IBM Think2024に参加してきました
5月に開催されたIBM Think 2024に参加してきましたのでレポートしたいと思います。
IBM Thinkについて
IBM ThinkはIBM社の年次イベントで世界中から4,000人以上の人が集まるイベントです。
今年はボストンで開催され、日本からは約200人が参加されていました。
同タイミングで開催されていたMicrosoft Build 2024も4000人以上の参加者だったようですので、同規模のIT関連イベントがアメリカ国内で同時に行われていたということになります。
来年以降も行く人がいればということで、レポート残しておきたいと思います。
- 場所
アメリカ マサチューセッツ州のボストンのBCEC(Boston Convention and Exhibition Center)で開催されました。
- 期間
2024年5月21日(火)-5月23日(木)の3日間での開催でした。 - ホテル
イベントページから提案されていた、提携ホテルであるOmni Boston Hotel at the Seaportに泊まりました。アクセスも良く、綺麗なホテルで快適でした。 - MUITからの参加者
私含めて7名での参加となりました。グループ内他社からも何名か参加されており現地でやりとりしました。 - 気候
ボストンは出張で行くのが2回目でした。前回行ったのは1月か2月かだったと思うのでひどく寒い時期でダウンを着込んでいった記憶があるのですが、今回は5月ということで比較的暖かかったです。同時期の日本より少し寒いぐらいの温度でした。一方カンファレンスあるあるですが、ホールやホテルのロビーはエアコンがかなり効いているので寒く、羽織るものは持って行った方がよいです。 - 治安
空港から川を一つ渡ったところのブロック内でほぼ過ごしていたこともあり、治安はかなり良かったです。近所のスーパーや食事の際に徒歩圏内は歩いていたのですが、危険を感じるエリア、人などは見かけませんでした。海も近かったこともあり、朝や夕方などは走っている人を何度か見かけました。
- 打ち上げ
イベントとしてはHarpoonという地元のビールを皆で楽しむ、音楽ライブもしながらという感じの会が催されました。また会期の途中ではJapan Receptionという日本から行っているメンバー向けの会も日本IBM主催でホテル内にて行われました。そこでも他社さん含めていろいろな人を紹介していただいたり、交流が出来て良かったです。
ビートルズの曲を生演奏するバンドの音楽に酔いしれました。
内容について
少し珍しいなと思ったのですが、IBM Thinkではメイン会場で行われるセッションはすべてキーノート扱いになっており、会期中に6回もありました。1時間半とか2時間とかだらだらやるよりは良いなと思いました。
Red Hatからのキーノート上での発表もありました。
今回のイベントのテーマですが、「AIをはじめとするテクノロジーを活用し、イノベーションを加速、新たな価値を創出する」というものでした。
AIが最初に来ています。IBM社のAIと言えば、IBM Watsonですが、昨年の本イベントで生成AIも組み込まれたIBM watsonxが発表されました。今年は昨年発表したwatsonxの利用実績の話は、周辺サービス、本丸となりそうな機能追加の話などが中心となっていました。
他社のAI関連サービスとの違いの部分については、ビジネスに役立つもの、IBM社としての信頼・サービスもセットで利用するものといった説明がされていました。
先ほど述べた6回あったキーノートのタイトルはそれぞれ以下の通りです。
- キーノート1. Scaling your business with AI and hybrid cloud
- キーノート2. The era of AI-powered automation
- キーノート3. Scale productivity with watsonx assistants
- キーノート4. watsonx: Scale the impact of generative AI
- キーノート5. Build the architecture your AI needs
- キーノート6. The future of AI is open
すべてAI関連ということでいかに注目しているかというのが分かるかと思います。
ここからはキーノートで紹介されたいくつかのサービスや事例を紹介していきます。
IBMの基盤モデルであるGraniteの言語モデルをオープンソース化、Instract LABでの拡張方法のオープン化
順を追って説明します。IBM watsonxで生成AIを活用する際は、基盤モデルを利用者にて選択することになります。その基盤モデルとして言語モデルの中でもっとも推奨されているのがGraniteとなってます。
なお、Graniteの他にはMeta社のLlamaや、Mistral AIのモデル等を選択することが出来ます。
watsonx.ai で使用可能なサポート対象の基盤モデル より引用
以下もwatsonx.aiの基盤モデル のページでご参考です。
さて、IBM社がGraniteを推奨する理由としては、厳格なデータガバナンスをもって作成されているため信頼できるものである、金融などのエンタープライズ分野で高精度であることが示されている、高い費用対効果を示しているといったことが言われていました。
またイベント内では、このGraniteの言語モデルをオープンソース化したということが示されてました。
日本語専用モデルである、Granite Japaneseも提供済み。アラビア語モデルも予定との発表もありました。
なお、Bring Your Own Model (BYOM) で独自モデルも持ち込み可能となっています。
さらに、誰でも言語生成モデルを成長させることができる、作成に貢献できるという仕組みとしてInstract LABとして紹介されています。
言語生成モデルの作成方法については、2段階の学習があると説明がありました。(RAGは除く)
その2段階の学習の後半部分はいわゆるファインチューニングを示し、この部分を楽にする仕組みとしてInstract LABが紹介されていました。
PRつまり、GitHubのPull Requestベースでモデル改善に貢献できるといったものとなっていました。AIの民主化という流れで言うとこういったことも必要になると思いますので、こういったものが広がっていくのかは継続ウォッチしていきたいと思います。
watsonx.governance
watsonx.governanceは昨年発表された機能で、組織内のAIに関するアクティビティーを管理、監視することで統制を図るもので、安心、安全にするためのガードレール機能を提供するものです。
watsonx.ai(詳細は後述)以外にも、Microsoft Azure、OpenAI、Amazon Bedrockとも統合し統制することが出来ます。今回の発表では、Amazon Sagemakerも管理対象に追加されたと説明がありました。
watson.ai、watson.data
watson.aiはStudio機能、モデル管理、ツールキット、プロンプトを試せるLabの4つの機能を大きくは持っています。
IBM社と一緒になったRed Hat社のRHEL AI、Red Hat OpenShift AI(RHOAI)と合わせて利用するものと説明されていました。
Red Hat OpenShift AI(RHOAI)は、先ほど説明したGranaiteやInstructLabの記載があります。それらをここで動かすということが出来るようです。
次にwatson.dataとはAI/データ活用促進のためのデータ・プラットフォームです。ソフトウェアおよびAWS/IBM Cloudのマネージド・サービスで提供されます。
データストアであり、AIのためのデータベースです。特徴として、C++ ベースのPrestoとIBM Storage Fusion HCIの活用により競合他社と比較してコストパフォーマンスの6割向上と発表されていました。
また、IBM Data Gateというコンポーネントも合わせて利用することで、Db2やIMSといったこれまでのデータストアにあった情報を作りこみなく、既存システムへの負荷低くデータの吸出しができるとも言われてました。
IBM Concert
IBM Concertはなかなか掴みどころが難しい製品と感じました。まずは公式サイトに記載されている説明を転記します。
IBM Concertは、管理機能を備えているため、業務を簡素化および最適化し、充実した顧客体験と、開発者およびサイト信頼性エンジニアリング(SRE)の生産性向上を継続的に提供することに集中できます。
IBM Concertは、アプリケーション・ランドスケープを理解して、アプリケーション・アーキテクチャーの接続、依存関係、ギャップ、機会を発見するのに役立つ、次世代の生成AIを活用したインサイトを提供します。Concertはwatsonxを搭載しており、お客様の既存の環境やツールセットとシームレスに接続し、リアルタイムのデータと依存関係のマッピングを可能にし、運用上の課題の確認や根本原因の理解、問題が発生する前の予測、推奨されるアクションと自動化によってプロアクティブに対処します。
引用元
watosonxの生成AIを使いながら既存の環境とつないで運用上の課題対応、問題予兆検知、推奨されるアクションを自動的にプロアクティブに行うとのことです。
既存環境としてさまざまなところとつないでデータを引き抜き、分析、推奨してくれるようです。下の方にはwatson.dataもありますので先ほど説明したとおり既存システムのDBとかとも連携できるということかと思います。
デモがあったユースケースとしては、脆弱性が確認された際の対応がされていました。
watsonx Assistant, Assistant for Z, Code Assistant, BI Assistantで生成AI活用
watsonx Assistantはチャット形式のAIです。中身として、watosonxのモデルを使えるものです。
今回の発表ではそのfor Zバージョンが紹介されていました。
Zのシステムのプロとして、チャットで答えてくれたり、その中で用意されたスクリプトを流してくれたりするようです。
Code Assistantはシステム開発する自分としてはもっとも身近なものとして注目してみてました。
引用元
上記はfor Enterprise Java ApplicationsとあるようにJavaのアップグレードの支援をするようです。こちらは10月GA予定のようです。なお残念なことにチャットで指示したりプロンプトを入力して調整する機能は現状無いとのことでした。
また、別の似た製品では、COBOL to Javaの例もありました。PL/Ⅰ to Javaも実現できるとのことです。
IBM watosonx BI Assistantは、これまでのBIはダッシュボードを作る、見ることに特化してました。今回そこに生成AI技術を組み合わせてチャットでやりたいことを入力しつつ、スムーズにやりたいことにフォーカスできるようにするものとのことです。
図は以下サイトより引用しています。
各社のBI製品は、こういったものがどんどん追従していく状況にあるかと思います。
その他
事例についても様々聞くことができましたが、記事が長くなってきてしまいましたので一部概要の紹介と外部記事へのリンクに留めたいと思います。
- 本田技研工業株式会社
知識のモデル化の効率化を図るため、社内に分散しているノウハウが記載されたPowerPoint資料から、生成AIを用いて知識を抽出し、データベース化するためにIBM watsonx.aiを用いて試験運用した
- 株式会社NTTデータ
2030年の保険オペレーションモデルの実現に向けIBM watsonx Orchestrateを活用
- みずほフィナンシャルグループ
システムエラー監視およびリカバリ対応時間削減のためにwatosonxを用いて3か月間のPoCを実施、98%の精度を確認
最後に
今回は7名という大所帯での参加となりました。複数のトラックに分かれてみたり、同じキーノートに参加しても各自着目しているところが異なったりして深く洞察することもでき、良い経験を得られたと思います。
IBM Thinkは毎年場所が異なるようなので地域、会場の話は参考にならないかもしれませんが、誰かの役に立てば幸いです。
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