コーチングバイブル 第4版 傾聴
3 傾聴
- 効果的なコーチングをする上で、傾聴はもっとも大切な要素
- 普通は、聴く代わりに、次に自分が何を言うかを考えていることが多い
コーチに求められるのは、聴くことによって相手の心を開き、さらに対話を活性化させるような能力。コーチが傾聴するというのは、受動的に聞くことではなく、能動的な行為であると理解する。
傾聴による気づきとその影響
コーアクティブな傾聴には2つの側面がある。
- 気づくこと
- 非言語の情報も受け取っている
- 入ってくる情報を分析、識別、解釈することは止めることができない
- 大事なのはオープンであること、新しい情報を受け入れ続けるということ
- 影響への意識
- コーチの聴き方がクライアントに与える影響
「気づくこと」は、聴くことに集中できていると、言葉そのもの以外にもいろいろな情報が入ってくる。それらを受けとめる。
「影響への意識」は、気づいたことは、沢山ありその中からコーチが選択してリアクションすることで、相手が影響を受ける。そこでさらに、どんな影響を受けたかを傾聴する。
レベル1:内的傾聴
- レベル1の傾聴では、気づいているのは自分自身に関すること
- 質問は「これは、自分に取ってどんな意味があるの?」
リーダーやマネージャーが、レベル1の罠にハマってしまうことがある。何が最善かという自分自身の考えや分析で協働の可能性を消してしまう。
- クライアントはレベル1の傾聴であることが望ましい状態(自分について深く考える状態)
リーダーやマネージャとしては、次のような状況も注意。
- 聴いているように見せて、別のことに注意が向いている
これは見破られる傾向があり、信頼を傷つけてしまう。
レベル2:集中的傾聴
- レベル2の傾聴とは、相手にしっかり集中する聴き方
- 情報やエネルギーはすべてクライアントからやってくる
- コーチによって受け取られ、伝え返される
レベル2の傾聴では、気づいたことの恩恵を受けるのはクライアント
- コーチは何も吸収せず鏡のように、来たものをそのまま返す
- コーチは自分の聴き方がクライアントに与えている影響を認識している
- 次にどこに向かうかを知るのに必要なことは、たった1秒前に起こったことだけ
レベル2の傾聴は、コーチとクライアントが共感し、協力しあって、何かを明らかにしたり、生み出したりするレベル。コーチとして自分が次に何をすべきかを考える必要がない。そういう状態はレベル1。
- 言葉だけでなく、声の調子や抑揚、ペース、感情など、すべてに注意を払う
- どの情報に対して応答するか選択する
- 自分の応答がクライアントに与えた影響を認識、それもまた情報として受け取る
- つまり、2度傾聴する
「私はその問題に取り組むための時間があります」ではなく、「私にはあなたのための時間があります」というメッセージが重要。
レベル3:全方位集中
- レベル3は、時に「環境的傾聴」といわれる
- 直感から得た情報を活用する
レベル2はあくまでクライアントから発せられる情報を軸にする。レベル3はそれに加えて、それらの情報から直感的にひらめいた要素も情報として使っていく。
コーチは傾聴する
- コーチングは、傾聴ですべてが決まるといっても過言ではない
- クライアントの発する合図を聴きもらさないように注意深く耳を傾ける
- 傾聴はすべてのコーチングの入り口
リーダー・マネージャの場合、重要なことは目の前の問題に対処することと相手をコーチングすることを区別すること。その両方の選択肢に耳を澄ます聴き方が求められる。以下を自分自身に問いかける。
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自分のリソースや答えを使って効率的に対処する必要があるのは問題のどの部分か
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この会話の中で、どこに成長や学習の機会があるか
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コーチやリーダーは、話を聴きながら、何に焦点を当てるのかを選択していく
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その選択がコーチングの方向や焦点を変化させる
コーチング・スキル
傾聴の資質と特に関わりの深いスキルを見ていく
反映のスキル
- 反映のスキルとは、今何が起きているのかを簡潔に言葉にすること
- 自分の観察したことを評価や判断は交えずにできるだけはっきり伝える
- クライアントと対峙することもある
- 約束と行動の食い違いを曖昧にせずコミットメントを貫く
- 実際に食い違いを正すのはクライアントの役割
クライアントが行ったこと、行わなかったことを総合するとどんな真実が浮かび上がってくるのかをクライアント自身が見えるようにサポートするためのスキル(自分が行っていることの全体像を見失う場合もあるので)。
- コーチは自分に見えるものを包み隠さず明確にする責任がある
- 同時に、他の全てのコーチングスキルと同様にそれが正しいかどうかにはこだわらない
- つまり、異なる解釈も受け入れる
明確化のスキル
明確化のスキルは、傾聴を土台としながら、質問したり、言い換えたり、視点を転換したりといったことを組み合わせたスキル。クライアントが漠然と抱いているイメージをより鮮明にし、細部を詰め、最終的にそれでいいかどうかを確かめたい時に使う。
俯瞰のスキル
簡潔な文章で表現することが難しい。細かい沢山の問題でなく、それらをまとめる大きな問題やその問題が起きている全体象についてクライアントが考えるように促す。
比喩のスキル
比喩のスキルは、感覚やイメージを使うことで、クライアントが体験していることをより速くより容易に理解できるようにサポートするスキル。
認知のスキル
- コーチが認知するのは、クライアントの人となりであって、その行為ではない
認知する能力は、コーチの基本的な資質に加えてもよいくらい、重要な能力。コーチはクライアントが創り出したい変化を起こすためにどういう人であるべきか、つねにここに留めておく必要があるから。
変わりつつある部分に目を向けて、認知を行えるとよい。クライアントの成長の肥やしとなる。
認知のスキルには2つの側面がある。
- 認知をクライアントに伝える
- その認知がクライアントにどんな影響を与えたかを気づく
- 認知がどのようにクライアントに届いたかをしっかり傾聴する
クライアントにとって、人から理解してもらえることはめったにないことなので、極めて感動的なことであるはず。
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