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エンジニアが文章力・説明力を向上させる方法

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先日、若手に「説明力に自信が無い」と相談をされた時に、文章力の話をしました。今回は、エンジニアにとって必要な文章力について解説しようと思います。ちなみに、私は本を出版させて頂いていますし、一定のトレーニングは積んだつもりですが、世の中にはもっともっと上手い人は沢山います。なので、「そこそこのレベルになる」くらいのノウハウとして読んで頂ければと思います。

さて、若手には残酷なことかもしれませんが、新卒で会社に入って数年以内の若手で文章が上手かった人に会ったことはありません。大学で論文をどれだけ書いていようと、そもそも日本人で日本語を長く使ってきたとしても、大半の若手の文章はかなり微妙です。なので、特に20代の方は、日本語に不自由を感じていなかったとしても、文章を書くのが下手だと思ったほうがいいと思います。

では、どうすれば文章がうまくなるのでしょうか。一番の近道は「沢山添削を受ける」ことです。小説のような表現力とは無縁のビジネス文章は、実はロジカルに組み上げることができればそこそこのレベルに持っていけるので、しかるべき人に見てもらって添削を受けるのが近道です。知らず知らずのうちに変な癖だったり、わかりにくい書き方をしてしまっているものです。

オススメトレーニング法 その1

私が一番オススメしているのは、情報処理試験の高度試験の論文模試です。なぜこれが最適かというと、限られた時間でそこそこの文字数でまとめ上げる必要があるからです。まず書く前に文章の骨格を考える必要がありますが、それは目次といってもいいと思います。そのストーリーを自分の中で決めたら、目次ごとに書く文字数を決めていきます。あとは、自分が描いたストーリーを制限時間以内に文字にするという作業を行います。こうやって説明すると簡単なことなのですが、実践するのは難しいです。

ただ、情報処理試験の場合、その骨格のテンプレが存在します。なので、ストーリーをテンプレに落とすトレーニングをすることで合格に近づけます。重要なのはそのテンプレをしっかり自分のものにするということです。テンプレになっているくらいなので、それこそ人に伝わりやすい構成になっていますし、冒頭の課題であった「説明力」に直結する内容です。それは、今後ビジネスマン(もちろんエンジニアも含みます)にとって強力な武器になることは間違いありません。

ちなみに、情報処理試験の場合、論文模試講座のようなものがあります。このような講座ではテンプレを教えてくれますし、添削サービスがあったりします。添削を受けるのが一番の近道と述べましたが、良質な内容をお金で買えるなかなか無いサービスなのでとてもオススメです。また、2回添削してもらえるサービスがあるとなお良いでしょう。2回というのがポイントで、1回目に添削された内容をよく考えて、もう一度同じ問題を書いて二度目の添削をしてもらいます。この反復がとても大事です。おそらく1回目の文章はダメダメなので、添削されるレベルがかなり低くなってしまいます。そのため、2回目で文章を洗練させて一段上のレベルで添削を受けるのがポイントです。

オススメトレーニング法 その2

長い社会人人生ですが、私が心から師匠と呼べる人は一人しかいません。その方に教えてもらった方法です。「メールの書き方」なのですが、明日からでも実践できる内容です。ただ、やってみると結構難しいはずです。

いくつか縛りがあり、それ通りに書くだけでOKです。
1)1つの段落を300字で書く
2)1つの段落の文章は2〜3つにする
3)1つの段落で言いたいことは1つだけ
4)段落はできれば2つ、多くても3つまで

理由を説明していきます。まず1つ目の300文字についてですが、これは多くの人の脳内バッファに一気に入れられるちょうどいい文章量ということです。これ以上長くなってしまうとバッファオーバーフローを起こしてしまい、読み返す必要が出てきます。読み返すということは読み手にとってストレス以外の何ものでもありません。なので、わかりやすく書くには実は文字数が結構重要です。

2つ目ですが、1つの段落が300文字で、文章が2〜3つとなると、1つの文章は100〜150文字になります。この文字数もポイントで、1つの文章が長くなりすぎると修飾が複雑になりますし、場合によっては日本語としての文法がおかしくなるリスクが出てきます。もちろん多少文法が間違っていても意味はわかってしまうのですが、間違った文法は読み手にストレスを与えます。逆に文字数が少なすぎても十分に説明することが難しくなりますし、短い文章が沢山並んでいても読みにくいだけなので、ある程度まとまった量が必要です。

3つ目は若手の文章でよく見かけるのですが、伝えたいことをいくつも混ぜ込んでいるパターンです。複数入れてしまうと主語を間違うリスクにもなります。文章の途中で主語が変わってしまっている人もよく見かけます。そもそも、段落で区切っているのですから、その段落で伝えたいことがあるはずです。なので、欲張らずにその段落では伝えたいことだけを伝えましょう。

4つ目も結構重要です。メールは長々と書けば良いわけではありませんし、長文は読む気を失わせます。書き手からすると、文章が長くなればなるほど、内容がブレるリスクがあり、結果的に何を言っているのかがわからなくなります。なので、メールの件名に合わせた内容を2段落程度でまとめましょう。ちなみに、3段落書くとなると、1000文字近くいってしまうので、書くのにも時間がかかり、自分の時間も使ってしまうことになります。

番外編トレーニング

これは私オリジナルのトレーニングで、20代の頃にやっていました。すごく単純で、毎日500文字のブログを15分で書くというルールです。15分で書くと言ってもポストするまでが15分なので、校正の時間も入れると純粋に書いている時間はもっと短くなります。ちなみに、テーマは基本的に自分が調べたテックネタにしていましたが、流石に毎日書くネタが無いこともあるので、趣味の内容も書いたり、場合によってはランチのオススメなど、なんでもいいので書くことにしていました。

このトレーニングのポイントは、時間を意識して書くということです。先程のメールの例では2段落であれば、大体600字になります。つまり500文字書くということは、メール1本に15分かけているようなものなので、ビジネスの処理速度的には決して早くはありません。ただ、やってみると結構難しいはずです。ちなみに、15分で納得行く文章になっていなくても自分への戒めとしてそのままポストしてました。デジタルタトゥーになってしまいますが(笑)、それはそれで結構面白いものです。

ちなみに、このトレーニングのお陰で本を書けたとも思っています。たまに「いつ本を書いていたの?」と聞かれるのですが、私は通勤電車の中でスマホに打ち込んで書いてました。大体1冊の本を2ヶ月で書ききってました。実際にはその後に編集者に校正してもらったり、図を追加したりするので、完成まではもっと時間がかかっています。

あと、実際に本を書いてみて思ったのですが、編集者の文章力は化け物並みに上手いです。プロ相手に失礼な話ですが、到底私が追いつけるレベルではないと思いました。そもそもそんな変な文章を書いたつもりはなかったのですが、魔法がかかったかのようにわかりやすい文章になっていることがありました。基本的にPDFで送って、PDFに添削されて返ってくるのですが、変更前後を見比べて、勉強になるなぁと思ったりしてました。

ちなみに、私はブログを書くときにはあえて砕けた表現にもしています。このブログもそうですが、実際に話している感じに近づけるために、わざとそうしています。個人的にそのほうが読みやすいかなぁと思っているのと、多少精度が悪くても言い訳できるように、自分への逃げでもあります(苦笑)

お願い

私もオジサンになったものだと思いますが、若手にお願いがあるとすれば、日本語を大事にして欲しいと思います。小説家ではないので、美しい表現は不要です。ただ、正しく主語、述語と助詞を使うようにしてください。それができたうえで、記載したようなトレーニングをしてみると、きっとビジネスマンとしての文章を書けるようになると思いますし、自由に文章を書けるようになった時には、話すのもうまくなっていると思います。

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