TypeLab 2023 に登壇して書体関連のツールを OSS として公開しました
こんにちは。株式会社モリサワで働いている藤です。
書体 (フォント) を制作する部門で、いわゆるフォントエンジニアと呼ばれる仕事をしています。書体制作のお仕事を、技術面からサポートする仕事といえば良いでしょうか。
今回は、Typographics 2023 TypeLab で発表をする機会に恵まれました。その内容をかいつまんで報告しつつ、あまり知られていないお仕事の一旦を知ってもらえたらと思っています。
お知らせ: OSS はじめます
このたび、書体制作プロセスで社内開発したツールを広く共有する場として、GitHub のレポジトリを公開しました:
👉 https://github.com/morisawa-inc
ふだん、我々は GitHub で公開されているコミュニティベースで開発されたツールを業務に利用しています。が、一方的に利用するだけではなく、社内開発したツールを共有し、コミュニティに還元していきたいと考えています。
単にツールを公開するだけに留まらず、既存 OSS プロダクトへの PR や Issue の起票といった OSS 活動を推進すべく、サイボウズさんの事例を参考に、OSS ポリシーを社内で策定しました。OSS への貢献活動を活発に進めていく上で、その第一歩となる試みです。
この取り組みについて Contributing back to community: benefits of open-sourcing in-house tools のタイトルでカンファレンスでお話しさせていただきました。今回のセッションの録画は、こちらからご覧になれます。
そもそも、フォントエンジニアって?
なにか定着した定義があるわけではなく、業務の幅は広いのですが
- 機能面 (GSUB/GPOS) でのフォントの設計
- ツール制作による生産性向上と問題解決
- フォントのビルド作業とインフラ整備
- 顧客要求に沿ったカスタマイズ/納品/サポート
- 異なるフォントフォーマットのハンドリング
- トラブルシューティング
- データ管理
などといった、裏側の仕事が多いです。この業界では Python が主流で、日常的なタスクは既存の OSS のツールを組み合わせて済ませることが多くなっています。
また、CI 環境でフォントのビルドを行う都合で、Makefile を書いたりもしますし、最近では GitHub Actions のワークフローも書いているメンバーがいます。この辺りは、ゲーム/映像業界における、パイプラインエンジニアに近いでしょうか。
...とは説明してみるものの、実際にどういう仕事をしているのか、どういう問題を扱っているのか、なかなか想像しづらいと思います。その意味でも、今回、GitHub で内製ツールのレポジトリを公開することで、具体的に知ってもらう機会になればと思っています。
最近ではデザイナーさんも Python を書くことが奨励されてきていて、実際にプロジェクトごとに柔軟に自動化タスクを進めてくださっているプロジェクトもあり、技術職とデザイナー職の垣根は低くなってきています。また、エンジニア側にも、デザイナーの業務や想いを理解し、お互いに良い着地点を探りながら提案することが求められます。相互理解、非常に大事です。
Typographics 2023 TypeLab とは?
Typographics は毎年ニューヨークで開催される、国際的な書体業界のカンファレンスです。芸術系の大学である Cooper Union が運営しているタイポグラフィ専門の教育機関 Type@Cooper が主催です。
基本的には書体業界やグラフィック業界向けのカンファレンスですが、これに TypeLab という技術系のイベントが併催されているのが特徴です。
タイムゾーンで Americas/Europe/Asia の 3 つに分けられており、私は 2 日目の TypeLab Asia のトラックでお時間をいただいてお話しさせていただきました。
発表について
プレゼンは英語でした。リモート開催ということもあり、事前に録画した動画が使えたのに若干救われましたが、改善の余地がしこたまありそうです。
今回の発表にあわせて公開したレポジトリは、ほとんどが Glyphs 用のプラグインでした。現在、社内では Glyphs をメインのフォントエディタとしています。Illustrator のようなドローツールに近い操作感ですが、フォントの制作に特化しています。また Word/Excel における VBA のように、スクリプトやプラグインを作ることで、機能を拡張したり、操作を自動化できます。毎日使う道具なので、なるべく生産性が上がるよう、定型作業については手違いが起こらないよう、工夫をしています。
過程で生まれた書体制作のツールを公開することは「減るもんじゃない」ので、公開することはコミュニティにとっても自社にとってもプラスになると判断しています。これから、このような発信の機会をなるべく増やしていけたらと考えています。
おわりに
少し宣伝っぽくなってしまいましたが、OSS 活動を推進する取り組みを紹介させていただきました。今後、社内で盛り上げていけたらと思っています!
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