30代のうちに身につけておくこと
20代のうちに身につけておくことという記事の評判が良かったので、その次の30代バージョンも書いてみようと思いました。ニーズがありそうであれば参考にしてもらえればと思います。
想定読者のパターン
この記事を目にされた方はおよそ以下のパターンに分かれるのではないかと思います。
①まだ20代だが30代がどうなるのか気になっているパターン
②30代になっていて、ある程度自信もあるので次の成長を考えているパターン
③30代になっているが実力に自信がなく、今後どうすればいいか悩んでいるパターン
①のパターンは、基本的に以前書いた記事を読んで頂いて考えてみて欲しいです。
ITエンジニアに限った話ではないですが、社会人における20代は修行期間です。10年その仕事をしていると一人前になることが多いと思いますが、その10年間の中身が重要なので、そこを掘り下げていきます。ちなみに、20代のうちで差がつくポイントを2点記載しておきます。
・仕事以外の時間(朝か夜や休日)で勉強したり自分の成長に繋げられる活動をしているかどうか
・仕事の中で、その仕事の意味や目的を考えながらしているかどうか
これらは本当に重要です。1つ目についてですが、時間だけでなくお金も使ったほうがいいと思います。私は20代の頃に毎月1万円分は技術書などを買うことにしていました。新人の当時は中目黒で仕事をしていましたが、昼休みの30分くらいは本屋に行っていて、立ち読みしながら気になった本を買っていました。ほぼ毎日行っていたので、新しい本が出ると気づくことができました。今みたいにZennもQiitaもない時代だったので、情報源がそこしかなかったというのもあります。
2つ目の仕事中の方に関しては、意味と目的を考えるかで差が出ます。先輩が言っていたからやってますという人と、なぜその作業がそのタイミングで必要になるのかを考える人では全然違ってきます。考えるということはその背景も知りたくなりますし、同じことをしていても積み上げの量が違ってきますよね。
あと、20代のうちに私がやっていたことは外部セミナーによく行っていたことです。平均して月に1回くらい行っていたんじゃないかと思います。業務時間中であっても、月に1回、半日くらい時間を使っても問題はないでしょう。職場によっては先輩に小言を言われるかもしれませんが、1ヶ月20営業日あるとして、その半日を使った場合、その割合はたった2.5%です。1ヶ月のうち2.5%を新しい学びに充てることに問題があるでしょうか?最近だとタバコを吸う人が減ってきましたが、私が若かった当時はそれ以上の時間を休憩に使っていた人は沢山いました。なので、何か言われても時間換算してそのくらいいいでしょと言っていました。まぁ相当生意気な若手だったとは思いますが(笑)
②、③のパターンについては以下で解説していきますね。
しっかり積み上げができている場合
人の成長は千差万別です。「しっかり積み上げができている」の定義は相当難しいと思いますが、できるだけ抽象化して説明してみます。
・業界で上位とされる資格を1つ以上持っている
・自分の開発現場で自分でやり切れて、後輩も指導しながら進められる
この2つがあればある程度積み上げできていると思います。
私は後輩に必ず資格の大切さを説明しています。よく、「資格はとっても実務に役立たない」と言って、全く取得しない人がいます。私の経験上、資格がなくても一流でやっている人はこれまで二人しか会ったことがありません。20年以上エンジニアをやって二人だけです。逆にいうと、これまで会った一流の人はみんな何かの資格を受験して勉強してきた過去があります。資格は、それ単体では仕事に繋がらないかもしれませんが、知識を網羅的に整理できるのが最大のメリットです。実務上切り捨てられてしまう周辺知識を学ぶ機会を得るのは難しいと思います。先ほど書いた二人はそういう周辺知識を普通の人よりも高いレベルで取得していて、もはや仕事=趣味なんじゃないかと思うレベルです。あと、資格は努力できることの証でもあります。仮に仕事の能力が同じ人がいて、一人は資格取得している人、もう一人は取得していない人であれば、私は資格取得している人の方をチームメンバーに選びます。どんな資格取得でも相応の時間とお金をかける必要がありますし、そういう投資をして結果を出せているというのはとても大事です。
二つ目の、自分でやり切れて指導しながら進められる、というのは難しい説明ですが、仮に不測の事態が発生してもやり切れる実力があるということです。技術的な問題であったり、スケジュールの問題だったり、チーム運営の問題だったり、色々な課題が出てきます。ただ、それらには必ず原因があるので、それを特定して解決することができるか、ということです。特に技術的な問題に関しては、他のスキルよりも課題解決が難しいことが多いと思います。日々の仕事を丸投げせずにしっかり向き合っていないとそういうスキルは身につけられません。
30代以降の成長に向けて
仮にこれらの条件に当てはまって積み上げができている、と仮定した場合、30代で意識したほうがいいと思うことをまとめます。
・自分の2つ目の得意分野を探す
・時流を読む
・結果を出す
20代のうちに積み上げられていたとした場合、必ず得意分野があるはずです。私の場合はデータベースでした。たとえ未知のトラブルがあっても対処できるようになっていました。それを軸にして他に広げる必要があります。私が進んだ道は、
データベース→ストレージ→仮想化→クラウド
という感じです。ストレージはデータベースの応用で習得できますし、仮想化も今までの知識を発展させれば対応できます。そうやって自分にとっての技術の軸を増やしていきます。
次の「時流を読む」ですが、これはエンジニアとしてのスキルがあれば可能なことです。長年エンジニアをしているとその時に応じて2パターンの技術進化があります。1つは正常進化している時で、もう1つはブレイクスルーが起きる時です。
正常進化の方は優れたアーキテクチャが生まれてそれがデファクトスタンダードになっていく時です。この過程においてその流れに乗るのはとても有効です。身につけた技術のほうが時代の少し先を行くことができれば、少し後からついてくる時代とともに仕事も継続できるからです。そうすることで経験も積めるのでプロフェッショナルへの道が開けます。
そしてもう1つの方のブレイクスルーの方ですが、こちらは把握するのが難しいと思います。長年エンジニアとして働いていると時々あるのですが、時代の先端の技術が進化の踊り場みたいな状況に差し掛かることがあります。進化は続けているのですが、「なんかドキドキとかワクワクがないなぁ」と感じることがあるんです。そういう時はある種の進化の限界に達していて、次の何かが生まれることがあります。ちなみに、ブレイクスルーの多くは、これまでのアーキテクチャ上の弱点というか、一番不足している部分で起きることが多いと思います。システム全体や開発プロセス全体を見渡した時に、ここがボトルネックになることが多いよなと思っていて、そういう部分に新しい技術が登場するとそれはヒットすることが多いです。課題を解決できるのだから当たり前なんですよね。
さて、最後の「結果を出す」の部分ですが、これが30代で一番やるべきことでしょうし、醍醐味かもしれません。どんなにいいアイディアや先を読む力があったとしても、それを実現できない限りは妄想でしかありません。エバンジェリストやコンサルタントならそれでもいいかもしれませんが、エンジニアである以上はアイティアを形にしなければなりません。形にするにはお金と人が必要です。自分のアイディアを整理して経営者が投資判断できるストーリーを作成し、さらに一緒に実現する仲間を集める必要があります。アイディアとお金と人が揃った時に結果が残せますし、完遂した時の満足度は高いと思います。
20代の努力が足りなかった場合
次のパターンは、20代の時にサボってしまって30代になって伸び悩んでいるケースです。このケースについては辛口な内容になってしまいますが、悩んでいるのであれば読んでみて欲しいと思います。まず、10年近く努力し続けた人と、できなかった人は相当の差があります。追いつくためにはそれ以上の努力をしなければならないので、かなり大変だと思います。人それぞれで課題は違うと思うので、明確なアドバイスは難しいのですが、少なくともクリアしたほうが良いかなと思う部分を記載していきます。逆に、これだけの努力ができると、40代以降が変わってくると思います。
・情報処理技術者試験の高度資格を2つ以上合格する
・今触れているシステムで技術的に説明できるようにする
20代の時に努力が足らなかった人の一番の原因はインプットの不足です。仕事に関することは仕事で覚えればいい、プライベートは別のことをしていればいいと思っていたのであれば、そこから改める必要があります。遅れを取り戻すためには、ある程度プライベートを犠牲にしてでも頑張るという覚悟が必要だと思います。
その上で一番有効だと思うのが、情報処理の試験を受けていくことです。高度資格を2つ合格するのが1つの目安になると思います。2つと言っているのにも理由があって、ITに関する知識をリンクさせる必要があるからです。20代に積み上げができた人のところでも記載しましたが、2つ目の得意分野を探す疑似体験ができるということです。
ちなみに、2つ合格するには連続で受かったとしても1年間はかなり勉強する必要があります。まずは1年間しっかり勉強して連続で合格し、”勉強量を落とさずに”他の知識を吸収することに時間を充てていけば、必ず道は開けると思います。
2つ目の方は今携わっているシステムにしっかりと向き合うことです。よく聞く話なのですが、保守や運用しかやってないのでスキルが身につかないということがあります。開発のほうが有利な場合もありますが、結局大事なのは向き合い方です。友人で運用中心だったが、1つ1つの理解を積み上げて30代には優秀なエンジニアになった人もいます。特に大事なのは、これまでの話題には何度か出てきていますが、とにかくブラックボックスを無くすことです。ベンダーに丸投げするなど論外です。自分の成長機会を投げ捨てていると思ってください。そういう理解から逃げ続けているとキャッチアップできませんし、逆に30代のうちにキャッチアップしておかないと、恥ずかしくて40代になって聞くこともできなくなってしまいます。最近は70歳まで働くことも多くなってきてますし、私の師匠は60代でもバリバリなエンジニアで健在です。そう考えるとキャッチアップが遅いということはなく、今からやる、ということが大事です。
まとめ
今回は30代のうちに身につけておくことを書いてみました。20代のうちに積み上げができているパターンと、できなかったパターンで分けて書きました。前者の方は継続して努力していけば面白い仕事がどんどんできるでしょう。後者の方に関しては、辛口な記載にはなっていますが、努力した人と差ができているので、頑張って取り戻す必要があります。ちなみに、一番重要なのは、あの名言でもある「諦めたらそこで試合終了ですよ」だと思います。諦めたらそこで成長は止まるだけでなく、いろいろと失っていくでしょう。
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