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YANS2023参加報告

2023/09/06に公開

はじめに

今回は,YANS2023の参加報告をします.私はこのYANS2023が初めての学会発表だったので緊張しましたが,たくさんの人に聴きに来ていただいて,奨励賞とスポンサー賞を受賞することができました!本参加報告は主にYANSに参加したことがない方向けに書いていこうと思いますが,YANS委員の方や,ポスター発表を聴きに来てくださった方にも少しメッセージを書いておりますのでよろしければご覧ください.

YANSとは? & 全体の流れ

YANS(NLP若手の会シンポジウム)とは,自然言語処理関連分野の若手研究者および技術者の研究・技術開発はもちろん交流や成長を促す場を提供し,この分野の学問や産業が発展することを目的に年に1度開催される研究シンポジウムです.詳しい説明は以下をご覧ください.
https://yans.anlp.jp/entry/yans2023

私が参加したYANS2023は4年ぶりの現地開催となり,たくさんの研究者やポスターを目の前で見ることができました.シンポジウムの全体の流れは以下の通りです.

  • 0日目
    • デモアプリ開発ハッカソン
    • リーダボードハッカソン
  • 1日目
    • オープニング
    • チュートリアル
    • ポスターセッション
    • ラウンドテーブル
    • スポンサーセッション
    • YANSスペシャルセッション
  • 2日目
    • チュートリアル
    • スポンサーセッション
    • ポスターセッション
    • パネルディスカッション
    • 招待セッション
    • クロージング

各プログラムの概要については以下をご覧ください.
https://yans.anlp.jp/entry/yans2023program

各プログラムについての説明

ハッカソン

ハッカソンとは,複数人かつ短時間で指定されたものを開発するイベントのことです.YANS2023のハッカソンのテーマとしてはデモアプリとリーダーボードがあり,私はデモアプリの方に参加しました.今回のハッカソンの課題は以下の通りで,各チーム5, 6人のチームで,4時間で指定されたものを作成しました.

  • リーダーボード :良い広告文の生成
  • デモアプリ   :OpenAIのAPIを用いたマルチモーダルアプリの作成

デモアプリ開発ハッカソンの大まかな流れは以下の通りです.

  • 自己紹介をする
  • みんなで案出しをする
  • 実現できそうかつ面白そうな案に絞る
  • 案を実現するために調べるなどする
  • コードを書く
  • 発表スライドを作成する

また,ハッカソン終了後は各チームのプレゼンと投票,そして優秀賞と審査員特別賞の受賞チームの発表がありました.ただし,デモアプリ開発ハッカソンの優秀賞については,シンポジウム期間中に参加者に実際にアプリを遊んでもらって投票で決定するので,ここではまだ優秀賞は決まっていません.

次に,参考として私たちのチームの開発について説明します.私たちのチームではテキストを入力するとそれに関するGIFアイコンを自動生成するアプリを開発しました.私は主に案出しとプロンプトエンジニアリング,スライド作成を担当しました.

当初は入力された画像をプロンプトの指示に従って編集し,GIFにすることを試みていたのですが,DALL・Eを制御するのが想像以上に難しく難航した結果,最終的に上記のアプリに落ち着きました.

デモ動画がこちらです.
https://youtu.be/IykDwgM50sA

今回のハッカソンを通して学んだことは以下の通りです.初めてハッカソンに参加される方は以下を意識されると良いかと思います.

  • 事前にアイデアを考えておいたおかげで,スムーズな案出しができた.
  • 事前に共有されたデモアプリを触っておいたおかげで,具体的なイメージを持って案を考えたり作業をしたりすることができた.
  • 良いものを作ろうとしてできるかどうかわからないことに固執してしまい,アプリとスライドの完成がギリギリになってしまった.このことから,先に低クオリティのものを完成させておいて,後からそれをブラッシュアップさせるほうが良いことを学んだ.Done is better than perfect. がまさにそうであると実感した.
  • メンバーの役割を行き当たりばったりで決めていたので,多少時間をかけてでも先にメンバーの得意不得意を把握し,分担を割り振っていた方がよりスムーズに動けると感じた.
  • するべきことのタイムスケジュールをあらかじめ立てておき,それまでにできなかったことは諦めて違う作戦を立てるなどすれば余裕を持ってアプリとスライド作成に取り組めたと感じた.
  • 自分からやることを見つけ,わかったことを共有するのが開発を前に進める上で大切だなと感じた.

残念ながら私たちのチームは受賞することはできませんでしたが,チームで,そして短時間でアプリ開発をするという経験は初めてだったため,大変貴重なものになりました.最初は4時間で本当にアプリ完成するのか??と不安に思っていましたが,人が何人も集まると新しいアイデアが生まれたり,コードを書くのがものすごく早い人がいたり,発表が得意な人がいたりと,1人では考えられない効率と質でアプリを開発し,発表することができて,チームで作業する大切さを学びました.

オープニング

YANS委員長のエモ挨拶があったり,今後の予定の説明などがあったりしました.また,オープニングで一番印象に残っていたのはスタンプラリーの話でした.今回のYANSでは企業ブースを巡るスタンプラリーがあり,8つまわるとYANS Tシャツが当たる抽選に参加することができました.来年もしYANS Tシャツをもらえる企画があったら,かわいいのでぜひGETしてみてください.🌱

委員長のエモ挨拶

委員長のエモ挨拶は,委員長が最初に参加したYANSで先輩研究者にポスターを見に来てもらって褒めてもらうなどあたたかく受け入れてもらったことで,研究を頑張ることができたというエモい内容のお話でした.私も今回たくさんの方にポスターを見に来ていただき,そしてレジェンド研究者の方にも発表を聴きたいと思っていたと言っていただけ,とても嬉しく思いました.きっと私も,NLP研究者の新芽としてあたたかく迎え入れてもらえたのだと思います.🌱


YANS Tシャツのロゴ


会場の様子


カジー・ポッター(委員長の梶原智之氏)

ラウンドテーブル

これは,あらかじめ用意されたテーマについて5, 6人に分かれて議論をするというものです.1回20分程度で,計2回行いました.私の最初のテーマは生成タスクについてで,2つ目のテーマは卒業後のキャリアについてでした.社会人の方や他大学の人と話す貴重な機会で,特に卒業後の進路についていろんな人の意見を聞けたのがよかったです.

今回は行き当たりばったりで会話していただけなのですが,事前に各テーマで他の人に聞いてみたいことについて考えていると,より有益な情報を得られそうだなと感じました.

ポスターセッション

ポスターセッションの流れは以下の通りで,このようなサイクルで規定の時間になるまで発表と質疑応答を繰り返します.

  • 聴講者がポスターの前に来る
  • 聴講者が説明を聴きたいと言う or 自分からよかったら説明させてくださいと申し出る
  • 軽く要点のみを説明する(あまり長々と説明しすぎると1サイクルが長くなり,たくさんの聴講者に発表を聴いてもらうことが難しくなる)
  • 説明し終わると,質問のある聴講者から質疑を受けるので,それに対応する
  • 質問し終わった聴講者が帰り,新しい聴講者が前に来るので説明をする

また,発表の際には,以下のことを意識しました.

  • できるだけ大きな声で発表すること
  • 要点のみを2, 3分で伝えること
  • 発表するときに聴講者の方を向くこと

たくさんの方に発表を聴いていただけたのは,研究の内容だけではなくて,上記のことを意識して発表したおかげもあるのかなと思いました.

反省点は以下の通りです.

  • なるべく多くの質疑に答えられるようにするため,日頃から論文を読み,人に説明できるレベルまで理解を深めておくこと
  • 実験をして時間が経過しているものは詳細を忘れていることがあるので,コードを軽く見直しておくこと(これで質問されてもすぐに思い出せる)

また,今回の発表では配布用のA4ポスターを持参し,名刺と一緒に配りました.さらに,裏面にはコーパスやモデル出力の例をおまけとして載せました.後ろの方にいた人は手元のA4ポスターの方が見やすかったのではないかなと思います.また,先生の助言で裏面に例を載せることにしたのですが,これによってみなさんの質問により答えることができたので,例を載せるのは良いなと思いました.次発表する時も例つきのA4ポスターを持っていきたいです.

さらに,同じ大学から複数人で参加できたこともよかったです.同行者に上記のA4ポスターを配ってもらったり,みなさんからの質問をまとめてもらったりと,大変助けてもらいました.本当に感謝しています.加えて,共著者ではないのに私の発表内容を理解し,質疑を一緒に対応してくれた同期には本当に頭が上がりません.私もこうなりたいです.

感想

ポスターセッションでは,学会で初めての発表をしました.トップバッターで緊張しましたが,練習の甲斐あって堂々と発表することができたと思います.発表が始まると予想以上にたくさんの方が聴きに来てくださり,驚いたとともに私たちの研究発表を聴きたいと思って来てくれた人がこんなにいるのかととても嬉しくなりました.みなさん熱心に質問してくださり,私も精一杯応じていたら,ポスターセッションの1時間が終わるのは本当にあっという間でした.

ちなみに,私が発表したポスターはこちらです.

  • タイトル
    「専門家が平易化した記事を用いたやさしい日本語パラレルコーパスの構築」
  • 著者
    宮⽥莉奈, 惟⾼⽇向, ⼭内洋輝, 柳本⼤輝, 梶原智之, ⼆宮崇(愛媛⼤学), ⻄脇靖紘(株式会社MATCHA)
  • 内容
    専門家が平易化した記事から人手(第四著者までの4人)で文アライメントすることで16,000文対の文単位の日本語テキスト平易化コーパス(MATCHA)を構築しました.また,既存のテキスト平易化コーパスとMATCHAコーパスについて評価した結果を報告しています.


専門家が平易化した記事を用いたやさしい日本語パラレルコーパスの構築 YANS発表ポスター

こちらのGithubにMATCHAコーパスがありますので,ぜひ使ってください!
https://github.com/EhimeNLP/matcha

クロージング

クロージングではハッカソンや,奨励賞,スポンサー賞の受賞者の発表がありました.まず,デモアプリ開発ハッカソンの優秀賞の発表と,ハッカソンで賞を取ったチームのプレゼンが行われました.

奨励賞とスポンサー賞については1研究ずつ順番に発表され,受賞した研究の第一著者(いなければ第二,第三...)が登壇し,奨励賞は委員長から,スポンサー賞は各スポンサーの方から賞状をいただくというものでした.また,スポンサー賞ではスポンサーの方から講評と副賞をいただけました.副賞はスポンサーによって様々です(例:ipad, 家計簿アプリ有料版2年無料特典 & ヘッドセット, Amazonギフト券, 高級ディナー, 沖縄土産, モニターライト etc.).また,年にもよって変わると思います.YANSに発表参加される方は,奨励賞やスポンサー賞の受賞を目指して頑張ってください!

https://twitter.com/moguranosenshi/status/1574021355896336384

ちなみにブログ著者らの研究は大変光栄なことに奨励賞とスポンサー賞をどちらもいただきました.賞状は一旦仮のものを受け取り,後日正式なものが送られてくるそうです.副賞などもその場で手渡している企業と後日郵送する企業の両方がありました.

感想

まず奨励賞については,受賞してたら嬉しいなくらいの気持ちで少しだけドキドキしながら聞いていたのですが,名前が出た時は喜びを実感する間もなく良い意味で信じられないという気持ちで登壇していました.さすがにびっくりして足が震えていました.委員長の梶原先生から賞状をいただきましたが,なんだか褒められたみたいでとっても嬉しかったです.

また,くふうカンパニー様からスポンサー賞もいただきました!まさか2つも賞をいただけるとは思っていなくて本当にびっくりしました.名前が出た時には思わず「ん???」と声が漏れてしまうほどでした.テキスト平易化は観光記事やニュース,新聞などで使われていることは知っていましたが,外国人労働者を雇っている企業にとっても有用なものであると新たに知ることができました.


奨励賞とスポンサー賞の仮賞状

プログラム以外の部分について

企業ブース

YANSではスポンサーの方々のブースがたくさんありました.ブースに訪れるとその企業の説明が聞けるのはもちろん,ノベルティとして企業のオリジナルグッズがもらえました(例:トートバッグ,うちわ,チョコ,おまんじゅう,シール,ボールペン,キーキャップ etc.).ブースでは企業がどんな研究をしているのか,どんなサービスを提供しているのかということを主に知ることできます.企業の方と直接お話しできる貴重な機会で,企業の研究で気になることがあれば質問することができますし,他にも就活情報なども入手することができますので,企業ブース巡りはおすすめです!

名刺

今回のYANSでは名刺を作って持っていき,いろんな人に受け取っていただきました.名刺にはGithub QRコードを載せていたのですが,興味を持ってくださる方が何人かいらっしゃったので入れるのおすすめです.また,Twitterのidや顔写真なども入れました.結構Twitterをやっている方が多い印象でしたので,入れておいて損はないと思います.また,顔写真も入れることで覚えてもらいやすくなるのではないかなと思います.

名刺は配るだけでなく,もらえたことも良かったです.企業の方や,同じテーマの研究をしている方,レジェンド研究者の方などをはじめとし,たくさんの方の名刺をいただけました.何かお話ししたいことがある場合はこの名刺を頼りに連絡をすることができるので,名刺は人脈だと思って嬉しくたくさんいただいています.

懇親会

シンポジウム1日目の夜にNLP新米の会の懇親会がありました.事前にパスマーケット上でチケットを買っておくと参加することができました.内容としては,ご飯を食べながらYANSに参加した人たちと交流をするというものでした.希望者は前で発表や宣伝などができました.今回はお寿司とピザをいただきました.

いろんな人と交流ができて良かったですし,特に他大学で同学年の知り合いができたのが良かったです.また,たくさんの方と名刺を交換することができました.発表が翌日の人はこの場で明日見に来てくださいって宣伝したり,もう発表が終わった人は同じセッション内でしたか!と盛り上がったり,発表を聴きに来てくださった方に会ってお礼を言ったり,各々の研究テーマについて聞いたり話したり色々お話をしました.

一番知り合いが増えたのはこの場だったので,次のYANSでもこのような懇親会があるのなら参加するのが良いと思います.🌾

YANS委員の方へ

スタンプラリー面白かったです.説明を受けていた時はよし全部集めるぞとわくわくしながら意気込んでいました.結果的に抽選には当たりませんでしたが,とっても楽しかったのでまたこんな感じの企画をやって欲しいです.

あと,委員の方々がお揃いのハリーポッターみたいなガウンを着ていて,見てて楽しかったです.暑い中ガウン着てくださってありがとうございます.楽しかったので次もなんかお揃いのコスプレをして欲しいです.

そして,準備や企画,運営など本当にお疲れ様でした.委員の皆様のおかげでハッカソンへの参加やポスター発表,企業の方や他大学の方との交流などをすることができました.今回のYANS参加でたくさんの学びを得たり,いろんな企業を知ったり,知り合いができたり,受賞できたりしましたが,どれもこれも委員の皆様がYANSを開催してくださったおかげです.本当にありがとうございました.🌱🪄

発表を聴きに来てくれた方へ

YANS2023にて「専門家が平易化した記事を用いたやさしい日本語パラレルコーパスの構築」の発表を聴きに来てくださった方々,本当にありがとうございました.上の方でも申し上げましたが,私たちの研究を聴きに来てくださる方がこんなにたくさんいるのかと本当に嬉しくなりました.たくさんの方にテキスト平易化やMATCHAコーパスについてご興味を持っていただいたこと,とても嬉しく思います.

また,たくさんのご質問ありがとうございました.自分なりに精一杯回答させていただきましたが,全てが完璧にお答えできたわけではなかったと思います.これからもっとテキスト平易化に関する知識をより深く身につけて,精進して参りたいと思います.またどこかの発表でお会いしました際は,どうぞよろしくお願いいたします.

おわりに

YANSの参加報告,いかがだったでしょうか?今まで説明してきました通り,YANSではたくさんの学ぶことがあって,たくさんの人と交流できる大変良い機会でした.発表はもちろん,聴講だけでもとっても良い経験になると思いますし,他の若手もたくさんいて,会場も和やかな雰囲気だと感じたので初めての学会参加にも良いと思います.この記事でYANSについてご興味を持っていただけましたら幸いです.また,もしどこかで宮田を見かけましたら,この記事読んだよと教えていただけるととっても嬉しいです.

感想と謝辞

今回は初めての学会発表でしたが,まず無事発表を終えることができたこと,そしてたくさんの方に聴きに来ていただけたこと,さらに賞を2つもいただけたことが本当によかったですし,何より私たちの努力が報われたことが嬉しかったです!また,このYANS2023を通して様々な企業の方とお話しすること,他の方の研究ポスターを見ること,そして知り合いをたくさん作ることもできました.

YANSを通して,自分達の研究を聞きに来てくれる人がこんなにいて,同じテーマに対して違うアプローチで取り組んでる人がたくさんいて,自分達の研究を有用だと言ってくださる企業があってと,とにかくたくさんの良い刺激をもらえました.

YANSに参加するための準備はとても大変でしたが,先生や先輩,同期たちに助けてもらったおかげで発表するまでの段階に至ることができ,さらにYANS委員やスポンサーの方々,そして聴講に来てくださった方々のおかげでポスター発表をすることができました.今回私がYANS2023で無事発表できたことに関するすべての方々に,この場でお礼申し上げます.本当にありがとうございました!🌱

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