Agile Japan 2024参加レポート
はじめに
今年もAgile Japanに現地参加させていただきました。ここ数年毎年参加させていただいていますが、今年は社内から多くの人数が参加していましたので、社内メンバーで関係薄かった人と繋がることができました。また他社のメンバーと会話する中で輪が広がっていく感じがとても充実感を得られました。
Agile Japanとのこれまでの関わり
2018年にアジャイルについて多くを学ばせていただいた三菱UFJ銀行システム企画部の方のセッションを現地で聞いたのが深く関わり始めたスタートでした。
- Agile Japan2018セッション一覧
それ以前は参加していたものの、まだまだ何か情報をもらいに行く場所、というイメージでした。
そこからは身近な取り組みでも、業界への貢献につながるかもとも思い始め、外部発信や登壇するチャンスがあれば積極的にチャレンジするようになりました。そんな中、機会をいただけたのはAgile Japan2021です。
- Agile Japan2021セッション一覧
※当時の所属名称となっています
この場でお話させていただいたことをきっかけに、金融系でアジャイル開発をやっている横のつながりを作ることができ、いまだに数か月に一度の共同アジャイル勉強会をする仲になっています。このメンバーとは今回のAgile Japanでも会話や、次につながる対話をさせていただきました。
今回について
社内から40名以上が参加しました。社内のITアカデミーという教育研修関連部署とも連携し、イベントに参加するなら現地の熱量を感じつつスポンサーブースなどで直接お話を聞くことができる、現地参加推奨と宣伝してもらいました。その結果、現地にも多くのメンバーが足を運んで参加してもらっていたかと思います。
また、今回のテーマはPeople Centric Agileでした。人間中心のアジャイルを示します。ちなみに昨年のテーマはRebuild our Agileを掲げており、コロナ禍がひと段落してリモートワーク中心でアジャイルな活動をしにくかったところから脱却し、どう再立ち上げしていくか、といったことを語られていました。
今回のセッションを概況で見ていくと、AI関連、特に生成AIとどのように付き合っていくか、その中でアジャイル開発はどうするか?ということを語っているものや、人間同士のコミュニケーションやリーダーシップのあり方といったまさに今回のテーマにのっとった発表も複数ありました。ファシリテーションや場づくりといったものもあり、そこもテーマには関わってきていたかなと思います。また、スポンサーセッションではアジャイル関連教育やツール、アジャイル開発実績を語るものも複数ありました。
一つひとつのセッションというよりはそういったカテゴリごとの観点で得た情報とどう感じたかを記載していきます。
生成AIとアジャイル
キーノートで登壇された及川 卓也 さんや和智 右桂さんを始めとして、複数のセッションでAI関連は触れられていました。自身の理解も含めてまとめると次のような内容です。
-
OpenAIによる2023年公開の論文では、賃金の高い仕事はインパクトを受け、プログラミング・ライティング・職業的に参入障壁の高いものはリスクが高く、科学やクリティカルシンキングを用いる役割はリスクが低いと書かれている
-
及川さんは曰く、ソフトウェア開発においては、生成AIの活用も含めてソフトウェア開発手法・能力となってきている
-
ただし、計算機があるので暗算ができなくてよいかという例にも近しく、中身を抑えて活用することが重要
-
AIが支援してくれるような使い方と、AIに指示して代わりにやってくれるという使い方があり、前者はシニアエンジニアが手数を減らす・スケールするような形であり、後者は新卒エンジニアが壁打ちしながら依存する形で進める活用法
-
ただし、新卒エンジニアがいきなりシニアエンジニアになれるわけではないので、そこのスキルのつけ方はAI活用とは別に考える必要がある
-
プロダクト戦略については先ほどの前者のような形となり、人が意思決定する必要がある
-
そこに必要なのがプロダクトを愛する情熱であり、リーダーシップ
-
和智さんはアジャイルとはイテレーティブでありインクリメンタルなものと捉えており、正解のない複雑な問題に対処する技術と捉えている
-
そこには正解がないので、最適解を探すしかないのでイテレーティブかつインクリメンタルに進める必要があるというもの
-
現状のAIには与えた情報から結果を出力するという形になっているため、どういう情報をAIに渡すかという人間の前処理が大事であり、その結果を受け取ってどう活用するか判断するのも人間である
和智さんは上記の前段を置きつつ、人間の言語化が大事であり、その力を鍛えるのは単に語彙力を増やせばよいというものではなく、メンタルモデルを鍛える必要があると語っておりました。具体的には好きなものを自分の言葉で語る、といったものです。そのためにはアウトプットを習慣的に行うこと、その中には事実だけではなく自分の付加価値も含めて発信するということが大事だと言っていました。まさに今このような形で参加レポートとしてまとめているのも、一つのアウトプットだなぁと感じています。
話は戻り、及川さんは著書として「ソフトウェアファースト」やプロダクトマネジメント関連の複数書籍を出版されていることもあり、ソフトウェアエンジニアに響く形や、そこだけではなくプロダクトマネジメントとしてサービス、システムをどのように大事に伸ばしていくか、プロダクト思考とは何かを含めて語っていただけたように感じました。内製開発ではなく、手の内化と呼んで中身を抑えてプロダクト開発のハンドルを握ってリードしていく必要があるということをご自身の体験も含めて語っていただけたことは、非常に良い示唆としていただいたなと改めて感じました。自身も書籍を拝読させていただいていましたが、ソフトウェアファーストの第二版ではAIに関する活用の話も多く盛り込まれているということで、第二版を改めて読もうと思いました。
また、ScrumIncの山本さんの講演の中でも、アジリティとAIの共進化ということで相互作用してくるといった説明がされており、興味深いものでした。
さらに、サーベイ結果を基にしたアジャイル関連の相談Botのような話もあり、これは社内で身近にあるとありがたいのかもしれないなと気づきを得ました。
全般として、AIは専門家が知っていればよいというものではなく、当たり前の知識やリテラシーとしてどう活用していき、使いこなしていくかを考え行動に落としていかないと、ついていけなくなる世界がエンジニアとしても来ているなと改めて実感する場となりました。
-
講演資料引用元
人間同士のコミュニケーションやリーダーシップのあり方
三菱総合研究所の武田さんのセッションでは、アジャイルは楽しさもあるが苦しさもあり、楽しいだけでは実験に終わってしまい成功にはつながらないといった話がありました。また、「アジャイルなので計画が無い」とか、「アジャイルなのでドキュメントが無い」といった「アジャイルなので」という言葉が出始めると、チームとして黄色信号ということをおっしゃってました。確かに身近でもそのような声を聞いたことがあります。理由を自分で腹落ちできていなく、前例踏襲・思考停止のような感じが生まれてしまっているとうまくいかないという例なのかなと思いました。
北國銀行の奥村さんのセッションでは、システム開発したメンバーが奥村さん含めてお客様向けのコールセンターの受電対応をしたという話が印象的でした。厳しい声もいただくこともあるが、電話の向こうから漏れた「あ、見やすい」といった嬉しい声が得られると、かなりモチベーションが高まったとのこと。現場体験ではないですが、実際の利用者の声をダイレクトに聞けるというのはとても良い機会だなと感じました。また、アジャイルで進めたからリリーススピードが上がったのではなく、自分自身で作れるようになったことのほうが価値であると言っていたことも印象的でした。社外取締役の方がリリースまでの進捗を心配されていたので、直接開発現場に来てもらって、リリースバーンダウンチャートやスクラムの活動の取り組みの実態を見てもらったこともあったとおっしゃってました。スクラムの価値の一つである透明性を地でいっていて素晴らしいですね。
西日本電信電話の前田さんとSHIFTの石井さんのセッションでは、DevとOpsの一体感欠如が問題となっていて非効率になっていたので、より小さく、素早いリリースと迅速なフィードバックを目標として改善活動を進められていました。また何度も「無理なく進める」ということも強調されていましたので、開発者にとって過度なプレッシャーがかからないように配慮して進められていたのだと思います。具体的な進め方としては、リリース日を定期的に行うよう決めてしまい、そこに開発する対象が収まるようにはめ込んでいくという方法をとられているそうです。PO側も開発のサイズを考慮しながらワンチームで進められているのだろうという良いイメージを持てました。
他にもたくさんのいい話と活用できそうなヒントはいただけましたが、抜粋として上記とさせていただきます。
-
講演資料引用元
まとめ
継続的にAgile Japanに参加させていただいていますが、今年はコロナ禍前の取り組みと熱量に戻ってきた感触がありました。社内でもアジャイル熱が高まっていますので、うまく伝えていきながら、来年は社内の取りくみを発表できるぐらいまでに実績積んでいきたいと思います。また、その時々の注目テーマ(今回でいうとAI)とアジャイルの関連、活用ということも触れられると思いますし、少しトピックとしても触れられていた組織的な、会社全体としてアジャイルに取り組んでいくDXの実例が出てきそうな状況になっていますので、そのあたりは継続ウォッチしていきたいと思います。
アジャイル開発や、組織的なアジャイルの取り組みの推進を一緒に行える仲間を募集しています。気になった方はカジュアル面談も可能ですので、お声掛けいただければと思います。
Discussion