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Slack Emoji Reactionに感じる弊害について

吉村吉村

https://twitter.com/so_hasegawa/status/1537614818479587328
Twitterでこういうの見かけたから、昔に別媒体で書いた内容の転載。
「昔より気軽に色んな人からこういう対処してますっていうのを聞けそうだなー」と思ったので、Scrapの試用もかねて作成

本題

  • 別にSlackの絵文字自体は悪くない。
  • 使い方が明らかに悪い方向に行きやすいから、なんらかの対策とらないといかんねー、という話。
  • なんかこれ絵文字で対応するのマズいんじゃないの、と肌感覚で感じることに対して絵文字リアクションがとられることが弊社で散見されるようになってきたので、どうすっかなー、という覚書
吉村吉村

Slackの絵文字のメリット

  • ワンポチで楽
  • 見てますよーという意図だけ伝えるときに、チャンネル汚すことがない
    • 非同期ストリーム型の情報は流すものだとしても、ストックから遠いフロー情報をわざわざ残す必要もない
  • 日常的にキーボード使わない人でも、早め早めにリアクション出して参加しやすい
  • 心情的に楽
  • 一個の絵文字にいろんな意味を突っ込める
    • 解釈を組織やチームによって分けることで、変に文字打つより数倍早い処理とか可能になる
      • ある絵文字を叩いたらSlack Commandっぽく動くとか、リアクションに対してbotに監視させるとか、チームで集まって話すシグナルとして使うとか
  • 単純に見てて楽しい。楽しいので、Slackになんか文字打つとか雑なリアクションするという心理的なハードルが下がる。
  • 敬意のノイズを省ける
    • 敬意は全部ノイズってわけじゃなくて、敬意とか文書校正とかに伴う言語の細かい修正って実質ノイズになることとか多くない?社内・プロジェクト内コミュニケーションにおいては省けるものも多いよね、って話。

Slackの絵文字のデメリット

  • 込める意図が広すぎて拾いにくいものがある
    • ex. https://twitter.com/piyopoppo/status/1285025883309215744
      • 「今悩んでて、あとで答える」なのか、「今悩んでて、検討がつかない」なのか、「は?」なのか
      • 絵文字の意味は組織外のコンテキストによっても変化する。例えば、Twitter長いことやってる人にとって、この悩む顔文字は「何言ってんだお前アホちゃうか」という煽りの意味も多少含む。
  • 「その絵文字をつけたから、あなたはどうするの?」という、次に続くアクションがある場合、そのアクションが見えづらく、逆に話を聞く必要あって手間になることも。
    • 絵文字付けた方については「リアクションをした」という意識があるため、情報の非対称性があるのに表面化しづらく、単なる人間関係の対立として見られてしまう。
吉村吉村

デメリットが結構致命的になりそうなのに、なぜあまり問題が顕在化しないのか。

実証してないので全部仮説レベル

それでもメリットの方が大きいから

  • Slackによるやりとりの透明化・簡易化・チャンネルによる情報経路分割は、特に物理的距離が遠くなりやすいリモートワーク環境では本当に強い。なので、参加しづらい人間に対してどんどん心理的障壁下げてった方がメリットでかい。

Slackによる良質のコミュニケーションまでの課題として、二段階の壁があるから

  • 1つはツール利用・発言する行為そのものの壁。もう1つはコミュニケーションとして伝えるものを言語化するという壁
  • 1つ目の壁は絵文字によってかなり和らげられるが、2つ目は逆にコミュニケーションの端々を切り落とし、阻害を起こす。企業においては、1つ目の壁を超えることが課題としてマスであり、2つ目は社内で共有すべきこととして顕在化しにくいから。

アーリーアダプターはこの問題にぶちあたってないから

  • そもそもこの問題に最初にぶちあたって解消してるはずのアーリーアダプターはよく話し、よくチャットで解消を考えるチームのため、キャズムの向こう側が抱える悩みとして顕現してないから(Emoji Reactionの利用を前提としたSlackの運用に最初から慣れ親しみ、Emoji Reactionのみで対応しようとするタイプが現れなかった)

アーリーアダプターでさえも解決法が見当たらないから

  • 書けない・書かないので、知見が共有されてない・存在しない。
    • 人の問題なんだから仕組みベースで考えるなよ、みたいな。個人的には仕組みベースである程度いけそうな気もするが、上手く仕組化は思いつかない。
吉村吉村

じゃあどうするか

  • 上記の二段階のコミュニケーションの壁仮説をひとまず採用。

  • Slackの、というか、非同期文字コミュニケーションの性質を分解し、その項目によって適切な手法を選べるよう訓練・周知を最初っから行ってかないと、2番目の壁にひっかかってしまう気がする。マトリクス表化すると多分以下のような感じ

  • 発話者が相談のつもりで、アクションや詳しい理由を求めている場合でも、対話者が絵文字で対応しちゃうという状況もある

    • 相談で許される絵文字も限られていて、「wait」だったり「あとで」みたいなものをとりあえずスタンプとして付けたり、「把握したけど待って」みたいなのを出すのはOK、考え中の顔みたいな、コンテキストによって受け取る意図が左右されるタイプの顔はNG、みたいな感じ。
    • 基本的に相談はハイコンテキストなものが多いから、相談セクションにある場合は全面的に絵文字を禁止してしまってもいいかもしれない
    • 緊急事態でも一部の絵文字は結構有用だったりする。「人手が必要なので手伝える人はリアクションお願いします」みたいなケース。
  • チャンネルごとに性質をわけて考えるか、先に「相談です」「緊急事態です」みたいな宣言してから話すかは自由だけど、対話の性質を認識したうえで話さないと、絵文字を使ったせいで情報の非対称性が発生するかも。

  • どのような形にせよ、「〇〇してほしい」「〇〇について教えてほしい」(相談セクション)に対して、絵文字リアクションで対応するのはほとんどの場合適さない、というのを意識してもらうようチャンネル設計・ルール策定するのがいいかも。

  • スクラムだとそもそも「全部対話しなよ」って感じだけど、コロナ禍の現状だと文字コミュニケーションを意識した設計を考えておくのは損ではないと思う。