマンスに影響を与える。

対策

✅ バッチ処理を導入し、一定の間隔で評価を行う。
✅ 必要なメトリクスだけを選択し、計算負荷を軽減する。

from evidently.dashboard import Dashboard

dashboard = Dashboard(metrics=[DataDriftPreset()])
while True:
    dashboard.run(reference_data=reference_data, current_data=current_data)
    dashboard.show()
    time.sleep(600)  # 10分ごとに実行

まとめ

Evidently AI は強力なツールですが、適切に使用しないと 誤判定や過剰な負荷 を引き起こす可能性があります。以下の点に注意しましょう。

データドリフトのしきい値を適切に設定 (過検出を防ぐ)
カテゴリカルデータの扱いに注意 (カテゴリ数が多い場合の誤判定を防ぐ)
スモールデータでの統計的誤差を考慮 (サンプルサイズを確保)
モデルのパフォーマンスとデータドリフトを分けて考える
リアルタイム監視の負荷を最適化 (バッチ処理で負荷軽減)

これらの注意点を理解し、Evidently AI を賢く活用しましょう!

Discussion