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エンジニアリングマネージャーの仕事 人間って難しい

2024/09/24に公開
  • 詮索と審判:認知度が上がると周囲の目が厳しくなる
  • ぐらつき:会社はゼリーのようなもの。上がぐらつけば下もぐらつく
  • ムチとニンジン:チーム自らニンジンへ向かうようにする
  • 馬鹿の山:よくある誤解とその背景にある心理

10.1 詮索と審判

ロールモデルの立場にある人が、自らも単なる人間なのだと示さざるを得ないとき、どうしても詮索を生んでしまう。組織の上の人に完璧を求めることはできない。それは失望につながるだけである。

10.1.1 上も下も

部下からも上司からも詮索せを受ける。なぜでどう対処すればよいか。

チームから詮索される場合

  • 思いやりと理解
    • スタッフが素晴らしい
    • マネージャがうまくやっている状態
  • 気遣いと心配
    • 例えば、前の晩によく眠れず不機嫌になっているだけでも、自分は嫌われているのでは?と思ってしまう。
    • 何があったのか、などをぶっちゃけて話すべき
  • 恨み:スタッフがマネージャを感情的に拒否する。原因があるはずなので深掘りする
  • 反抗:スタッフが妨害工作を始める。この状態は危険

率直で誠実なコミュニケーションが解決策。ストレスの多い時期には、抑圧された感情があふれ出てくるもの。話し合うのがマネージャの仕事。

チームからの詮索を受け入れる

良くない状況やチームがストレスを抱えているとき、スタッフ一人ひとりがマネージャに対してどのような感情を抱いているのかを意識して気に留める。メモリが下の方なら、以下を行う。

  • 話を聞くための時間を取る(1on1の延長やコーヒー)
  • 欲求不満の根本原因を突き止める
  • 状況を前向きにとらえる

10.1.1.2 上司を詮索する場合

上司に対する不安は、深刻な不正を行っているのでない限り、共感するところから考える必要がある。怒りを反抗に変えてはいけない。関わる全ての人にとっても、良い結果をもたらさない。

頭上の剣

上司に本気で腹を立てたのはいつですか?

  • 何をされたことに腹が立ったのか?
  • そんなふうに感じた理由は何だったのか
  • 感情に対する根本的な原因はなかったか?
  • 状況を解決するためにどんな手順を踏んだか?改善したか?
  • 逆の立場ならこうするのにと思ったことは何か?

人間の自然な性質。この感情をどう扱うかが重要。嫌な感情の下に、とかに取り組むべき課題が隠されているというのは良くあること。マネージャとして部下からそれを引き出すように努める必要がある。嫌な感情を抱く時は、自分と向き合い、なぜ自分がそんな感情を持つのか探るべき。

10.2 ぐらつき

マネージャとしての仕事の一部は、チームの害となるような、過度に面倒では快適で、感情的なものをチーム入れない盾になることだ。情報を咀嚼し、飲み込みやすいように、じわじわと与える役割になる必要が頻繁にある。時には完全に遮断することも必要。チームのぐらつきを抑えることが必要。

10.2.1 傾聴と観察

最初に身につけるべきスキルは、

  • 意識的に、耳を傾けること
  • 審判抜きに観察すること

最後まで聞き、必要があればメモする。状況を事実と感情に分けて認識する。感情を無視したくなるかもしれないが、なぜその事実が感情を高ぶらせるか明らかにすると考えるのに役立つ。

10.2.2 消化

情報を受け取ってから伝達するまでに、消化のための時間を置く。

  • その状況から感情を抜いた時、本来意味するものは何か?
  • 実際に何か変わるのか?
  • チームが今やっていることを中止して何かを代わりに始める必要があるか。
  • どのように受け止めたら良いか
  • この状況に悪い反応を示しそうな人はいるか?それはなぜか?

冷静沈着だと思っていても、感情的な状況にさらされるとそうでなくなることもある。その場合には、一晩寝ることも大事。潜在意識が整理してくれる。一晩寝るとそれほど悪くないと思うこともある。

10.2.3 伝達

メッセージを伝える前に表現を変えたくなるかもしれない。

  • ネガティブなものをそのまま伝えるのではなく、
  • ポジティブな表現に変えるべき

ここは解釈の問題なのかもしれないが、決定の内容はメンバーに伝わる可能性があるので、事実は事実として伝えた上で、フォローするような内容を付け加えるという方法が良い気がする。(言われた内容を一語一句たがわず伝える、という前提なのかな。)

ニュースを伝えるのに一番適した手段を選択する。

  • 一斉に伝える
  • 1on1で伝える
  • 次に何をやるのかわかっていないうちは先延ばしにするか

答えを持っているのは、マネージャだけ。助言が必要であれば、上司や同僚と話す。

10.2.4 同僚のサポート

激動の時期においては、周囲の面倒を見ることに全力を尽くすのと同じように自分の面倒を見なければならない。上司、同僚、家族、友人と話す。外に出て何か楽しいことをする。

10.3 ムチとニンジン

「もっと働け、さっさと働け」と言われたとき、外部の観察者がチームに期待するものと実際を比較したときに不整合がある。

  • 目に見えるアウトプットが不足していること
    • プロジェクトの定義が不十分
    • 非現実的な期待がかけられている
    • 運が悪い
    • 優先順位付けが下手
    • インフラ、技術的負債の解消、リファクタリングといった水面下の活動をしていた
  • 「頑張り」が不足している(一生懸命働いている兆候を示す)
    • 建前上早く出社する
    • 遅くに退勤する
    • コミュニケーションチャンネルで目立つ
  • 情熱が不足している
    • 外部の観察者思う重要度とチームメンバーの重要度のギャップ
    • やりがいと学習機会がない

チームに対するフィードバックをくれる人が重要だとすれば、その観察の正しさ次第で、対処方法を考える。

  • 正しくないと意義を唱える必要もある
  • 一部が正しいのであれば、何かを変える必要もある

外部の人間は、ムチを使うことを期待しているが、そのムチをニンジンに変える。

10.3.1 ムチ

  • ソフトウェアエンジニアの需要は著しく多い(次が簡単に見つかる)
  • エンジニアは自己動機付けをしている(義務ではなく、やりたいからやっている)
  • 何がモチベーションにつながるかは人によって大きく異なる

酷い環境で歯を食いしばりながら、良いエンジニアになるためのトレーニングを何年もしてきたのではなく、好奇心と情熱があったからことできた。ムチをふるっても仕事の妨げになり、退職させるだけ。

明確な説明や目的もなしに、もっと働けさっさと働けと言うと、馬鹿に見えてしまう。

10.3.2 ニンジン

処理能力を向上させる本当のリーダーシップは、チーム中で目的と情熱を育むことで生まれる。

  • 仕事に情熱が持てれば、もっと良い仕事ができるようになる
  • 本質的に楽しめる人たちだから

チームをこの方向に導くのは難しい。そのためには、感情知能や、チームの働き方とモチベーションの源泉に対する理解、チームが共に旅をしたくなってくれる信頼とラポールを築く能力が必要。ちょっとやって終わりではなく、長く続ける必要がある。

  • 自律性:プロジェクトマネジメントと相反するようだが、権限委譲で対応する
  • 熟達:人間は、スキルアップ、キャリアアップしたいもの。最近接領域を考慮した権限委譲。メンタリング環境。キャリアについての意思とパスの相談
  • 目的:チームがしている仕事によって世界がより良くなっているのだとわかるようにする

自律性、熟達、目的というニンジンを目指して動くチームのほうが、良い仕事をし、リリースも速く、それを楽しんでできる。ムチは必要ない。

自律性、熟達、目的

  • 各項目に点数をつけるなら何点か
  • 点数が低い項目の理由は何か
  • もっと高い点数をつけるためには何が必要か
  • チームに説明して自己採点してもらう。メンバーの考えはマネージャと一致しているか

10.4 馬鹿の山

  • ダニング・クルーガー効果:能力の低い人ほど自分は優れていると錯覚する認知バイアス
  • インポスター症候群:高い実績を持つ人が自分の功績を内面化できず、偽物か詐欺師だと露呈することを恐れるという概念

10.4.1 ダニング・クルーガー効果

  • 人間は自分の能力を過大評価しがち
  • 不適切な判断をするだけでなく
  • その判断が間違っていることに気が付けない

プロジェクトマネジメントにおける意味は何か?

  • ジュニアエンジニアによる不適切な判断

高い実績と自信のあるジュニアスタッフ、特に優秀な成績で卒業したばかりの人などは、本番のエンジニアリングについて熟慮の上で判断するという経験は多くない。問題を解決できるだろうという過剰な自信からゴーサインを出しても、そのうちにうまくいかなくなることがある。

  • シニアスタッフによる軽率な判断

技術の細かいことから離れてしまったため、できるかどうかが直感的にわからなくなっている。しかし、自信があるがゆえに、下が上げてきた結果に納得できない。誤った意思決定のもとになる。

最悪なのは、自分がバカの山にいるのに気が付かないこと。

10.4.2 インポスター症候群

  • 内気すぎるジュニアエンジニア

高い実績を持つジュニアエンジニアは頭の切れるシニアに囲まれることが多く、自分の能力が低いと思い込むことがある。

  • 慎重すぎるシニアスタッフ

内向的、慎重、危機回避型になる可能性がある。「悪魔は細部に宿る」ことを知っているから。リスクが「バレる」のを避けるために口を出せなくなってしまう。

10.4.3 ギャップを埋める

マネージャとしてできることは何か?

端的に言えば、感情知能を使って、そのような立場に陥ってしまう気配を持った人に目星をつけ、そうした言動を克服してもらえるように働きかける必要がある。

10.4.4 ダニング・クルーガー効果と折り合いをつける

ジュニアエンジニアには、コーチングを行い、もっと考慮すべきことがあることに自分で気が付くように誘導する。

シニアエンジニアは難しい。自己保身が組み合わさる可能性があるため。しかし、基本はジュニアと同じ。事実だけを提示するようにすること。

10.4.5 インポスター症候群と折り合いをつける

インポスター症候群に罹った優秀なジュニアエンジニアは感情に打ち勝つために成功体験を繰り返す必要がある。良いメンターをつけて、一緒に仕事さセルのも手。

シニアの場合にも、メンターにするものよい。または、議論において、頻繁に意見を聞くことにより、重要な知識を持っていることを認識してもらう。

  • 感情知能を使って罹っているスタッフに目星をつける
  • それは異常でも何でもないと認める
  • 何らかのテクニックを使って解決する
  • 解決することが、マネージャの義務

ダニング・クルーガー効果とインポスター症候群

  • 馬鹿の山にいたのは、直近ではいつか、どのようにして山を下りたか?
  • マネジメントの役割において、インポスター症候群で説明のつくものはあったか
  • 同僚にいずれか現象を目撃したのは、直近ではいつか、どのような状況か、何がそうさせたか
  • この概念を1on1でスタッフと話しあってみる。

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