Goのロギングライブラリ 2021年冬
この記事ははてなブログからの筆者自身による転載です。
総論: なぜログが必要か
可観測性
たとえ目的は自明でも、その動作までが自明なアプリケーションというものはほぼ存在しません。現実の世界のアプリケーションというものは、動作パラメータだったり実行環境だったり、起動時点でのさまざまな要因によって挙動を変えるものだからです。そして、そうしたアプリケーションにはライフサイクルというものがあります。ここでいうライフサイクルは、アプリケーションの処理が実行されるにつれ、アプリケーションの内外との情報のやりとりで生じる大局的な状態の変化のことです。アプリケーションが並行処理を行うようなものであれば、個々の並行処理の単位にもライフサイクルがあることでしょう。アプリケーションはそれ単独で複雑な系であるということです。
また、現実の世界においては、単一のソフトウェアで自己完結するということも非常にまれなことです。どんなに単純なアプリケーションであっても、OSカーネルという異なるソフトウェアとの間でシステムコールなどの仕組みを用いコミュニケーションを行うことでその目的を果たすことになります。また、現代的なアプリケーションは、ネットワークを用いて他のアプリケーションと通信を行うことがしばしばあります。このような世界では、系の境界を単一のアプリケーションを含むだけに留めておくことは困難となります。そして、複数のソフトウェアを含む系では、ネットワーク理論を持ち出すまでもなく、複雑性も飛躍的に増大することは明らかです。
そうした複雑な系において、しばしば私たちはアプリケーションの予期しない動きに遭遇することがあります。予期しない動きは、アプリケーション内部の不具合によるものかもしれませんし、外部の不具合が理由なのかもしれません。限られた時間の中でその原因を切り分けするには、アプリケーションがある時点でどのような状態であったのかを時系列的に記録しておくことが必要になります。
記録する対象の粒度はさまざまです。アプリケーション単位であったり、アプリケーションを構成するモジュールやコンポーネントであったり、関数のコールグラフであったり、はたまたそれらの上に横断的に横たわる関心事であったりするでしょう。また、記録する対象も、数値、文字情報、バイナリ列であったりしますし、あるいはライフサイクルを構成する要素の時系列的な前後関係を表す、抽象的なものかもしれません。
現代では、こうした種々の時系列的な記録が運用で求められる文脈において充足していることを可観測性と呼んでいます。
可観測性とログ
アプリケーションを動かす環境、規模や、求められるサービスレベルの違いによって、可観測性に求められる要件というのも変わります。その上で、一部の組み込みシステムのような極端にリソースの制限がある環境を除き、あらゆる状況において、問題の原因を把握するという観点で最も原始的な方法であり、また重要となるのがログです。前述のようにアプリケーション一般が持つ構造によって与えられる文脈もありますが、アプリケーション固有の文脈は設計に依存するものであり、開発者が明示的に情報を出力するようにコードを記述してはじめて把握できるものとなります。とはいうものの、一方でログに出力する内容やログの出力箇所などの設計はプロジェクトを通して一貫させることが難しいという問題もあり、プログラマの属人的なものになる傾向があり、万能というわけではありません。その意味では客観性を担保できるメトリクスやトレースといった概念が際立ってくることでしょう。 (それらの概念もここで扱ってしまうと本稿の範囲を超えてしまうため、また別の機会に述べたいと思います。)
可観測性においてログが担うのは、一般的には記録の対象が主に文字情報、多くの場合自然言語の文として表現されているものの時系列的な集約です。本稿では特に断りを入れない限り、この意味でログという用語を用い、個々のイベントを記録する内容のことをログエントリー、ログエントリーに記録される文字情報をログメッセージということにします。
ログの機能
ラベリング、フォーマッター、構造化ロギング
ログはいわば航空機におけるフライトレコーダのようなもので、(パフォーマンスやセキュリティなど非機能要件上の要請が許す範囲内で) 量的な観点でも質的な観点でも、可能な限り情報を取捨選択したりせずに出力するべきですが、もちろん解析のためにログを見返すことになった際には検索や絞り込みを行うことになりますから、それらを容易にするような工夫もログのエントリに加えておく必要があります。
その工夫については、いくつかのプラクティスがあります。最も有名なプラクティスはいうまでもありませんが、ログを出力したアプリケーションから見て主観的な時刻をログエントリーに付加するというものです。現代的にログといえば、このラベルを欠くものはないといっていいでしょう。 (とはいえ、シェルベースのアプリケーションの多くで、出力にこのラベルを欠いています。)
次によく用いられるのは、ログレベルと呼ばれる重要度をログにラベリングする手法です。このログレベルの粒度はロギングフレームワークによって方針が異なることがありますが、概ね次のようなレベルが定義されていることが多いでしょう。
-
Fatal (致命的)
アプリケーションの継続的な動作を脅かすような問題を報告するログエントリーに付加される重要度。
-
Error (エラー)
アプリケーションを継続して動作させることは可能だが、予期しない事象が発生している旨を報告するログエントリーに付加される重要度。
-
Warning (警告)
予期しない事象であるかどうかは文脈に依存するが、記録時点での状況がアプリケーションの設計から定義される平時のものではない旨を報告するログエントリーに付加される重要度。
-
Information (情報)
上記のいずれでもなく、アプリケーションの動作に関わる情報のうち、将来の解析に有用であるようなものを記録するログエントリーに付加される重要度。
-
Debug (デバッグ)
主に開発や不具合の解決時にデバッグなどの目的で動作を追跡するのに必要な文脈情報を記録するログエントリーに付加させる重要度。
他によく知られているラベリングは、ログを出力した関数名やソースコードのファイル名、出力箇所の行数などを出力するというものです。これに関しては、アプリケーションを記述するプログラミング言語の仕様や実行環境に依存するため、項目について共通認識があるというわけではありません。
いくつか汎用的なラベルを紹介してきましたが、よりアプリケーション依存ではあるものの有用なラベリングもあります。たとえばネットワークサーバーでは接続元のIPアドレスを記録しておくと良いでしょうし、ネットワークサーバーでもHTTPサーバであるならばHTTPメソッドやリクエストURIを記録しておくということもよく行われます。このように、ラベルの種類は文脈によってさまざまですが、解析の際にはラベルを手がかりに絞り込みを行なっていくことになりますから、ログエントリーを記録するときにはある一定の形式で格納することが求められます。
ログが文字情報を主体としていることから、伝統的にはログをテキストファイルとして各エントリを行指向で表現し、ファイルに記録したり、ストリームに出力することが多くあります。そうすることで、テキストファイルを対象とする一般的なユーティリティ、たとえばgrep
やsed
といったコマンドを検索や絞り込みに活用することができるだけでなく、自作のプログラムでログを処理することが容易となるからです。その上でログメッセージに加え、複数のラベルを取り扱うとなると、各エントリが文字列として所定の形式になっていることが望ましくなってきます。そこで、多くのロギングフレームワークはログエントリーを所定の書式にて出力するためのフォーマッターというものを備えています。 (なお、呼称はフレームワークによって異なります。)
フォーマッターの仕様はロギングフレームワークによって変わりますが、おおむね次のような要素を備えています。
- どのようにログエントリーを文字列として整形して出力するかを指示するための文字列
- その文字列内に埋め込んで、任意の位置にログメッセージやラベルを出力することのできるプレイスホルダー文字列
プログラマがログエントリーに含めるように明示的に指定していないラベルもOOBデータ ((out-of-band data=帯域外データ、主題となる情報とは別に付加的に与えられる情報のこと)) として文字列に埋め込めるようにしているフォーマッターもあります。 (通常、時刻のようなラベルは明示的に含めるということはしないはずです。たとえば log4j2
のようなロガーは、時刻の他に、環境変数など実行環境に関わるラベルを含めることができるようにしています。)
フォーマッターは主に人間が目視しても判読できるような単純な文字列を生成することを目的としていますから、これを用いて表現できるラベルの種類はそう多くありません。複雑な文脈を表現する場合には、かつては限られたラベルの数の中で複数のログエントリーを出力することで対処してきましたが、現代的な運用環境においてはアプリケーションログはデータインジェスチョンを介して即時的にログ解析用のプラットフォームにストリーミングすることが増えてきており、そもそも人間が直接眺めるというところよりも、インジェスチョンが容易な形式で出力し、ひとつのログエントリーに可能な限り文脈を込めるというトレンドとなっています。そのトレンドの中で生まれたのが、構造化ロギングという考え方です。
構造化ロギングというからには、対になる概念として非構造化されたロギングがあるということですが、その非構造化されたものが伝統的なフォーマッターの出力する文字列ということになります。構造化されたロギングでは、プログラム的に処理しやすいJSON、MessagePack、ProtobufやCBORのようなデータモデルと表現形式のセットを前提として、文字列だけではなく、前提となるデータモデルの許す範囲でログエントリーを構成することができます。そのような状況では、ラベルの数に論理的な制約はありませんから、プログラマは任意にログエントリーに文脈情報として必要な数のラベルを追加できるのです。
エントリーポイントと設定の粒度
ロギングフレームワークにはログの記録に単一のエントリーポイント (ロガー) を提供するものと、フレームワークの利用者が複数のエントリーポイントを個別のロガーとして定義して、エントリーポイントごとにフォーマッターなどの設定を変えることができるようにしているものとがあります。このとき、多くのフレームワークではプログラム的にロガーを設定できるようにしていますが、外部ファイルなどを読み込んで設定することもできるようにしているものもあります。
前章で記録対象の粒度や関係性について少し触れましたが、事実多くのソフトウェアは、モジュールやコンポーネントといった構造を持っています。たとえば、アプリケーションとそれが利用するライブラリとは、最終的に同じプロセス空間で動くものの、コードの構成上は別のファイルだったり、プログラミング言語が定義するパッケージなどの別の論理的な区分であったりすることが多いでしょう。プログラミング言語によっては、こうしたモジュールやコンポーネントの関係性が階層構造をとるものがあります。この階層構造をロガーと対応づけて、ロガーの設定を階層構造の下から上に伝播 (propagate) することのできるようにしているものが存在します。これを階層ロギングなどと呼ぶことがあります。
Goのロギングライブラリ
- Zap以前
- Zap以後
- インターフェイスのみ
GoのロギングライブラリはGoが誕生してからさまざまなものが作られてきましたが、大きく分けてZap以前とZap以後に分類できます。Zap以降のライブラリはほぼすべてがZapの設計を手本としているといっていいでしょう。Zapがなぜそれほど革新的であったかというと、パフォーマンスやAPIの利便性を犠牲にせず、むしろ従来型のライブラリよりもずっと高速に動作するにもかかわらず、構造化ロギングなど進歩的な機能を実装できていたからです。
Zap以前のロギングライブラリ / フレームワークは上に挙げた以外にも数多く存在しますが、メンテナンスが停止しているもの、とくにGoモジュールに対応していないものはあえてここでは取り上げないこととします。
前述の二分類とは別に、実装に依存しない (implementation agnosticな) ファサードとしてのAPI (他の言語、たとえばJavaでいうところのslf4j
のようなライブラリです) を提供するライブラリもあります。そうしたライブラリで最も著名なのがgo-logr/logr
です。go-logr/logr
のAPIを使ってロギングを実施しておけば、Logrus、ZapやZeroLogを含む複数のロギングフレームワークをバックエンドとして切り替え可能となります。logrのようなライブラリはアプリケーションの中で使うというよりも、ライブラリの作者が、その中でロギングを実施する想定であるけれども、特定のロガーの実装に依存するのを避け、ライブラリの利用者の裁量で実装を選べるようにしたいと考えている時に特に有用です。
早見表
- | 複数のロガーのインスタンス化 | ログレベルに基づくロギング | フォーマッタの変更 | 構造化ロギング | JSON形式での出力 | ターミナルに色付きで出力 | ゼロアロケーション | サンプリング |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
標準のlog パッケージ |
✔︎ | 一部可 | ||||||
google/logger |
✔︎ | ✔︎ | 一部可 | |||||
golang/glog |
✔︎ | |||||||
k8s.io/klog |
✔︎ | デフォルトでも一部可だが、logr経由で出力することで全面的に可能 | ✔︎ | ︎logr経由で出力することで可能 | logr経由で出力することで可能 | |||
Logrus | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ||
apex/log |
✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ||
Zap | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔ (Windowsで使うには工夫が必要) | ︎✔︎ | ✔ |
ZeroLog | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔ | ︎✔︎ | ✔ |
RipZap | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔︎ | ✔ (Windowsで使うには工夫が必要) | ︎✔︎ | ✔︎ |
log
パッケージ
標準のサンプルコード
package main
import (
"log"
"os"
)
// 出力:
// [my-app] 2021/12/12 15:13:02 /tmp/standard-log/test.go:12: Hello 世界
// [my-app] 2021/12/12 15:13:02 /tmp/standard-log/test.go:13: Hello地球
// 2021/12/12 15:13:02.293092 test.go:17: [my-app] Hey 世界
// 2021/12/12 15:13:02.293095 test.go:18: [my-app] Hey地球
func main() {
// デフォルトのロガーを用いたログ出力
// フォーマットの変更
log.SetFlags(log.Llongfile | log.LUTC | log.LstdFlags)
log.SetPrefix("[my-app] ")
log.Println("Hello", "世界")
log.Print("Hello", "地球")
// ロガーのインスタンスを生成
myLogger := log.New(
os.Stdout, "[my-app] ",
log.Ldate | log.Lmicroseconds | log.Lshortfile | log.LUTC | log.Lmsgprefix,
)
myLogger.Println("Hey", "世界")
myLogger.Print("Hey", "地球")
}
プロフィール
レポジトリ: go.googlesource.com
ドキュメント: pkg.go.dev
初コミット: 2009年1月27日 (Goのリリースは2009年11月)
執筆時点での最終リリース: (Go本体のリリースと同じ)
Goの標準ライブラリとして提供されているロギングライブラリです。作者はrscことラス・コックス氏です。果たして人類にログレベルは早すぎるという思想があるのかわかりませんが、今回紹介するロギングライブラリの中で唯一ログレベルに対応していません ((厳密にはFatal()
やPanic()
をログレベルという扱いにすれば3段階あることになる))。
グローバル関数をエントリーポイントとして使うことのできるデフォルトのロガーと、New()
関数を通じてインスタンスを生成し、個別に出力フォーマットなどの設定が可能な、メソッドがエントリーポイントとなっている*Logger
のAPIの二本立てとなっています。
フォーマッターの実装は固定ですが、SetFlags()
関数 / メソッドを通じてある程度フォーマットの変更が可能です。SetPrefix()
関数 / メソッドまたはNew()
関数の引数でログエントリーの中に任意の固定文字列を含めることも可能です。
...()
と ...ln()
の違いは、どちらも引数が複数指定されるとそれらの引数を文字列化したものを結合して出力するのですが、そこで文字列と文字列の間にスペースを入れる (...ln()
) か入れない (...()
) という点です。また、...f()
を用いると、fmt.Printf()
と同様の書式文字列を用いてログメッセージを組み立てることが可能です。
Print...()
とFatal...()
Panic...()
の違いは、Print...()
がログエントリーを出力後ただちに呼び出し元に復帰するのに対して、Fatal...()
はログエントリーを出力後終了ステータス1でプロセスを終了し、Panic...()
はログエントリーを出力後panicを発生させてプロセスを終了するという点です。
google/logger
サンプルコード
package main
import (
"io"
"log"
"github.com/google/logger"
)
// 出力:
// ERROR: 2021/12/13 10:17:35 /tmp/google-log/test.go:15: いきなりですが宇宙ヤバイ
// INFO : 2021/12/13 10:16:45 /tmp/google-log/test.go:15: Hello 宇宙
// INFO : 2021/12/13 19:16:45.237126 test.go:22: Hey 宇宙
// INFO : 2021/12/13 19:16:45.237153 test.go:28: Info verbosity set to 2
// INFO : 2021/12/13 19:16:45.237165 test.go:29: Hey世界
// INFO : 2021/12/13 19:16:45.237172 test.go:30: Hey地球
func main() {
// デフォルトのロガーを用いたログ出力
// 第4引数はログファイルの出力先を表すio.Writerなので、
// io.Discard (ioutil.Discard) を指定すると標準出力やシステムロガー以外に出力されなくなる
logger.Init("my-app", true, false, io.Discard)
// フォーマットの変更
logger.SetFlags(log.Llongfile | log.LUTC | log.LstdFlags)
logger.Error("いきなりですが", "宇宙", "ヤバイ")
logger.Infoln("Hello", "宇宙")
logger.V(1).Info("Hello", "世界")
logger.V(2).Info("Hello", "地球")
// ロガーのインスタンスを生成
myLogger := logger.Init("my-app", true, false, io.Discard)
logger.SetFlags(log.Ldate | log.Lmicroseconds | log.Lshortfile | log.LUTC)
myLogger.Infoln("Hey", "宇宙")
// デフォルトのログレベル (verbosity) は0のため、下の2つは表示されない
myLogger.V(1).Info("Hey", "世界")
myLogger.V(2).Info("Hey", "地球")
// ログレベル (verbosity) を1に設定
myLogger.SetLevel(2)
myLogger.V(1).Info("Hey", "世界")
myLogger.V(2).Info("Hey", "地球")
}
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レポジトリ: GitHub
ドキュメント: pkg.go.dev
初コミット: 2016年2月11日
執筆時点での最終リリース: 2021年5月8日 (v1.1.1)
シンプルで保守的な実装とGoogleの公式GitHubレポジトリ配下にあることからとても古いライブラリのように思えますが、なんと初コミットは2016年です。歴史的に見るとgolang/glog
の方が先にリリースされているにもかかわらず、このライブラリをあえて実装したモチベーションはやや謎に包まれています ((筆者が知らないだけです。))。
APIはおおむね標準のlog
パッケージをなぞったものとなっていますが、GoogleのC++ロギングライブラリであるglogと同様のセマンティクスを持ったログレベルに対応している点でより実用的といえます。glogと同様のセマンティクスというのは、この後に紹介するgolang/glog
とおおむね同じなのですが、ログレベルだけでログの詳細度 (verbosity) を区別するのではなく、ログの深刻度 (severity) と詳細度 (verbosity) とを概念上区別しているというものです。ログの深刻度としてはInfo、Warning、Error、Fatalの4つを定義していて、ログの詳細度は深刻度がInfoの場合に限り無段階で指定することができます。ややこしいことに、このパッケージの「ログレベル」という表現は実際には詳細度を意味していますので留意が必要です。また、深刻度に応じてログエントリの出力を行うか行わないかを制御するといったことはできません。
ログエントリーはどのような設定を行っても必ず標準出力か標準エラー出力に出力されます。どちらが選ばれるかはログの深刻度により、ErrorやFatalに関しては標準エラー出力に、WarningやInfoについては標準出力に書くようになっています。これもC++のglogのポリシーをなぞったのものになっています。
log
パッケージと同様Init()
というファクトリ関数があり、個別のロガーのインスタンスを生成することができ…るのですが、設計が度し難く、Init()
の初回の呼び出しはデフォルトのロガーの初期化を意味し、2回目以降の呼び出しでインスタンスが生成できるようになるという仕様となっています。さらに信じられないことには、log
パッケージに定義されたものと同じフラグでフォーマットを変更できるのですが、なんとこのフォーマットはロガーのインスタンスごとではなくグローバルにしか変更できない仕様となっています。
他のロギングライブラリにない特色として、OSのシステムロガー (Windowsであればイベントログ、Linuxなどであればsyslog) にもログエントリを出力することができるという点があります。デフォルトロガーのデフォルトの設定では、システムロガーにもログエントリを出力するようになっていますので注意してください。Init()
関数の第3引数は systemLog bool
で、これを true
にするとシステムロガーの出力が有効になり、 false
にすると無効となります。
Init()
関数の第4引数にio.Writer
インターフェイスを持ったオブジェクトを指定すると、標準 (エラー) 出力やシステムロガーに加えて、そのオブジェクトの表す出力先にも (teeコマンドのように) ログエントリを出力できるようになっています。いずれにしても標準 (エラー) 出力への出力は止めることができません。
良いところ・特徴
- 標準の
log
モジュール並みのシンプルさでログレベルが付加されたログを扱うことができる。 - ロガーの設定をコマンドラインから受け取ってよしなに設定をしてくれるため、設定を行うコードを自分で書かなくても済む。
- 別ライブラリの助けなどを借りずにシステムログにもログを出力できる。
- 公式っぽい雰囲気で安全安心。
良くないところ
- 出力先のコントロールがそれほど柔軟ではない。あくまで標準出力への出力は強制。
- フォーマッターが固定で任意の出力にできない。
- 任意のラベリングができず、当然構造化ロギングにも対応していない。
- 複数の言語を用いているプロジェクトの場合、他の言語のロギングフレームワークのセマンティクスと異なる部分があり、調整が難しいかもしれない。
golang/glog
サンプルコード
package main
import (
"flag"
"github.com/golang/glog"
)
func init() {
flag.Parse()
}
// go run test.go -logtostderr=true -v=2を指定したときの出力:
// I1213 22:38:05.617805 4014 test.go:17] Hello地球
// I1213 22:38:05.617944 4014 test.go:18] Hello 世界
// I1213 22:38:05.617948 4014 test.go:19] Hey地球
// I1213 22:38:05.617951 4014 test.go:20] Hey世界
// W1213 22:38:05.617954 4014 test.go:22] 警告
// E1213 22:38:05.617957 4014 test.go:23] エラー
// F1213 22:38:05.617959 4014 test.go:24] 致命的エラー
// exit status 255
func main() {
defer glog.Flush()
glog.V(1).Info("Hello", "地球")
glog.V(2).Info("Hello", "世界")
glog.Warning("警告")
glog.Error("エラー")
glog.Fatal("致命的エラー")
}
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レポジトリ: GitHub
ドキュメント: pkg.go.dev
初コミット: 2013年7月16日
執筆時点での最終リリース: 2021年8月20日 (v1.0.0) (これがgo modulesに対応した初リリース)
Google謹製のC++用ロギングフレームワークであるglogのGo版というような位置づけで開発が開始されたものとみられますが本当の理由は不明です。
github.com/golang/
配下にありますが、これはgo.googlesource.com
にあるGoogleのプロダクトではなくGoコミュニティによって開発されているようです。とはいえ、ロブ・パイク氏をはじめとするGoのコアメンバーも開発に参加しているので、準公式くらいの位置づけといっても過言ではないでしょう。
ロガーの設定はC++のglogと同じようにコマンドラインから行うようになっています。オプション名と意味もほぼC++版と同じですが、コマンドラインフラグに前置される-
の数がC++では2つなのに対してGo版は1つとなっており、完全な互換性があるとはいえません。ログの詳細度は実行時にも変更することはできますが、残念なことに他の設定はコマンドライン以外から変更できません。
ログレベルについてはC++版のglogと同様の独特のポリシーに基づいており、出力対象となるログエントリーの詳細度も-v=詳細度
のように-v
オプションで指定可能です。C++版のglogでは実装されていたにもかかわらずgoogle/logger
にはされていなかった、呼び出し箇所 (コールサイト) ごとにログの詳細度を指定するという機能も-vmodule
オプションを通じて利用可能です。 このオプションに与える値は、パターン=詳細度
の対を,
区切りで-vmodule=main=1,foo*=2
のように指定します。パターンに指定するのはfilepath.Match()
関数に指定できる文字列と同じもので、パターンマッチは各ソースファイルのパス名に対し、ディレクトリを含まないファイル名から.go
を取り除いたものに対して行われます。
デフォルトのログ出力先はglogと同じようにテンポラリディレクトリ内のファイルで、os.TempDir()
で取得したディレクトリとなります。テンポラリディレクトリではなく明示的にディレクトリを指定するにはコマンドラインに-log_dir
オプションを-log_dir=ディレクトリ名
のように指定します。ログファイルは深刻度別に生成され、所定の条件でローテートします。もし-log_dir
を指定していた場合で、当該ディレクトリにファイルの生成ができなかった場合はデフォルト同様にテンポラリディレクトリを使います。
ファイルに加えて、深刻度がErrorまたはFatalの場合は標準エラー出力にもログエントリーが出力されます。ただし、深刻度がWarningとInfoの場合はgoogle/logger
と異なり、出力先がファイルのみとなります。この動作は -logtostderr=true
または -alsologtostderr=true
を指定することで変更可能ですが、指定した場合はInfoのログエントリーも標準出力ではなくすべて標準エラー出力から出力されます。
標準のlog
パッケージやgoogle/logger
と違って、複数のロガーのインスタンスを作ることはできません。グローバルなロガー1つのみを扱うことができます。
CopyStandardLogTo()
関数を呼び出すことで、標準のlog
パッケージの出力をこのライブラリ経由させてファイルに出力することもできます。
上に挙げた以外にもコマンドラインオプションがいくつか存在しますが、詳細はドキュメントを参照してください。
良いところ・特徴
- 標準の
log
モジュール並みのシンプルさでログレベルが付加されたログを扱うことができる。 - ロガーの設定をコマンドラインから受け取ってよしなに設定をしてくれるため、設定を行うコードを自分で書かなくても済む。
- 呼び出し箇所 (コールサイト) ごとにログの詳細度を指定することができる。
- デフォルトでファイルにローテートログを出力してくれる。
良くないところ
- ロガーの設定をコマンドラインから設定をするところ。
- 標準の
flag
パッケージを用いてコマンドラインをパースするため、他のライブラリを使うことができない。 -
init()
の中などでflag.Parse()
の呼び出しが必要。
- 標準の
- デフォルトのロガーの出力が標準出力ではなくテンポラリディレクトリであるところ。
- フォーマッターが固定で任意の出力にできない。
- 任意のラベリングができず、当然構造化ロギングにも対応していない。
- 複数の言語を用いているプロジェクトの場合、他の言語のロギングフレームワークのセマンティクスと異なる部分があり、調整が難しいかもしれない。
k8s.io/klog
サンプルコード
package main
import (
"flag"
"k8s.io/klog/v2"
)
func init() {
// initで呼び出しているが、以下は最初のログを書き出す前であればどこで実行してもよい
flagset := flag.NewFlagSet("", flag.ContinueOnError)
klog.InitFlags(flagset)
// "-v=2" とすると "Hey from 地球" のログエントリーも表示される。
flagset.Parse([]string{"-v=1"})
}
// 出力:
// I1213 22:39:14.549553 4065 test.go:17] "Hello 地球" type="greeting" target="planet"
// I1213 22:39:14.549654 4065 test.go:18] "Hello from 地球" type="greeting" sender="planet"
// I1213 22:39:14.549661 4065 test.go:19] "Hey 地球" type="greeting" target="planet"
func main() {
defer klog.Flush()
klog.InfoS("Hello 地球", "type", "greeting", "target", "planet")
klog.InfoS("Hello from 地球", "type", "greeting", "sender", "planet")
klog.V(1).InfoS("Hey 地球", "type", "greeting", "target", "planet")
klog.V(2).InfoS("Hey from 地球", "type", "greeting", "sender", "planet")
}
プロフィール
レポジトリ: GitHub
ドキュメント: pkg.go.dev
初コミット: 2018年10月26日
執筆時点での最終リリース: 2021年10月22日 (v2.30.0)
golang/glog
のフォークです。かつてKubernetesではglogを使っていましたが、このissueで議論が行われ、独自にメンテナンスすることになったようです。
Issueで挙げられていた問題とは以下のようなものです。
- Kubernetesでは
github.com/spf13/cobra
などのコマンドラインパーサーを使っていることもあり、flag.Parse()
を呼び忘れることがしばしばある。また、実行時に設定を変更する術がない。 - ファイルにログが出力されるというglogのデフォルトの挙動は、ライブラリのユーザーが通常期待するものではなく、ファイルに書き出したいのであれば明示的に設定するものと考えるだろう。
- もしログを作ることができなければglogは
os.Exit()
を読んでその時点でプロセスを終了してしまう。これはとても危険なことだ。 - glogは書き出されたファイルを管理したりしないので、logrotateのような仕組みが別途なければひたすらファイルが蓄積していくことになる。 (とくにコンテナの中では問題である)
- glogの出力をテストできない。
- 出力先のディレクトリは指定できるが、特定のファイルに出力することができない。
この問題を解消するために、k8s.io/klog
では次のような改善が行われました。
- 実行時に設定を変更するための
InitFlags()
関数をはじめ、 SetOutput() SetOutputBySeverity()LogToStderr()
関数の追加。 (未だ残念なことに実行時に詳細度を設定する関数はありません。) -
go-logr/logr
を経由したログの出力に対応。SetLogger()
を呼び出すことで設定が可能です。 - ログの出力をコントロールするための
LogFilter
インターフェイスとSetLogFilter()
関数の追加。 - 構造化ロギングをサポートする
ErrorS()
InfoS()
関数の追加。 (なぜかWarningS()
はありません。謎。) - その他コマンドラインオプションの改善。 (
-log_file
や-log_file_max_size
オプションなどの追加。)
良いところ・特徴
-
golang/glog
をコンテナ環境で使う上での欠点が解消されている。 - コマンドラインからではなくプログラム的にロガーの設定ができる。
-
golang/glog
とAPIレベルの互換性がある。 - 構造化ロギングに対応している。
-
go-logr/logr
を経由した出力が可能で、自由にロギングの実装を差し替えることができる。
良くないところ
- ドキュメントがない。
- 設定方法がいまだに
flag
パッケージに引きずられている。 - 複数の言語を用いているプロジェクトの場合、他の言語のロギングフレームワークのセマンティクスと異なる部分があり、調整が難しいかもしれない。
Logrus
サンプルコード
package main
import (
"github.com/sirupsen/logrus"
)
// 出力:
// INFO[2021-12-13T22:54:04+09:00] Hello地球
// INFO[2021-12-13T22:54:04+09:00] Hello地球 target=planet
// INFO[2021-12-13T22:54:04+09:00] Hello地球 target=planet
// INFO[2021-12-13T22:54:04+09:00] Goodbye地球 target=planet
// {"level":"info","msg":"Hello again 地球","time":"2021-12-13T22:54:04+09:00"}
func main() {
// テキスト形式で出力する
logrus.SetFormatter(
&logrus.TextFormatter{
FullTimestamp: true,
},
)
// ログレベルがDEBUG以上の場合には出力する
logrus.SetLevel(logrus.DebugLevel)
logrus.Info("Hello", "地球")
logrus.WithFields(
logrus.Fields{
"target": "planet",
},
).Info("Hello", "地球")
contextual := logrus.WithFields(
logrus.Fields{
"target": "planet",
},
)
contextual.Info("Hello", "地球")
contextual.Info("Goodbye", "地球")
// JSON形式で出力する
logrus.SetFormatter(&logrus.JSONFormatter{})
logrus.Infoln("Hello", "again", "地球")
}
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ドキュメント: pkg.go.dev
最初のコミット: 2013年10月17日
執筆時点での最終リリース: 2021年5月9日 (v1.8.1)
Goのロギングライブラリ界の中では老舗でかつもっとも広く使われることになったライブラリです。READMEにあるように、すでにこのライブラリはメンテナンスモードに入っていて、作者自身がZeroLogやZapやApexの利用も提案しています。
機能としてはそつなく構造化ロギングに対応していたり、フォーマッターの実装を差し替えることができたりしますし、ターミナルへの出力時にログエントリに色をつけたりすることもできます。デフォルトでは標準エラー出力にログエントリーを出力するようになっています。グローバルなデフォルトロガーとは別に、ロガーのインスタンスを複数作ることもできます。特徴的なものとしては、フック (Hook
) という仕組みがあり、これを使うとログレベルごとに異なる出力先を指定したり、ログエントリーにフィルターを施したりすることができます。
Zap以降のロギングライブラリのベンチマークでよくサンドバックとして名前が挙げられるぐらい遅さが指摘されることがありますが、実用上問題になることはほとんどないでしょう。とはいえ、速いに越したことはありませんし、あえて今Logrusを選ぶ必要がないのも事実です。
良いところ・特徴
- よく使われている (いた)。
- ドキュメントがよく書かれている。
- 構造化ロギングに対応している。
- JSON形式のフォーマッターがついてくる。
- 他の言語のロギングライブラリと同様のセマンティクスを持ったログレベルを持っている。
良くないところ
- (些細なことですが) デフォルトのフォーマッターが時刻を表示しないところ。
- Zapなどのライブラリと比較して遅い。
Apex
サンプルコード
package main
import (
"github.com/apex/log"
"github.com/apex/log/handlers/json"
"github.com/apex/log/handlers/text"
)
// 出力:
// INFO[0000] Hello 地球
// INFO[0000] Hello 地球 target=planet
// INFO[0000] Hello 地球 target=planet
// INFO[0000] Goodbye 地球 target=planet
// INFO[0000] span
// INFO[0001] span duration=1002
// {"fields":{},"level":"info","timestamp":"2021-12-13T23:47:36.174844+09:00","message":"Hello again 地球"}
func main() {
// テキスト形式で出力する
log.SetHandler(text.Default)
// ログレベルがDEBUG以上の場合には出力する
log.SetLevel(log.DebugLevel)
log.Info("Hello 地球")
log.WithField("target", "planet").Info("Hello 地球")
contextual := log.WithFields(
log.Fields{
"target": "planet",
},
)
contextual.Info("Hello 地球")
contextual.Info("Goodbye 地球")
func() {
defer log.Trace("span").Stop(nil)
time.Sleep(time.Second)
}()
// JSON形式で出力する
log.SetHandler(json.Default)
log.Info("Hello again 地球")
}
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ドキュメント: pkg.go.dev Medium
最初のコミット: 2015年12月22日
執筆時点での最終リリース: 2020年8月18日 (v1.9.0)
Logrus以降、Zap以前に登場したライブラリです。APIはLogrusと非常によく似たものとなっていますが、いくつか異なる特徴もあります。主なものとしては
- 構造化ログを出力する上でより効率的な
WithField()
メソッド。 - ロギングライブラリの中からトレースを考慮した
Trace()
メソッドの提供。
があります。その他の特徴として、出力先のバックエンドを変更可能なHandler
の実装が挙げられます。標準でElasticsearchやAmazon Kinesis用のハンドラーも提供されています。
残念ながらLogrus同様、今となっては積極的に選択する理由はないように思います。
良いところ・特徴
- Logrusとある程度APIの互換性があるのでそのまま置き換えができる。
- 簡易的なトレースに対応している。
- 標準でいくつかのハンドラーが提供されている。
良くないところ
- 標準の
log
パッケージとの互換性がない。 -
text
ハンドラーの実装がひどくWindowsに正しく対応できていない。 (cli
ハンドラーは対応している。) -
text
ハンドラーの時刻のフォーマットを変更できない。
Zap
サンプルコード
package main
import (
"go.uber.org/zap"
"go.uber.org/zap/zapcore"
)
// 出力:
// {"severity":"INFO","timestamp":"2021-12-06T08:22:45.9488001+09:00","go.uber.org/zap/caller":"test.go:47","permanent":"value","type":"greeting","target":"planet"}
// {"severity":"ERROR","timestamp":"2021-12-06T08:22:45.9488664+09:00","go.uber.org/zap/caller":"test.go:56","permanent":"value","type":"greeting","target":"planet","go.uber.org/zap/stacktrace":"main.main\n\t/home/moriyoshi/src/zap-test/test.go:56\nruntime.main\n\t/home/moriyoshi/opt/go-1.17.3/src/runtime/proc.go:255"}
// {"severity":"FATAL","timestamp":"2021-12-06T08:22:45.9488874+09:00","go.uber.org/zap/caller":"zap/test.go:63","permanent":"value","type":"greeting","target":"planet","go.uber.org/zap/stacktrace":"main.main\n\t/home/moriyoshi/src/zap-test/test.go:63\nruntime.main\n\t/home/moriyoshi/opt/go-1.17.3/src/runtime/proc.go:255"}
// exit status 1
func main() {
// クイックに使うのであれば
// logger := zap.NewDevelopmentConfig()
// などとすればいい
// 手でconfigをビルドする場合
logger, err := zap.Config{
Level: zap.NewAtomicLevelAt(zap.DebugLevel),
Development: true,
Encoding: "json",
EncoderConfig: zapcore.EncoderConfig{
TimeKey: "timestamp",
LevelKey: "severity",
NameKey: "go.uber.org/zap/logger",
CallerKey: "go.uber.org/zap/caller",
FunctionKey: zapcore.OmitKey,
StacktraceKey: "go.uber.org/zap/stacktrace",
LineEnding: zapcore.DefaultLineEnding,
EncodeLevel: zapcore.CapitalLevelEncoder,
EncodeTime: zapcore.RFC3339NanoTimeEncoder,
EncodeDuration: zapcore.SecondsDurationEncoder,
EncodeCaller: zapcore.ShortCallerEncoder,
},
OutputPaths: []string{"stderr"},
ErrorOutputPaths: []string{"stderr"},
}.Build(
zap.AddCaller(),
zap.Fields(
zap.String("permanent", "value"),
),
)
if err != nil {
panic(err)
}
defer logger.Sync()
logger.Info(
"Hello 地球",
zap.String("type", "greeting"),
zap.String("target", "planet"),
)
sugaredLogger := logger.Sugar()
// sugaredLoggerは少しだけ遅いが記述量は減る
sugaredLogger.Errorw(
"Hey 地球",
"type", "greeting",
"target", "planet",
)
// Fatalを呼び出すとスタックトレースを出力してプロセスは終了する
logger.Fatal(
"Goodbye 地球",
zap.String("type", "greeting"),
zap.String("target", "planet"),
)
}
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ドキュメント: pkg.go.dev
最初のコミット: 2016年2月20日
執筆時点での最終リリース: 2021年9月9日
このライブラリの特徴は、なんといっても速さです。メモリアロケーションを最小限に止めるために独自にJSONのエンコーダーを実装するなどして、いくつかのケースではゼロアロケーションを達成できています。ロガーの実装としては、記述は最低限になるが低速なSugaredLogger
と、記述量は若干増えますが高速なLogger
が提供されています。他のロギングライブラリと違い、グローバルなデフォルトロガーは提供されていませんが、RedirectStdLog
関数を呼び出すことで、標準のlog
パッケージのログエントリーをZapに流すことができます。
フォーマッターの設定は、Config
構造体に値を設定しBuild()
メソッドを呼ぶことによって行います。JSON形式やテキスト形式など根本的なログ形式を設定するにはConfig.Encoding
にエンコーダー名を指定し、個々の要素の表現形式を指定するにはConfig.EncoderConfig
を変更します。標準ではEncoding
に指定できるエンコーダー名としてはjson
とconsole
の2種類がありますが、完全にカスタマイズしたエンコーダーを使いたい場合はEncoder
インターフェイスを実装するオブジェクトを返す関数をRegisterEncoder
で登録することで行います。ログレベルや時刻といった要素のエンコーダーはそれぞれEncoderConfig
構造体のEncodeLevel
EncodeTime
を変更することで可能です。
Logrusと似たようなフック機構があり、以下のようにしてフック関数を登録するとログエントリーが書き込まれる直前に何らかの処理を実行することが可能です。しかし、Logrusと違ってログエントリーを表すEntry
構造体そのものに手を加えることはできません。ドキュメントにもありますが、エントリーに手を加える場合にはzapcore.Core
を実装して差し替えることになります。
// ログレベルごとに出力数を数える例
var mu sync.Mutex
count := make(map[zapcore.Level]int)
newLogger := logger.WithOptions(
// `zap.Hooks()`は`Option`のビルダー関数なので、`Config.Build()`関数の引数に渡してもよいです
zap.Hooks(
func(e zapcore.Entry) error {
// ログの出力の都度呼ばれます
mu.Lock()
count[e.Level] += 1
mu.Unlock()
return nil
},
),
)
上記以外に実践的な機能としては条件サンプリングが挙げられます。条件サンプリングとは、与えられた条件を満たす場合のみログエントリーの出力を行うというもので、高頻度にログの書き出しが発生しパフォーマンス上影響が出るような状況で有用です。サンプリングの設定はConfig
構造体に行います。
logger, err := zap.Config{
Level: zap.NewAtomicLevelAt(zap.DebugLevel),
Development: true,
Encoding: "json",
EncoderConfig: zapcore.EncoderConfig{...}, // ...の部分は省略を表しています
Sampling: &SamlingConfig{
Initial: 50, // 最初の50エントリーをすべて出力するが
Thereafter: 10, // 以降は10エントリーおきに出力する
},
OutputPaths: []string{"stderr"},
ErrorOutputPaths: []string{"stderr"},
}.Build(...) // ...の部分は省略を表しています
良いところ・特徴
- とにかく速い。
- 構造化ロギングを初めから見据えたAPIとなっている。
- フォーマッターのカスタマイズ性が高い。
- 条件サンプリングに対応している。
- ドキュメントがある程度充実している。
良くないところ
- もしプリセットのロガーの設定 (
NewExampleConfig()
NewDevelopmentConfig()
NewProductionConfig()
) を用いない場合はConfig
構造体を利用者が組み立てる必要があるが、項目が多く煩雑である。 - 色付きの出力の実現が雑にANSIエスケープシーケンスを出すだけとなっている。Windowsに対応したい場合はmattn/go-colorableを利用する必要がある。
ZeroLog
サンプルコード
package main
import (
"github.com/rs/zerolog/log"
)
// 出力
// {"level":"info","type":"greeting","target":"planet","time":"2021-12-06T20:27:36+09:00","message":"Hello 地球"}
// {"type":"greeting","target":"planet","time":"2021-12-06T20:27:36+09:00","message":"Hello 地球"}
// {"level":"fatal","time":"2021-12-06T20:27:36+09:00","message":"Goodbye 地球"}
// exit status 1
func main() {
log.Info().Str(
"type", "greeting",
).Str(
"target", "planet",
).Msg(
"Hello 地球",
)
ev := log.Log().Fields(
[]interface{}{
"type", "greeting",
},
)
ev.Str("target", "planet").Msg("Hello 地球")
// Fatalを呼び出すとスタックトレースを出力してプロセスは終了する
log.Fatal().Msg("Goodbye 地球")
}
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ドキュメント: pkg.go.dev
最初のコミット: 2017年5月14日
執筆時点での最終リリース: 2021年11月2日 (v1.26.0) ※Twitterで誤認を指摘いただきました。ありがとうございました。
Zap以降に開発されたライブラリで最も利用されているものがこのZeroLogと言えるでしょう。もうZapでいいじゃないかと言わせない魅力がこのライブラリにはあります。Zapは機能が豊富ですが、ロガーを使い始めるまでにかなりの手続きを踏む必要がありました。ZeroLogはZapほどの機能は備えていませんが、ほとんどのユースケースで必要十分と思われるずっとシンプルなAPIを提供しています。Zapにはなかったグローバルのデフォルトロガーも提供されています。Hookやサンプラーといった機構もあります。
Zapと大きく思想的に異なるのは、ログエントリーの組み立てに可変引数の代わりにメソッドチェインを用いるところです。Goの言語的な特徴から、メソッドチェインはは可読性が低くなりがちではあるので、この部分はかなり好みが分かれるところでしょう。
事情は分かりませんが、他のロギングライブラリと違い、CBOR形式での出力を行えるフォーマッターが標準で提供されています。
良いところ・特徴
- 標準の
log
パッケージと一部互換性がある。 - おおむね速い。
- 構造化ロギングを初めから見据えたAPIとなっている。
- メソッドチェインを使ってログエントリーを組み立てるところ。
- 詳細なドキュメントが不要なくらいAPIがシンプル。
- グローバルのデフォルトロガーがある。
- 条件サンプリングに対応している。
- Zapよりもフットプリントが小さい。
- Debugレベルの下のログレベルとしてTraceが定義されている。
良くないところ
- フォーマッターのカスタマイズ性が低い。
- フォーマッター以外にも細かい設定がZapほどはできない。
- メソッドチェインを使うところ。
RipZap
サンプルコード
package main
import (
"github.com/skerkour/rz"
"github.com/skerkour/rz/log"
)
// 出力:
// {"level":"info","type":"greeting","target":"planet","timestamp":"2021-12-06T11:42:11Z","message":"Hello 地球"}
// {"level":"info","type":"greeting","target":"planet","timestamp":"2021-12-06T11:42:11Z","message":"Hello 地球"}
func main() {
log.Info(
"Hello 地球",
rz.String("type", "greeting"),
rz.String("target", "planet"),
)
log.SetLogger(
log.With(
rz.Fields(
rz.String("type", "greeting"),
rz.String("target", "planet"),
),
),
)
log.Info("Hello 地球")
}
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ドキュメント: pkg.go.dev
最初のコミット: 2018年7月24日
執筆時点での最終リリース: 2021年8月11日 (v1.0.1)
もともと作者は匿名性の高い活動を bloom42 (a.k.a. z0mbie42) のハンドルで行っていて、 github.com/bloom42/rz-go
というレポジトリでリリースしていたのですが、ある時から諸事情があったらしく本名で活動するようになり、その際にGitHubアカウントもレポジトリも github.com/skerkour/rz
に移動したという経緯があります。なので、現状fork数もstar数もとても少ないですが、それなりに使われてはいます。
ZapやZeroLog同様Hookやサンプラーのインターフェイスも備えています。
良いところ・特徴
- Zapスタイルのフィールド指定方法が扱えながら、ZeroLogのようなグローバルのデフォルトロガーが提供されている、いいところ取り感。
- ベンチマークが行われており、ZapやZeroLogに匹敵する速度で動作する。
- フォーマッターの差し替えが可能。
良くないところ
-
github.com/bloom42/rz-go
からレポジトリの変更が行われた際にバージョンのリセットが行われてしまい、v2.6.1をv1.0.0にするという蛮行が行われたので、すんなりgo get
(なりgo mod tidy
なり) で入らなくなってしまった。 - console用フォーマッターが雑にANSIエスケープシーケンスを出力しているのでWindowsに対応したい場合はmattn/go-colorableを利用する必要がある。
go-logr/logr
サンプルコード
package main
import (
"github.com/go-logr/logr"
"github.com/go-logr/zapr"
"github.com/go-logr/zerologr"
zerolog_log "github.com/rs/zerolog/log"
"go.uber.org/zap"
)
// {"level":"debug","msg":"Hello 地球","type":"greeting","target":"planet"}
// {"level":"debug","v":1,"type":"greeting","target":"planet","time":"2021-12-06T21:21:31+09:00","message":"Hello 地球"}
// {"level":"trace","v":2,"type":"greeting","target":"lands","time":"2021-12-06T21:21:31+09:00","message":"Hello 世界"}
func main() {
var log logr.Logger
log = zapr.NewLogger(zap.NewExample())
log.V(1).Info(
"Hello 地球",
"type", "greeting",
"target", "planet",
)
log.V(2).Info(
"Hello 世界",
"type", "greeting",
"target", "lands",
)
log = zerologr.New(&zerolog_log.Logger)
log.V(1).Info(
"Hello 地球",
"type", "greeting",
"target", "planet",
)
log.V(2).Info(
"Hello 世界",
"type", "greeting",
"target", "lands",
)
}
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ドキュメント: pkg.go.dev
最初のコミット: 2016年8月16日
執筆時点での最終リリース: 2021年12月13日
Kubernetesなどのプロジェクトにコントリビュートしており、執筆現在Googleに在籍しているTim Hockin氏によって作られた実装中立の、ロギングのインターフェイスを規定するライブラリです。実際にログを出力するためには、提供されているバックエンドの実装を通じて logr.Logger
を生成して利用することになります。 (2021/12/15追記:はてブロのコメント欄により純粋なインターフェイス型ではない旨をご教示いただきましたので、文言を修正しました。)
ログのセマンティクスはglogを強く反映したものになっており、ログの深刻度と詳細度を伴ってログエントリーを出力するというものになっています。ですが、このためにバックエンドとのインピーダンスマッチングが必要となっており、ポリシーががバックエンドごとにまちまちなのもあり、ログレベルベースのバックエンド実装との利用には多少の使いづらさがあります。自作のライブラリの中でロギングを行いたく、glogのセマンティクスが好きであれば、このライブラリを使うべきでしょう。
良いところ・特徴
- ロギングライブラリの実装に対して中立なインターフェイスを使って構造化ロギングが可能。
良くないところ
- バックエンドがログレベル付きのロギングに対応していても、ライブラリに強い思想が反映されているためマッピングを考慮しなければならない。
まとめ
特に強い思想がなければklogかZap以降のロギングライブラリを選んでおくのがよろしいかと思います。個人的にはRipZapを最近は使っています。
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