開発生産性カンファレンス2025登壇レポート
はじめに
2025年7月3日、4日にJPタワーホール&カンファレンスに開発生産性カンファレンス2025が開催されました。
このカンファレンスは今年で3回目の開催となっており、私は前回2回目より参加し様々な情報を得たり良い刺激を受けましたので今回も参加させていただきました。
今回は、弊社へ登壇の依頼をいただきましたので、このカンファレンスの場で1セッションお話するというのが大きなトピックです。
また、今回はキーノートにKent Beck氏やGene Kim氏が来日されて対面でお話を聞くことが出来るという聴講者目線でもとても楽しみにしていました。
登壇したセッション内容
タイトル: MUITにおける開発プロセスモダナイズの取り組みと開発生産性可視化の取り組みについて
今回のセッションでは、開発生産性を向上させるための社内へ開発プロセスの刷新、最新ツール導入の道のりについてお話しました。具体的には以下の内容を取り上げました。
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弊社におけるシステム開発保守に対する課題と対応について: 金融という業務ドメインにおけるシステム開発の難しさや課題背景。
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開発プロセスモダナイズの取り組みについて: CI/CDやテスト自動化を中心としたプロセスやツールの導入、推進の取り組みの共有。
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メトリクスについての考え方: 世の中の生産性指標と弊社内でどのように考えて試行しているか、その際の利用ツールなどの実績共有。
これらのトピックについて、具体的な事例を交えながら説明しました。
発表資料については以下リンク先に掲載しています。
- 発表スライド
運営の方に後日聞いたところ、現地で聴講いただいた人数は97名とのことでした。聴講予約がいっぱいになって予約できない状況になっているとは聞いてましたが、実際にはどこまで人数が集まるか心配していました。結果的には部屋がほぼ埋まるぐらいの人数になったので安心しました。
壇上からは見る限り、社内のメンバーや、退社している元MUIT社員、過去の案件で関わっていた他社メンバーなどの顔が見えたので、緊張が解れ落ち着いてお話することができました。発表が終わった後も声をかけてくれてお話してくれたのも嬉しかったです。
発表後、参加者からは多くの共感の声や質問、フィードバックをいただき非常に有意義で嬉しく感じました。
同僚に撮ってもらった登壇時の様子です。
印象に残った聴講セッションの内容
2日間参加させていただき、多くのセッションを聴講しました。その中で印象に残った2つのセッションについて内容と感想を記載します。
タイトル: 開発生産性測定のトレードオフ 「グッドハートの法則」はもっと悲観的に捉えるべきだった
Kent Beck氏の1日目のキーノートセッションでは、アジャイル開発の進化と未来について語られました。特に、エクストリームプログラミング(XP)の原則がどのように現代の開発環境に適応しているかについての洞察が印象的でした。
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グットハートの法則について: グッドハートの法則の説明を通じて、物事を良くしようとした結果悪くなることがある。
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指標の使い方について: 各種指標を目標値としてあげるのは良いが、管理指標として圧力をかけて強制するものではない。気づきのために使うことが望ましい。
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生成AIとプログラミングについて: 世の中で言われている「若手プログラマーは不要になるのではないか」という議論にはNoと答え、AIは若手プログラマーの代替ではなくチューターとして使うのがよい。シニア技術者でも未経験のプログラミング言語、例えばRustやHaskellを学ぶといった使い方がよい。
このセッションは、開発生産性と生成AIに関心のある私にとっては非常に参考になりました。また、Kent Beck氏はTDD(テスト駆動開発)を広めた方なのですが、生成AIが出てきていろいろ潮流が変わる中で今が一番楽しい、面白いと嬉しそうに語っていたのが印象的でした。そういった新しい内容を楽しんで学ぶマインドは大切にしていきたいなと思いました。
タイトル: AI時代のソフトウェア開発を考える
和田 卓人氏の2日目最後のキーノートセッションでは今年の2月に世の中に出た「Vibe Coding」というキーワードや今年が「2025年の崖レポート」が出た年にこのような技術要素が出てきて解決手段になりうる可能性が見いだせている点は皮肉な状況だと語っていました。
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目指すべきはAI とソフトウェアエンジニアリングの融合: すべてAIにお任せするVibe Codingから、うまく方向づけをしたり自己再帰的に品質確認をするようなAgentic Codingになっていくのではないかと語っていた。
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システム開発におけるAI活用は、伴走と委託という2つのモードがある: システムの重要度や開発体制、スキルレベルなどを考慮し使い分けていくのが良いといったAIとソフトウェア開発者の関わりについて語っていた。
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生成AIとプログラミングについて:AIに賭けるべきかという論にはNoを唱え、「両にらみ」で進めるべき。決定を遅延し、選択肢を広げ、可能性を並べて評価したほうが良いと語った。
最終セッションということもあり参加者に疲れが見え始める時間帯でしたが、和田さんの熱のこもったプレゼンテーションに圧倒されつつ深い共感と新しい発見に驚きながら楽しく聞くことができました。やはり選択肢を広げながら実際に技術に触れてしっかり判断できるように知見を深めていくことが大事だなと感じました。
おわりに
今回の開発生産性カンファレンスは聴講するだけではなく登壇するという大きな目的があって参加させていただきましたが、話すことで多くの皆さんにやってきたことを共有するとともに、多くのフィードバックを得られました。セッションやブースでも様々な話を聞け、いろいろな議論もさせてもらう中で得た内容を今後の業務に活かしていきたいと思います。
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