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Microsoft Build 2025

に公開

5/19からBuildが開催されています。今回はキーノートを中心に私が気になったところを現地レポートしたいと思います。

開催場所はシアトルで、去年とは1ブロック別の会場(アーチ)です。今回は持ち物チェックが厳しくて、パソコンを預けてからの金属探知機がありました。水筒を持っていたり、金属物が多いとチェックに引っかかる人もいたので、その辺は注意したいところです。また、セキュリティチェックが厳しかったので入場にもかなり時間がかかりました。ちなみに、Day1,2の両方のキーノートで妨害がありました。どういう人かはわからないですが、合計3人がキーノート中に大声を出して何か抗議してました。恐らく、そういう情報を察知していたのでセキュリティが厳しくなったのかもしれません。この辺は日本国内のセミナーとは違って注意した方がいいかもしれません。

Keynote Day1

9時からキーノートがはじまりました。いつものようにサティアが登場して話されていきますが、今回は一番初めのトピックがVS Code(GitHub Copilot)だったので驚きました。Build自体がエンジニア向けのイベントなので、冷静に考えれば「あり」なのかもしれませんが、結構攻めた内容だったと思います。そこまで推してくるのだなと。

GitHub Copilot

コンセプトの解説(Building the open agentic web)の説明があり、
LV1:Human ask AI answers
LV2:Human assigns, AI execute
LV3:Human and AI assign tasks to each other
という風に定義されています。エージェントによる構築の流れが進んでいて、GitHubでもその世界を目指しています。Clineとの違いは?というところが正直気になりましたが、BuildではClineの「ク」の字も出てこないので、そこはわからないです。Microsoftとしては当然の流れだと思いますが、一般エンジニアとしてはこの辺は冷静に評価したいところです。

次に興味深かったのは、「Azure SRE agent」です。パブリックプレビューになっていましたが、インフラ面においてのエージェント化は強力でしょうね。主な項目としては、
①自動のインシデントマネジメント
②プロアクティブな解析と対応
③継続的な稼働状態とパフォーマンスの監視
です。この辺はSREの取り組みを考えると普通に出てくる話ですし、こういった流れへの追従は想像できますが、エンジニアとしては早いところこういう世界に移行して楽になりたいですね。全部の自動復旧は現状では難しいですが、かなりの部分が可能になってくると思います。

続いて、Coding agentの説明がありました。プログラマーにとってのソフトウェア開発のライフサイクルを全てサポートするイメージです。エージェントにタスクをオフロードして、新しい機能を作ってテストを行い、必要なドキュメントを生成して、エージェントとチームのようにコラボレーションしていく世界観です。このような考え方はAIに取り組んでいるどの企業も狙っているので、GitHub Copilotが特別先進的であるという印象はないですが、強くメッセージ性を打ち出しているとは思いました。また、パートナー向けに安全でオープンなエコシステムを提供する仕組み(Copilot control systemと言うらしいです)があるようです。その後、サムアルトマンがオンラインで登場して、ソフトウェア開発に関しての方向性について話していましたが、これまでサティアが話していた方向性とあまり変わらない(ビッグサプライズはない)という印象を持ちました。

Apps and agents

続いて、アプリケーションとエージェント関連の話に移行していきました。新しい機能や注目ポイントが紹介されたのでピックアップしていきます。

まずはTeams AIのライブラリー(※1)の紹介がありました。昨今対応が当たり前になっているMCPとA2Aの連携があり、MCPの方はGA、A2Aの方はパブリックプレビューのアナウンスがありました。Memory(機能としては、長い会話のコンテキストをパーソナライズ化するもの)もパブリックプレビューがありました。MCPとA2Aは当然として、Memoryの機能はより使いやすくなっていくと思います。Memoryを利用することで汎用的な使い方だけでなく、より自分にとってマッチしたり、シーンにマッチした使い方ができるようになるので、痒いところに手が届くような感じになると思います。

(※1)
https://techcommunity.microsoft.com/blog/microsoftteamsblog/what’s-new-in-microsoft-teams--may-2025---build-edition/4414706

次に、Copilot Studioの紹介があり、Computer use, MCP, Agent flowsの紹介がありました。Computer useはUIの自動化で、Webサイトの利用や、デスクトップアプリの利用です。人間の利用をシミュレートする感じと言った方がいいかもしれません。Computer useについては、フロンティアパブリックプレビューになっていたので、利用して試してみたい気もしますが、英語のアプリ向けとか使ってみると制限があるかもしれません。この辺は後続で情報を集めてみたいと思いました。

続いて、アナウンスのみですが、マルチエージェントのオーケストレーションがありました。直訳なのであまり上手い表現ではないですが、マルチエージェントでのシステム指示の設計方法や、エージェントからのタスクの依頼方法、AI FoundryとM365 Agents SDKとの統合などが含まれています。「エージェントをオーケストレーションする」を日本語に直すのが難しいですが、エージェントを協調して動かすための管理みたいなイメージなので、関連するコンポーネントが使えるようになってきています。

他に興味を持ったのはCopilot Tuningの発表でした。個人的に予想はしていたので、やっぱりこういう流れだよな思いつつ、期待感もあります。アーリーアクセスプログラムで公開されていましたが、自社内のナレッジ・情報にマッチしたエージェントのファインチューニングの機能です。AIの世界観の正常進化とも思いますが、よりビジネスで実践的に使っていくには必要な機能だと思います。AIの利用者目線で考えて、次に欲しくなる機能をしっかり出してくるのは、最近のMicrosoftの傾向だと思います。サービス開発でユーザーの目線をよく分析していると思います。このコントロールが簡単になってくると、よりエージェントを効率的に利用しやすくなります。

Azure AI Foundry

Azure AI Foundryのコンポーネントごとに紹介がありました。以下の概念でまとめられています。

※画像はセッションのものを著者が撮影したものになります

Foundry Modelsでは、これまでのモデルに加えてGrok 3が追加されたこと強調されていました(イーロンマスクの動画も流れてました)。OpenAI, Grok, Mistral AI, Meta, Black Forest Labs, Deepseekが出揃っています。主要どころではクラウド陣営に寄っているClaudeやGemini以外はAzureで選択できると思います。ちなみに、各モデルのデリバリーは日本にまだ来ていないものも多いので、利用する時には注意が必要です。弊社のように東京リージョンでないと使いにくいケースもあると思うので、早く日本で揃ってもらえるとありがたいです。

少し内容は飛ばして、Foundry Observabilityが個人的にエンタープライズ向けで良いと思いました。本番環境の運用やモニタリング機能、安全性や品質やコストについてのアセスメント機能、開発に関しての信頼性などが提供されます。Foundry Observabilityに関してはアナウンスまでだったので、まだまだこれからというところですが期待できると思います。

また、良かったと思ったのは、Purview integration with Foundryと、Defender integration with Foundryです。両方ともセキュリティ系の機能になりますが、前者の方が情報漏洩を防止する機能で、後者の方がプロアクティブに脆弱性をチェックしてアラートや対応の推奨を提供してくれる機能です。AIを使えば使うほど、重要なデータにアクセスさせたくなりますし、エンタープライズ向けの機能とも言えます。セキュリティのいわゆる予防的統制と発見的統制の両方をサポートしています。是非とも利用したい機能です。

その他

キーノートでは他にもWindowsがMCPに対応したり、NLWeb(Natural Language Web)(※2)、データに関するソリューション、インフラに関する増強などの話がありました。この中で力を入れて説明されていたのが、NLWebでした。NLWebはユーザーが選択したモデルとデータを利用して、Webサイト向けに自然言語的なインターフェースを作成できることを狙っています。NLWebのインスタンスはMCPサーバーでもあり、RSSなどの配信を他の利用者がLLMベースと組み合わせることで使いやすくすることを目的としているようです。

※2:NLWeb
https://news.microsoft.com/source/features/company-news/introducing-nlweb-bringing-conversational-interfaces-directly-to-the-web/

Advanced Azure OpenAI Innovation In Azure AI Foundry

初日の個別セッションで面白かったのが「Advanced Azure OpenAI Innovation In Azure AI Foundry」でした。特にOpenAIの最新のモデル比較が紹介されていて良かったです。たとえば、o3と、o4-miniの使い分けで悩んだりするケースがありますが、o3の方はベストプランナーと言っていて、o4-miniの方が安価で速いと表現していました。また、GPT-4.1系のシリーズとの比較も紹介されていて、添付のグラフで表現されていたので参考になると思います。コストを加味するとo4-miniが一番いいように思いますが、ユースケースによって選択を変えられればと思いました。

※画像はセッションのものを著者が撮影したものになります

Keynote Day2

長くなってきたので二日目のキーノートで注目した内容まで記載して終わりたいと思います。我々の会社に古いシステムが多いのと、エンタープライズ向けなので、「Java migration」と、「Mainframe modernization」の紹介は特に気になりました。恐らく他の会社でも悩んでいることはあるのだと思いますが、例えば、Javaのバージョンアップや、フレームワークの変更は重い課題です。特に古くから使われているシステムはビジネスからの変更ニーズが多くないこともあります。こういうシステムに対して、多くの金額と体力を投資してフレームワークの変更をするのはメリットが無いので極力避けたいという思いもあります。

フレームワークの変更の話もありましたが、このような課題に対してAIが利用できると非常に効果的で期待値も高いです。キーノートではコンセプトの話だけだったので、実際にどこまで機能するかは確認していかないとわからないですね。メインフレームの方に関してはCOBOLが事例になっていましたが、弊社の場合もっと古い言語もメンテナンスしているので頭の痛い問題です。一般的にはメインフレームはCOBOLというケースが多いように思いますが、COBOLのソースコードはそれなりにあるので、AIも学習していることが多いです。ただ、それより古い言語になると、GitHubにも無いですしそもそも学習されていないか、学習が足りないことがあります。なので、古すぎる言語の対応はAIとて難しくなることが予想されているので、どこかで技術的負債は返済したいといつも思っています。

まとめ

去年のBuildにも参加しましたが、最近はMicrosoftのイベントというよりもAIのイベントになってしまった感じがします。IgniteもAIが多いですが、よりBuildの方がその傾向が強いと思います。恐らく、エンジニア向けのイベントで、今のエンジニアの多くがAIを意識している(自分の価値に繋がる)ことが一番の要因のように思います。それでは今回はここまでにして、残りのセッションに引き続き参加していきたいと思います。

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