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ザビエルに学ぶクラウドの布教活動

2023/12/25に公開2

こんにちは mrkn11 です。
とある組織でCCoEをやっています。
推しクラはGoogle Cloudです!

今日はクリスマスにちなんで、フランシスコ・ザビエルに学ぶCCoEのクラウド推進活動について書きます。

背景

ありがちと言えばありがちかもしれませんが、CCoEのことを歴史上の人物から学ぶというのは、Google Cloudのクラウド二刀流イベントの中で紹介された 「あらゆる良書を読むことは、過去の最良の人物たちと会話することだ。」 という名言がきっかけになっています。
この名言は「我思うゆえに我あり」という言葉で有名なフランスの哲学者ルネ・デカルトの名言で、「本は偉人とのコミュニケーションツールであり、本を介して過去の偉人たちの考えや経験に触れることで、自分の知識や考えを深めることができる」という意味だそうです。
言葉の主旨と少しずれますが、過去の偉人の知見を現代の組織のカイゼンに応用してみました。
二宮金次郎三国志に学んだ話も面白かったです。

さて、本題に入る前にいくつか事前知識として補足しておきます。

  • CCoEとは
  • クラウドの布教活動とは
  • ザビエルとは

CCoEとは

CCoEとはCloud Center of Excellenceの略称で、組織としてクラウドを正しく活用できるようにするために、クラウドのベストプラクティスを熟知した専門家が集まるクラウド推進チームのことです。
主に以下のような活動を行います。

  • クラウド利用のガイドラインやルールの策定
  • クラウドを利用するプロジェクトの技術支援
  • クラウドに関する教育プログラムの実施 など

クラウドの布教活動とは

「布教活動」というとやや距離を置きたくなる表現かもしれませんが、要はクラウドという技術を伝え広める活動のことで、CCoEの役割の一つでもあります。特にこのような活動をする人のことを「エバンジェリスト」と言ったりします。
CCoE Summit '23のパネルセッションでも同様の表現で、Googe Cloudの普及について議論されていました。

ザビエルとは

フランシスコ・ザビエルは、スペイン出身のカトリック教会の司祭・宣教師でイエズス会の創設メンバーの1人です。
日本に初めてキリスト教を伝えた宣教師として知られています。
ザビエルが日本を訪れるきっかけとなったのは一人の薩摩(鹿児島県)出身の武士との出会いだそうです。
ザビエルが所属するイエズス会は、宗教改革を行うプロテスタントに対抗して、カトリックの世界展開を実行します。ザビエルは最初のターゲットであるアジアでの布教を任され、インドを経てマラッカ(東南アジア)で布教活動をしてる時に、アンジロウと出会いました。アンジロウは過去に犯した殺人の罪を反省し、救いを求めてキリスト教徒となりました。ザビエルはアンジロウから得た日本の文化や仏教などの情報をもとに、日本での布教活動の成功の可能性を見出し、日本行きを決めました。

ザビエルの布教活動

さて、本題のザビエルのキリスト教布教活動について、重要な3つのポイントを紹介します。

  • 大名を味方につける
  • 日本の文化に寄り添う
  • 教会を建てる

大名を味方につける

ザビエルはアンジロウのコネを利用して島津の大名である島津貴久と会い、領内での布教活動の許可を得ました。この時、貴久が得体の知れない宗教の布教活動をすんなりと許可したのは、スペインやポルトガルとの貿易(南蛮貿易)によって西洋の最先端の技術を得るためで、キリスト教を快く受け入れたことをアピールの材料にしたかったからなのでは?と言われています。
大名という最強の後ろ盾を得たザビエルは順調に薩摩での布教活動を始めました。
この時アンジロウはキリストの教えを"大日"や"観音"など仏教用語に翻訳して伝えたため、薩摩の僧侶はザビエルのことを仏教発祥の地であるインドから来た偉い人だと勘違いし、抵抗なくキリスト教を受け入れたそうです。後に勘違いの発覚など色々トラブってザビエルは薩摩を追い出されますが、その後訪れた長崎や山口でもその土地の領主から布教の許可を得ました。

有力者を味方につけた上で布教活動を行うこと、さらに有力者にとっての利益が何かを心得て交渉することが一つ目のポイントです。
有力者の許可を得ることで堂々とオフィシャルに、かつトップダウンの強力な支援を受けながら活動を展開できます。

日本の文化に寄り添う

ザビエルは日本での布教活動の際、アンジロウの雑な翻訳による勘違いでトントン拍子にキリストの教えを伝えられたのとは別に、「適応主義」という政策を戦略的に実践していました。
適応主義とは、「その土地の文化や価値観に合わせること=社会に順応すべし」という考え方で、イエズス会として遵守すべきことは守り、日本文化や仏教をなるべく尊重し柔軟に受け入れることを方針としました。
日本の文化を理解するための手段として、僧侶と宗教論争(今だとディベート)をして仏教の知識を獲得したり、宣教師に日本語学習を義務付けて日常的に日本人とコミュニケーションが取れるようにしたりしました。
その他にも禅宗の階級の概念をモデルとしてイエズス会の規範に取り入れたり、日本人が好む形式美を教会や施設に反映したりしたそうです。

その土地の文化を十分に理解した上で、その文化に寄り添った柔軟な考え方でルールや表現をテーラリングすることが二つ目のポイントです。
その土地の文化に寄り添うことで、人々がより実践しやすく受け入れやすい形で物事を伝えることができます。

教会を作る

ザビエルはキリスト教の信仰の拠点として教会を設立しました。教会は、単に信徒が集まって礼拝や祈りを行う信仰の拠点としてだけではなく、信徒同士の交流や親睦を深めるためのコミュニティの拠点としても機能しました。信徒は、コミュニティの中で、他の信徒の信仰心や生き方を見たり、信徒自身が教会行事やイベントでキリストの教えや文化を紹介したりすることで、自身の信仰心を深めました。

参加者同士・参加者自身の活動によって参加者が主体となるコミュニティの拠点を作ることが三つ目のポイントです。
参加者同士の交流が活発になることで、理解が深まり、より多くの人々に活動を伝播させることができます。

クラウドの布教活動への応用

ザビエルのキリスト教布教活動を十分に理解したところで、CCoEのクラウド推進活動へ応用してみます。

  • 経営層を味方につける
  • 組織の文化に寄り添う
  • コミュニティを作る

経営層を味方につける

ザビエルのキリスト教布教活動の一つ目のポイントは、有力者を味方につけることです。
有力者とは、キリスト教においては大名でしたが、組織においては役員や理事などの経営層です。
そもそもCCoEの性質上、CCoE設立自体が経営層からのトップダウンというパターンが多いかもしれません。その場合はこのポイントをクリアしているかと思いますが、そうではない場合だと中々ハードルの高い課題なのではないでしょうか。キリスト教は大名の利益として南蛮貿易が後押しとなりましたが、同様に考えるとクラウドは経営層の利益として何が後押しとなるでしょう?
Google Cloud推しの僕は、市場動向や最近の技術動向などからGoogle Cloudの有用性を経営戦略に近い部署の人に連携することで、Google Cloudを経営層へアピールしています。
ちなみに、Google Cloudの公式ユーザー会Jagu'e'rのCCoE研究分科会が発表した「2023年度 CCoE国勢調査」によると、2023年は役員の支援を受けているCCoEは半数以下ということで、想像以上にこの点で苦労している方が多いのでは?と思いました。同調査では、CCoE設置初期には役員の支援がなくてもある程度の影響力を持たせることが可能ですが、活動範囲を広げる中で役員の支援が必要になるのでは?と考察しています。

組織の文化に寄り添う

ザビエルのキリスト教布教活動の二つ目のポイントは、その土地の文化に寄り添うことです。
その土地の文化とは、キリスト教においては日本の文化でしたが、組織においては組織そのものの文化です。
クラウドベンダーやユーザーはそれぞれベストプラクティスを様々な形で発信し、世の中には膨大な数の情報が散在しています。ただし、それらの情報を正しく理解し使いこなせる人というのは限られていて相当優秀な人材だと思います。
そこでよくある施策として登場するのが、標準ガイドラインの策定です。CCoEの代表的な役割の一つでもあります。標準ガイドラインを策定する際にベストプラクティスを組織に合わせてテーラリングすることがこのポイントの応用例と言えるでしょう。
僕の組織では、長いSIビジネスの歴史の中で蓄積されたシステム開発の知見がまとめられた巻物が組織内標準として浸透しています。以前を振り返ると確かに、今までこの巻物を使ってオンプレのシステム構築で成功を収めてきた方々に対して、クラウドのベストプラクティスを「これがクラウドのやり方じゃー!(ドヤ)」と言ってもあまり手応えがなかったように感じます。そこでこの巻物の内容を十分に理解した上で、フォーマットやプロセスをなるべく踏襲しながらクラウドのベストプラクティスを整理した標準ガイドラインの作成を進めています。ベースの巻物がクラウドネイティブとは程遠いため、歩み寄りに苦労していますが、組織内の人が実践しやすく受け入れやすいガイドとして完成し普及することを目指しています。

コミュニティを作る

ザビエルのキリスト教布教活動の三つ目のポイントは、コミュニティの拠点を作ることです。
コミュニティの拠点とは、キリスト教においては教会でしたが、組織(特にCCoE)においてはクラウドに関する情報を集約したポータルサイトや組織内SNSなどの組織内コミュニティです。
僕のチームでもクラウドのポータルサイトや組織内SNSでGoogle Cloudのコミュニティを立ち上げました。単にコミュニティを立ち上げること自体は大して苦労しなかったのですが、立ち上げ後にコミュニティが活性化してその状態が続いたりさらに盛り上がるようにするにはどうしたらよいのだろう?と日々頭を悩ませています。まずは地道にポータルサイトに記事を投稿してみたり、組織内SNSでタイムリーな情報発信や他の人の投稿やコメントに反応してみたり、色々と試行錯誤していますが、そもそもやるべきことや、まだまだできることがたくさんあるはずです。
ということで、この良書『成功するコミュニティの作り方』を介して黒須さんらと会話するかのように現代の偉人たちの知見に触れ、自分たちの活動として実践してみようと思います。

まとめ

ザビエルのキリスト教布教活動は想像以上にCCoEのクラウド推進活動と親和性が高く、応用できるポイントがたくさんあると感じました。ザビエルが布教したキリスト教は結局この後、政治的な要因で徳川家康によって禁止され、信徒は迫害されてしまいますが、クラウドが政治的な要因で禁止され、CCoEが迫害されてしまわないことを祈ります。(クリスマスだけに…)
それではよいお年を!

Discussion

jkobaxjkobax

面白い比喩で、いつもと違った視点でCCoEをとらえ直すことができました。ありがとうございます。
経営層はもとより、現場のみなさんも味方につけたいところですね!

mrkn11mrkn11

ありがとうございます!
まずは現場のみなさんのことをよく理解するところからですかね(^^)