エンジニアリングマネージャーの仕事 その人に合った仕事とは
- 仕事に合った人を獲得するのではなく、人に合った仕事を獲得する
- スタッフがキャリアアップを達成するのを助けるために、意味のある問題に取り組めるように、必要なカオスを作ったり、制限したりする
- スタッフに合った仕事を作る人になる
一番重要なのは、目標に向かって前進する状況をスタッフに与えるための最適な方法を理解できるようになること。
- 何が人を動かすのか?人間の基本的な欲求から職場における欲求までを見て、お金がすべてではないことを確かめる
- 学習理論に少し目を通す
- 安定性とカオスを扱う。変化を愛して探し求める人と変化を嫌う人がいる。両者の観点ともに正しいということを理解する
5.1 何が人を動かすのか?
5.1.1 欲求の階層
- 生理的欲求。生物学的な欲求
- 安全欲求。身体的、感情的、経済的な安心などが含まれる
- 愛と所属の欲求。家族、友人、親密な関係とのつながり
- 承認欲求。自分自身と他の人たちの両方からの評価、威信、明成、尊敬を得ること
- 自己実現欲求。才能、スキル、能力を開発し、ゴールに到達することで自分自身の可能性を最大限に具現化すること
5.1.2 仕事の役割
私たちは仕事を通して、マズローのモデルのほぼすべてのレベルにおける欲求を満たす機会を得ています。
- 生理的欲求。適正な額の給与をもらい、妥当な手当てがほしい
- 安全欲求。安定した仕事と安全な労働環境が欲しい
- 愛と所属の欲求。好きな同僚や刺激を与えてくれる同僚と働きたい。チームや上司と良い関係を築きたい
- 承認欲求。フィードバック(非公式)、職位と昇進(公式)にも両方で評価されたい
- 自己実現欲求。キャリアにおいて常に次に進めるところがあると感じていたい
所属、承認、自己実現といった高いレベルの欲求を満たすとなれば、スタッフに手を貸せるのはあなたです。
所属欲求のためには、以下のことができる。
- スタッフと強い関係を築く
- 信頼を築き、成長を助けるために徹底的に率直なフィードバックを促し、実際にやってみせる
- チームにいる人達が尊敬するようなロールモデルになる
- 自分自身とチームを組織の他の部分とうまくつなぎ、チームがずっと大きな何かの一部であると感じられるようにする
承認欲求のためには、以下のことができる。
- 適切な仕事を適切なスタッフに委譲し、スタッフが学び、貢献し、成長する継続的な機会を持てるようにする
- スタッフが仕事と、トレーニングやカンファレンスへの参加の両方を通して、新しいスキルを学ぶための環境を提供する
- 結果が的確である限りは、スタッフが選ぶ方法で問題を解決する自由を与える
5.1.3 自己実現への道
マネージャとして、あなたにはスタッフのキャリアと人生に磨きをかけるたくさんの機会があります。...中略...お金のためだけにテクノロジーの領域で働いている人はほとんどいません。なぜなら、みんな本質的に知りたがりで、一生懸命で、熟達と自己実現を求めているからです。...中略...
スタッフが要求を満たせるように多くの機会を作るのは、マネージャとしての責任です。...中略...おもしろい仕事、やりがいのある技術的な問題、強い関係、率直な称賛と批判があれば、ピラミッドのいちばん上まで達成できます。みんなをそこに連れていきましょう。
5.2 発達の最近接領域
ゴール(最終目標)を設定するだけでなく、その達成を段階的にサポートすることは可能か?
レフ・ヴィゴツキーは、子供の学習を効果的に進めるためには、ほとんどの科目で、知識がより豊富な人の存在が必要だと考えていました。一方、例えば言語などの科目については、好奇心に任せればほとんど教育は必要ないとしています。このことは数学や作文に特に当てはまります。
学習者が継続的にスキルを向上させていくためには以下2つのことが重要
- 発達の最近接領域内でタスクを与えられること
- タスクの完成を支援する豊富な知識を持つ適任者がいること
この考え方は、タスクレベルでもキャリアレベルでも利用できる。
5.2.1 タスクレベルでの発達の最近接領域を適用する
すべてのタスクを単に完成させなければいけな何かに過ぎないと考えるか、代わりに1人のスタッフが最近接領域を広げる機会と考えるか、どちらであるべきでしょうか?
委譲と発達の最近接領域の考え方は、似ているので合わせて適用できる。
5.2.2 キャリアレベルで発達の最近接領域を適用する
- ゴールを確認し、そのゴールから逆算して分解していくことでスキルツリーを考える
- スキルツリーの分解に関しては、部下と一緒に考える
- 発達の最近接領域内でできるようにステップに優先順位付けをする
5.3 大聖堂とバザール
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大聖堂モデル
- オープンソースではあるものの、ウィザードによって開発されている
- 長いリリース間隔
- 開発チームによる管理
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バザールモデル
- カオスになるにも関わらず、開発を公開し、全世界がそれに対して貢献する
- 「目玉の数さえ十分であれば、どんなバグも深刻ではない」という教義のもとで活動
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どちらがよいわるいという話ではなく、2つのスタイルがある
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マネージャの仕事は会話を持つこと
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各スタッフはどちら側なのかを見分け
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それに沿った方法でタスクを依頼する
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その人がどちら側かは、変化することがある
5.3.1 大聖堂を建設する人
大聖堂を建設する人は、集中、安定性、純粋主義、クラフトマンシップを強く求めている。以下のような機会を提供する必要がある。
- 対象分野のエキスパートになる。技術スタックの核となる領域を構築して貢献する機会はあるか?その部分に関して社内でいちばんの有識者になれるようにオーナーシップを得られるか?
- チームの礎になる。何か新しいことにアプローチするときに、チームメンバーがアドバイスを求め来る人になる機会はあるか?新しい機能を築くための足場を提供できるか?
- 広くではなく、深く進む。大聖堂を建築する人は深い知識を楽む。専門性を活かして、オープンソースプロジェクトに貢献する機会はあるか?熟達していくために、新しいことには手を出さないでいられるか?
- 自分たちの道を他の人に見せる。エキスパートになる人は、自分が知っていることを他の人に教えることで恩恵をもたらし、楽しむ。大聖堂を建設する人がメンタリングの機会を持てるようにする
- 詳細を楽しむ。中途半端な知識や政治は大聖堂を建設する人からは遠ざけるようし、細部に至るまで集中できるようにする。
5.3.2 バザールをぶらつく人
バザールをぶらつく人はたくさんの喧騒を体験したいと思っている。興奮、多様さ、カオス、変化を求めている。以下の機会を与える必要がある。
- なるべく多く新しいことを持ってくる。新しいプロジェクトが来そうか?なるべく多くの新しい課題、ドメイン、プロダクト、テクノロジーを試したがっている。何か新しいことがあれば、この人達に与える
- 建築し、捨てる。素早いプロトタイプを繰り返すような局面があるか?新しいテクノロジーを実験する予定があるか?
- 停滞を避ける。長い間同じ領域で取り組むことを熟練というより停滞の兆候とみなす。どう感じているかを話し、変える機会を作る
- チーム間を動き回る。他のチームへ短期留学させる。知識を持ち帰ってきてくれる。逆にそうした人受け入れることで新しい風を入れる
5.3.3 会話をする
どっちなのかをマネージャと話す人はほとんどいない。1on1のよい材料になる。何が人を駆り立てるかを知ることで、今後のプロジェクトやチームへの配置がうまくなる。スタッフのためにもなるし、成果を最大化するのにも役立つ。
5.4 面談の前のレビュー
マネージャとして、スタッフが幸せで、高いモチベーションを持ち、成長できるような最善の機会を与える義務があると学びました。その仕事に合った人を探すのではありません。その人に合った仕事を探すのです。
人に合った仕事を見つけることは大抵の場合、時間を書ければ達成可能だが特定のスタッフや特定のチームにとっては、達成不可能なタスクになる場合もある。
個人的な感想
マネージャとして、スタッフが幸せで、高いモチベーションを持ち、成長できるような最善の機会を与える義務がある
マネージャとして心に深く刻んでおきたい言葉。
「努力目標」や「考え方」や「できた方がよいね」ではなく、「義務」
同時に、キャリアパスとしてIC(Individual Contributor)としての選択がなかったり、選択できるとしても形ばかりのものだったりすることある、ということが多くの不幸を生み出しているというのもまた事実(マネージャとしての義務を全うするという意識がなく、仕方なくマネージャをしている人を生み出してしまっている)。そうなっていない会社は会社としての仕組みや文化の変更が必要だと考えられる。
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