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Omeka Sで独立した作者データベースを構築する方法

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はじめに

美術館や図書館のデジタルアーカイブでよく見られる課題として、「作品と作者の関係を適切に管理したい」というニーズがあります。特に、一人の作者が複数の作品を制作している場合や、複数の作者が共同で一つの作品を制作している場合、その関係性を明確に表現し、検索可能にすることが重要です。

この記事では、Omeka Sで作者データベースを独立して構築し、作品とリンクさせる方法について解説します。

課題の要点

  1. 独立した作者データベースの構築: 作品データベースとは別に、作者(執筆者)のデータベースを作成し、両者をリンクさせることは可能か?
  2. 複数作者への対応: 一つの論文やデザインに複数の作者がいる場合、どのように表現すればよいか?

解決方法

1. 作者を独立したアイテムとして登録する

Omeka Sでは、作者を独立した「アイテム」として登録することで、作者データベースを構築できます。

手順:

ステップ1: 作者用のアイテムセットを作成

  1. 「アイテムセット」から「新規アイテムセット」を作成
  2. タイトルを「作者一覧」などとする

  1. このアイテムセットに全ての作者アイテムを収納

ステップ2: 作者アイテムを登録

  1. 「アイテム」→「新規アイテム」
  2. クラスは foaf:Person を選択(推奨)
  3. 作者情報を入力:
    • dcterms:title(作者名)
    • foaf:firstName(名)
    • foaf:familyName(姓)
    • dcterms:description(経歴や専門分野)
    • その他、所属機関など必要な情報

  1. 作成した「作者一覧」アイテムセットに追加

2. 作品から作者へリンクを設定する

作品アイテムの dcterms:creator(作成者)プロパティで、作者アイテムへの参照を設定します。

手順:

ステップ1: 作品アイテムを編集

  1. 作品アイテムの編集画面を開く
  2. dcterms:creatorプロパティを見つける
  3. 「値を追加」→「Omekaリソース」を選択

ステップ2: 作者アイテムをリンク

  1. 「選択リソース無し」ボタンをクリック
  2. サイドバーが開き、アイテム検索が可能になる
  3. 作成済みの作者アイテムを検索
  4. 該当する作者を選択して「追加」

これにより、作品アイテムと作者アイテムが関連付けられます。

3. 複数作者への対応

Omeka Sでは、同一プロパティに複数の値を追加できます。

手順:

  1. 作品アイテムの dcterms:creator フィールドで、「値を追加」ボタンを再度クリック

  1. 2人目、3人目の作者アイテムを同様に選択して追加
  2. 必要な人数分だけ繰り返す

重要なポイント:

  • Dublin Coreの dcterms:creator は、複数の値を持つことが想定されています
  • 同じプロパティに複数の作者アイテムをリンクすることで、共著論文やコラボレーション作品を適切に表現できます

4. 作者の作品一覧を表示する

作者アイテムのページから、その作者が制作した全作品を一覧表示できます。

Omeka Sの標準機能を使う:

  1. 作者アイテムの詳細ページを表示
  2. 「リンクされたリソース」セクションに、その作者が dcterms:creator として設定されている全アイテムが自動的に表示されます

より高度な表示が必要な場合:

サイトページで高度な検索機能を使用します:

管理画面 → サイト → ページ → 新規ページ → ブロック「アイテム」を追加
→ 詳細検索で特定の作者にリンクされたアイテムのみを表示

実装例

作者アイテムの例:

タイトル: 山田太郎
クラス: foaf:Person
プロパティ:
  - foaf:familyName: 山田
  - foaf:firstName: 太郎
  - dcterms:description: 広告デザイン研究者
アイテムセット: 作者一覧

作品アイテムの例(単独作者):

タイトル: 戦後日本の広告デザインの変遷
クラス: bibo:AcademicArticle
プロパティ:
  - dcterms:creator: [山田太郎へのリンク]
  - dcterms:date: 2024

作品アイテムの例(複数作者):

タイトル: 広告メディアの多様化に関する研究
クラス: bibo:AcademicArticle
プロパティ:
  - dcterms:creator: [山田太郎へのリンク]
  - dcterms:creator: [鈴木花子へのリンク]
  - dcterms:creator: [佐藤一郎へのリンク]
  - dcterms:date: 2024

まとめ

Omeka Sでは、以下の手順で作者データベースを独立させ、作品とリンクすることができます:

  1. 作者を独立したアイテムとして登録
  2. 作品の dcterms:creator プロパティで「Omekaリソース」として作者アイテムをリンク
  3. 複数作者の場合は、同じプロパティに複数の値を追加
  4. 作者アイテムの詳細ページで、その作者の全作品を自動的に一覧表示

この方法は、美術館や図書館のデジタルアーカイブでは標準的なアプローチであり、Omeka Sの設計思想に沿った実装方法です。データの整合性を保ちながら、柔軟な検索と表示が可能になります。

参考リンク

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