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大学祭をキャッシュレス化して注目を集めた(かった)話

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大学祭をキャッシュレス化して注目を集めた話

こんにちは。大阪電気通信大学 大学祭実行委員会 管理部 元部長です。
この記事では、大学祭で「PayPay」「d払い」「auPAY」の3社キャッシュレス決済を導入した体験を紹介します。

📝 注記
本記事は2024年度の大学祭での取り組みをもとに当時を振り返って2025年に執筆しています。
当時の部署名や体制は現在と異なる場合があります。


🎡 背景:現金のみで運営されていた大学祭

私の大学祭では、これまで**すべての模擬店や展示発表が「現金のみ」**で運営されていました。
飲食の支払いも展示物の購入もすべて現金でのやり取り。
電子決済の導入は一度も検討されたことがありませんでした。

運営面でも、釣銭の準備や売上集計などの負担が多く、
来場者にとっても「キャッシュレスが当たり前」の時代に逆行しているように感じていました。


💡 導入を決めたきっかけ

私は大学祭の運営に関わる中で、
「もっと注目される大学祭にしたい」という想いを持っていました。

キャッシュレスを導入すれば、

  • 取材やプレスリリースで話題になる
  • 来場者にとって便利で印象的な体験になる
  • 模擬店や展示の売上・来場者数アップにつながる

と考え、個人的な発案としてキャッシュレス導入を提案しました。
単なる利便性のためではなく、大学祭そのものを盛り上げる仕掛けとして位置づけました。

当時、学園祭でキャッシュレスを導入する動きが全国的に広がり始めており、
特にau PAYでは「学園祭向けキャッシュレス導入受付」を開始していました。
KDDIニュースリリース
auPAY公式メディア記事

本学でもこの取り組みが実現し、
大阪電気通信大学の公式サイトやPRTIMESでも「3社キャッシュレス導入」として紹介されました。
大学公式ニュースPRTIMES記事


🏦 なぜ3社すべてを導入したのか

当初から「どの会社のキャッシュレスにするか」は大きな論点でした。
多くの大学や高校の学園祭では、PayPayやauPAYなど1社のみを導入するケースが一般的です。
しかし私は、「1社に限定してしまうと、利便性が十分に発揮されない」と感じていました。

特定の経済圏(PayPay経済圏、dポイント、Pontaなど)に属している人は
恩恵を受けられますが、それ以外の来場者にとっては使えない・ポイントがつかないという制約があります。

大学祭という「誰でも来られるオープンイベント」である以上、
できるだけ多くの来場者が自分の使い慣れた決済手段を選べる環境を作りたかった。
その考えから、あえて3社すべてのキャッシュレスを導入しました。

結果的に、PayPay・d払い・auPAYのいずれも利用者が分散し、
幅広い層に対応できたことで「使いやすかった」という声を多くもらいました。


🤝 3社との交渉と導入の流れ

キャッシュレス導入を決めた後、
私はすぐに主要3社(PayPay・d払い・auPAY)に連絡を取り始めました。
しかし、大学祭のような学生主体の一時的イベントに対応している例は少なく、
ここからが本当の挑戦でした。


🟧 auPAY:学園祭向けの導入事例が鍵に

最初に動いたのがauPAY(KDDI)でした。
調べてみると、過去に
高校の学園祭での導入事例
があり、
専用の問い合わせページも用意されていました。

そこからフォーム経由で問い合わせを送ると、数日後に担当者の方から連絡があり、
学内イベント向けの資料や手順を詳しく案内してもらえました。

「学園祭での導入は、地域の若者へのPRにもなる」
という前向きな姿勢で、非常にスムーズに話が進みました。

当日にはauPAYのサポートブースも設置され、
利用方法の説明やアプリの初期設定を手伝ってくださりました。
現場スタッフの方々が通信チェックまでしてくださり、
初日のトラブルを防げたのはこの協力のおかげでした。


🟦 PayPay:電話から始まった導入交渉

次に動いたのがPayPayです。
導入事例はあったものの、学園祭専用の窓口は存在しませんでした。
そこで私はまず「PayPayお客様センター」に直接電話をかけました。

事情を説明すると、「法人対応窓口におつなぎします」と案内され、
後日、法人営業担当の方から折り返しをもらいました。

そこから、大学との契約調整や申請書類のやり取りなど、
本格的な導入プロセスに進みました。


🟥 d払い:最も苦戦した交渉、そして一番心に残った協力

そして最大の難関が**d払い(NTTドコモ)**でした。
当時、学園祭での導入事例がまったく見当たらず
どこに問い合わせればよいのかも不明でした。

まず「d払いお客様センター」に電話しましたが、
「個人向けサービスのため、イベント対応はできません」との回答。
そこから別部署を紹介され、また別部署へ……と転送が続きました。

結果的に、3時間近く電話をかけ続けて複数の部署を巡ることに。
ようやく法人決済担当の部署につながり、事情を説明したところ、
「大学法人を通せば導入可能」との返答を得ました。

その後、正式に担当者から折り返しの連絡があり、
導入の流れを一から丁寧に案内してもらうことができました。


🤝 そこから広がった新しいつながり

特に印象的だったのは、関西CS(カスタマーサービス)部門の担当の方が、
「決済だけでなく、大学祭や地域企画にも協力したい」と申し出てくださったことです。

このご縁から、大学祭とは別に企画していた
「車と防災の探検フェス」(防災・地域連携イベント)でも協力をいただきました。

  • ドコモの移動基地局の展示・体験ブース
  • ラグビークラブ体験会の開催サポート
  • そして当日には、**ドコモのキャラクター「ポインコポインタ」**の着ぐるみが登場

子どもから大人まで楽しめる盛り上がりとなり、
「キャッシュレス導入をきっかけに企業とのつながりが生まれる」という貴重な経験になりました。

また、大学祭当日にもd払いブースを出展してくださり、
来場者の初期設定サポートや利用案内をその場で行ってくれました。
これにより、初めてスマホ決済を使う来場者でも安心して体験できる環境が整いました。


🏫 大学との調整と契約の壁

3社との交渉がまとまった段階で、
今度は大学法人との契約調整に入りました。

学生団体単独では契約ができないため、
大学法人を通して手続きを進める必要がありました。
ここで大きなハードルとなったのが、法人契約に学長または理事長の承認と押印が必要という点です。

そのため、大学祭の決済手続きよりも時間がかかり、
複数の部署を経由して慎重に進める必要がありました。
大学全体を巻き込むプロジェクトとして扱われ、書類の整備や日程調整にも苦労しました。

それでも最終的には、大学側の理解と協力を得て、
3社すべてのキャッシュレス決済が正式に導入されることとなりました。


⚙️ 導入準備と仕組み

今回はすべて、来場者が店舗ごとのQRコードを読み取る方式に統一しました。
店舗側に特別な端末やアプリを導入する必要がなく、
現金決済と並行して運用できるのがメリットでした。

各模擬店には、事前に発行したQRコードを配布して掲示。
支払い後は、スタッフが来場者のスマホ画面を確認して完了とする運用です。


⚠️ 当日の課題と現場対応

当日は「金券(=現金交換) or キャッシュレス」の併用体制で運用しました。
予想外だったのは、金券の需要が想定より高かったことです。
「一応用意しておこう」と少量だけ印刷していた金券が、
昼過ぎにはほとんどなくなり、急遽その場で追加発行する作業が発生しました。

また、キャッシュレス決済では売上が即日手元に入らないという問題もありました。
従来の現金制では、模擬店の打ち上げ費用などに当日分を使うことができましたが、
今回は決済サイクルの関係で振り込みが約1か月後となりました。


💰 手数料と今後の課題

キャッシュレス決済には手数料が発生します。
今回は大学祭の運営予算からその手数料を負担し、
模擬店や展示の参加団体には全額を還元する形をとりました。

ただし、今後も継続する場合、

  • 手数料を誰が負担するのか
  • 現金払いとのバランスをどう取るか
  • 売上振込までの期間をどう補填するか

といった点が大きな課題として残りました。


📊 結果と影響

  • 来場者の約40%がキャッシュレスを利用
  • 模擬店全体の売上は前年比+20%
  • 展示の来場者数も増加
  • SNSやメディアで話題となり、大学祭全体の注目度が上昇

🧭 学びと今後

今回の経験で強く感じたのは、
「仕組みを作ることよりも、信頼と調整のほうが難しい」 ということです。

企業・大学・模擬店・来場者──すべての立場の理解と協力があってこそ、
キャッシュレス導入は実現しました。

また、便利さだけでなく、運用・資金・契約といった“裏側のリアル” を体験できたのは、
学生として大きな学びでした。

今後は電子チケットやポイント還元など、
より大学祭を盛り上げる新しい仕組みにも挑戦していきたいです。


💬 導入を検討している方へ

もしこの記事を読んでいる学園祭の実行委員会や学校関係者の方がいたら、
ぜひ「一社だけ」ではなく、複数社のキャッシュレスを導入することを検討してほしいと思います。

どの経済圏の利用者でも平等に楽しめる環境を作ることが、
来場者の満足度とイベントの価値を最大化する一歩になるはずです。


📞 現在の問い合わせ窓口について

この記事で紹介した2024年度当時は、学園祭などの一時イベントでのキャッシュレス導入に関する
公式窓口が整っておらず、各社への連絡に非常に苦労しました。

しかし現在は、各社とも学園祭・文化祭などへの導入受付ページを公開しています。
もし同じように導入を検討している方がいれば、以下のリンクから直接問い合わせできます。

こうした環境の整備によって、今後はより多くの大学や高校で
キャッシュレスが当たり前の文化祭になることを期待しています。


🪙 おわりに

今回の挑戦は、「便利にしたい」だけでなく、
「大学祭をもっと面白く、注目されるイベントにしたい」 という想いから始まりました。

結果として、キャッシュレスは単なる決済手段ではなく、
来場者と運営をつなぐ“話題の仕掛け”になりました。

学生でも社会の仕組みを動かせる。
それを実感できたプロジェクトでした。


大阪電気通信大学 大学祭実行委員会 管理部 元部長
(引き継ぎが上手くいかずキャッシュレス決済の導入が途切れてしまい
この記事にたどり着いたら、参考に感張ってみてください)


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