開発のボトルネックを取り除きスループットを向上させるイネーブリングチームの立ち上げについて
こんにちは。マイベストの @miraoto です。
2025年1月をもってCTOを退任し、現在は開発部長として開発組織とシステムのエンパワーメントに従事しています。
今回は、組織のエンパワーメントを目的として立ち上げたイネーブリングチームについて、経緯や立ち上げ時の取り組みを共有させていただきます。
同じような課題感を持っていたり、イネーブリングチームの事例を探されている方に少しでも届けば幸いです。
イネーブリングチームとは?
イネーブリングチームは、書籍『チームトポロジー』で提唱されている「高速なデリバリーを実現するための4つの基本的なチームタイプ」の1つで、具体的には、「特定のテクニカル(またはプロダクト)ドメインのスペシャリストで構成され、能力ギャップを埋めることを支援する」ことを目的としたチームです。
弊社では、既に「価値のある単一の仕事のストリームに沿って働く」ことを目的としたストリームアラインドチーム(弊社ではミッションチームと呼んでおり、以下ミッションチームとさせていただきます)は存在していました。しかし、これまで開発イネーブルメント活動はミッションチームのメンバーが兼務する形で運用されていました。
なお、取り組みの一部はメンバーのZenn記事でも紹介されています。
兼務のメリット・デメリットとイネーブリングチーム立ち上げの経緯
創業当初から、開発イネーブルメント活動には時間とリソースを継続的に投資してきました。その結果、組織全体で開発イネーブルメントの重要性を理解し、開発メンバーが自発的に課題を提起し、改善活動を行う風土を醸成することができました。この風土は引き続き継続しており、現在でも全体の約2割のリソースを開発イネーブルメント活動に充てています。以前ご紹介させていただいたSparkJoy Dayという取り組みもこの活動の一環です。
一方で、組織やサービスが拡大するにつれて、以下のような課題が顕在化しました:
- 開発課題の全体像が分かりづらくなり、課題解消の優先度判断が難しくなった
- 非機能要件の変化に伴い、技術負債が事業課題の進捗に影響を及ぼすようになった
- DXを支えていたツールや仕組みが、組織規模の拡大によって限界に近づいた
- 横断的な課題を所有するメンバーが不在となり、技術課題の解消が滞った
できる限り仕組み化によって課題を解消しようと試みたものの、仕組みの維持・運用コストが大きく、これらの問題は開発者体験(DX)にも悪影響を及ぼしつつあったため、優先度を上げて対応する必要があると判断し、開発イネーブルメント活動を主務とするチームを立ち上げました。
チームの構成と役割
立ち上げ時の体制ですが、弊社の開発組織は元々「職能」と「課題」のマトリクス型構造になっていたこともあり、この形は基本維持しつつ、イネーブリングチームのエンジニアはプラットフォーム・イネーブリングチームに所属するような組織にしました。
イネーブリングチームは、ミッションチームが独力で行うよりも効率的に能力を獲得できるようサポートするために、バックエンド、フロントエンド、SRE、QAの各専門領域のメンバーが在籍するような体制になっています。
チームの目標とKPI
イネーブリングチームは「ミッションチームが課題に集中し独立して業務を進められるようになる状態」にするため、現場で起きている課題の解像度を上げ、技術領域からプロダクト開発をエンパワーメントさせるというObjectiveと、開発生産量・開発者体験・サイト信頼性の3つをKey Resultとして設定しました。
ここはまだ試験運用中なので調整しながらイネーブリングチームの貢献をどう目標に据えるか検討中です。
各所への期待値調整
現在の組織は、イネーブリング業務というものがなんであるか理解を持つメンバーが少なく、チームトポロジーに関する知識にもばらつきがある状況でした。そのため、まずはイネーブリングチームがやること・やらないことを言語化し伝えることで、組織やサービスへの貢献の形をイメージしてもらうようにしました。
また、それぞれの専門性別に、具体的な役割と関わり方(チームトポロジーのインタラクションモード)をフォーマット化し、運用時の曖昧さを軽減する取り組みを行っています。
具体的な活動
イネーブリングチームでの具体的な活動内容も少し紹介したいと思います。
開発課題の収集
開発に関する課題は、Notionフォームを活用して開発メンバーから直接収集しています。
これにより、現場で実際に発生している問題や改善点を把握しやすくなっています。
収集された課題は分類・整理され、イネーブリング課題リストとして管理する予定です。これにより、課題の優先順位を明確化し、効率的に対応できる体制を構築しています。
専門別のイネーブルメントの動き方の認識合わせ
イネーブリングチームでは、各専門分野における目標とサポート方針を明確化し、各チームとの認識を揃えています。
具体的には、イネーブリングチームの大方針に基づき、各ミッションチームとヒアリングを実施し、以下のようなゴールとサポートの枠組みを提示しています。
ミッション業務への観察的コラボレーション
イネーブリングチームは、現場で起きている課題の解像度を上げ、技術領域からプロダクト開発をエンパワーメントさせるというObjectiveを達成するため、ミッションチームの業務に実際に参加する「観察的コラボレーション」を実施しています。
- QA:各ミッションにQAエンジニアとして1スプリント入り、テストや障害ふりかえりに参加
- バックエンド:バックエンドに関するプルリクエストにオブザーバーとして参加
このような取り組みを通じて、現場の課題を深く理解しつつ、イネーブルメントの方向性を具体化しています。
さいごに
今回は、イネーブリングチームの立ち上げに関する背景や具体的な取り組みについてご紹介しました。
ちなみに、現在開発組織全体での1日のデプロイ数は14.1件(エンジニア人数は22名)あり、数値だけ見るとアウトプットの少ない組織ではないと思っていますが、弊社では安定して高い生産性を維持できる開発組織を強みにしたいと考えており、今回のイネーブリングチーム立ち上げをはじめ、長期的な視点で技術や組織の改善を続けていく方針です。
今後も継続的に、開発イネーブルメント活動に関する取り組みや成果を発信していきますので、ご興味のある方はぜひ以下のアカウントをフォローしてみてください。
また、弊社では現在も採用活動を積極的に進めています。
開発イネーブルメントやチームトポロジーにご興味のある方は、以下のリンクからぜひご連絡ください!

株式会社マイベストのテックブログです! 採用情報はこちら > notion.so/mybestcom/mybest-information-for-Engineers-8beadd9c91ef4dc2b21171d48a4b0c49
Discussion