📗

開発合宿と技術同人誌即売会への企業出展にシナジーを見出した話

2024/12/02に公開

こんにちは、なかざんです。この記事はモニクルAdvent Calendar 2024の2日目です。昨日はgabuの39歳のリアルでした。

https://gabu.hatenablog.com/entry/startup-and-life-39engineer

はじめに

さて、開発組織を運営する目的の本筋は、開発という行為によって事業に貢献することですよね。「売上は全てを癒す」という格言もあるくらいなので、売上を立てるために事業に貢献するよりも大事なことはなかなかないでしょう。

とはいっても、ビジネスの方向だけを向き続けていれば組織が回るかというと、そういうわけでもありません。開発組織の働きを維持・強化するためには、普段の業務とは違った角度で共同作業を行う機会を用意してチームのコラボレーションを強化したり、採用活動によって仲間を増やしたりと、開発組織が事業に貢献する質や量を増やすための施策を行うこともあります。

そのような活動の中でも、本記事では「開発合宿」と「技術同人誌即売会への企業出展」という2つの施策を組み合わせて実施するスキームについて取り上げます。これらのシナジーにより、開発組織の活性化や技術広報活動の強化、そして社内への説明しやすさについて一定の効果が得られました。個別の施策で課題を感じている人々の参考になれば幸いです。

想定読者

  • 開発合宿の成果について説明責任がある人
  • 技術同人誌即売会へ自社の開発組織で出展してみたいが、どう説明すればいいか悩んでいる人

開発合宿のとある課題

まずは、開発合宿の課題感について考えてみます。会社によってはレクリエーションや慰安旅行としての側面を持たせることもあるかと思いますが、開発 合宿なので、基本的には何かしらの開発作業を伴う活動を行う施策です。弊社モニクルのように、開発組織まるごと常時リモートワークで運営している組織では、直接会って作業を行う機会が少ないため、開発合宿は単純接触を増やしつつお互いの信頼貯金を貯められる、貴重なチームビルディングの機会となります。

さて、開発合宿の事前準備や当日の進行方法など、開発合宿の参加者たちにとって実りある合宿にするための工夫についても課題はいくつもありますが、本記事では少し後のことを考えて、 合宿の成果をどう説明するか に焦点を当ててみます。

合宿の成果をどう説明するか

多くのケースで、開発合宿の宿泊費や交通費は会社が負担していると思います。一般的な用語でいえば研修旅行としての側面が強いものになるでしょうか。楽しい思い出ばかりが思い出されるかもしれませんが、立派な業務です。

業務であるということは、大なり小なりの成果報告が必要です。合宿から帰ってきたら、何か新しいシステムを作ってみたとか、普段触っていないシステムへの理解が深まって各サービスのメンテナンスに参加できる人員が増えたとか、そういった成果を社内に向けて発信しているはずです。細かい内容は合宿の企画内容によって異なるでしょうけれども、合宿の成果を社内に向けて発信することは、次の合宿の予算を確保するためにも重要なことです。

ここで問い掛けたいのが「成果報告としてのスキームに収めてしまうと、物足りなさを感じませんか?」ということです。合宿で過ごした濃厚な時間から得られたものは、15分や30分の社内プレゼンで伝え切れるものではありません。仲間と相談しながら試行錯誤したプロセスにも価値がありますし、デザイナーとソフトウェアエンジニアで分担して同時進行で作業を進める際のクリティカルパスの置き方にも工夫があります。そういった過程から得られる成果は、なかなか通常の成果報告には載りづらいものです。

より濃厚に、詳細に、合宿で得たものをアウトプットする方法が欲しくなってきます。

ブログ記事を書くのが常套手段だが……

よくある方法として、会社ブログに合宿レポートの記事を書く手があります。実際に、モニクルでも2023年に開催した合宿の報告を記事にしました。

https://media.monicle.co.jp/articles/culture-202309-01

他社でもよく見かける方法ですよね。実際に、社内外で多くの人に読んでもらえたため、手応えのあるアウトプットでした。

ただ、上記の記事では個別の取り組みについては薄味になってしまった反省もあります。ブログ記事というフォーマットは広く伝えるのには向いているものの、真っ当に読ませる記事を書こうとすると4000字とか5000字程度に収めることになってしまいます。2万字や3万字といった分量の記事を書くのは、一般的にはあまり正気の沙汰ではないようです(諸説ありますし僕もたまにやらかします)。

もっと濃密なアウトプットが許される場が欲しい 、という課題を筆者は感じていました。

技術広報のとある課題

開発組織が事業に貢献するにあたっての質と量を高めるための手段として、技術広報もまた重要な施策です。筆者も社外で情報発信を行う機会が多いことから、広報部門の同僚と話す機会が多いのですが、よく耳にするのが「まず知ってもらう」という言葉です。

いわゆる単純接触効果の話題にもなってくるのですが、社名を見かけた時の反応として「名前も聞いたことがない会社」と「最近よく名前を聞く会社」では、後者の方が好意的に話を見てもらえやすいというのは、なんとなくわかる気がします。社名を知っている人を増やす、という方針は、広報活動の有効な戦略のひとつといえるでしょう。できれば組織の雰囲気や事業についても知ってくれていれば、さらに効果的です。

この「知っている人を増やす」という目的を達成するためには、着手済みの取り組みを強化する他に、いわゆる チャンネルを増やす という方法も有効です。これまでの発信方法では届かなかった層にリーチすることで、大きく知名度を上げることができる可能性があります。

そのため、一般論としても、広報活動においては 有効な層にリーチするための新たなチャンネルを開拓する のはひとつの課題といえるでしょう。

「技術同人誌に開発合宿の成果報告を書いてサークル出展する」というソリューション

というわけで、これらの課題を同時に解決するための施策として、 技術同人誌即売会への企業出展 という方法を提案します。開発合宿のあれやこれやを書いた技術同人誌を作って、イベントに出展して頒布しちゃおう、ということですね。この施策は次の2点がアツいと思っています。

  • 開発合宿で取り組んだ技術について解説することで、社内メンバーのレベル感や興味関心を知ってもらえる
  • 「技術同人誌即売会に来る層」というそれなりに熱量がある層にリーチできる

これまで書いてきた課題に対して、多少なりの解を提供できているのではないでしょうか。こういった語り口で社内の各方面を巻き込み、実際の出展まで漕ぎ着けることができました。

https://media.monicle.co.jp/articles/news-202410-02
https://media.monicle.co.jp/articles/blog-202411-01

実は筆者自身は(イベント側の運営スタッフをやっていたのもあって)そこまで実作業にコミットできなかったのですが、同僚たちが頑張ってくれて、本ができたり掲示物を作っていきました。

技術広報の文脈で社内を巻き込んでいったのもあって、会社のお金を使って出展準備をしていくのがなかなか新鮮でした。普段、筆者が個人サークルで印刷費の捻出に苦労していることを考えると、嬉しさと羨ましさが入り混じる感情です。

技術同人誌にしやすい開発合宿だった

今回の開発合宿の内容がたまたま技術同人誌に向いている内容だった、という側面は否めないので、そこにも触れておきます。

2024年の開発合宿では、開発部がいくつかのチームに分かれて好きなテーマに取り組む、というスタイルで合宿を行いました。そのため、多くのチームでテーマを「普段の業務では使う機会のない尖った技術」に寄せていく傾向があったんですね。RustやらAI生成やらCloudflareやらReact Nativeやらデータ分析やらと、キーワードだけを見ればなかなかキャッチーなものが並びました。この偏りは、技術同人誌の企画としては非常に魅力的なものです。

通常業務の中で使っている技術について情報発信するのは素晴らしいことですし、実務の中で叩き上げられた深い知見を得られる素晴らしい記事もたくさんあります。その一方で、実務で扱う技術は面白さを軸に選んでいるわけではないので、より耳目を集める企画として考えた場合には、都合の良いテーマにならないことも多々あります。

「モニクル開発部のことを知ってほしい」をテーマのひとつとして考えた場合に、技術分野を並べただけで一定のキャッチーさを担保できた今回の開発合宿は、技術同人誌にしやすい内容だったと言えるでしょう。

今回は初めてだったこともあって、開発合宿の全チームに記事を書いてもらいましたが、やはり同人誌化の向き不向きはありました。また来年の合宿でも全チームに書いてもらおうとすると、同人誌にしやすいテーマ選びをするバイアスがかかってしまいそうで、それは本意ではありません。バリバリにConfidentialな情報を扱うチームもいてほしい。なので、次の合宿では2チーム程度を執筆枠として確保して、他のチームは自由にやってもらえると良いのかなと妄想しています。合宿と関係ない記事を寄稿したい人もいるでしょうしね。

技術書典に企業として出展する場合の注意点

ここまで順風満帆な雰囲気の記事を書いてきましたが、個人出展が基本となるイベントに、企業が広報のニュアンスを伴って出展する場合、注意点がありますので、今回参加した技術書典の事例をもとに紹介します。

基本的に、技術書典は推しの技術を発表して同好の士を見つける場であり、本来は企業の広報活動・宣伝活動を行うための場ではありません。今回のモニクル開発部のように、技術同人誌の頒布するだけでなく、会社名をアピールするための掲示物を置くような宣伝行為を行う場合は、所定の協賛プランに申し込むなど、運営側との調整が必要です。各イベントの出展要項で、次のように企業出展に関するルールが明記されているので、それをよく読んでから出展を検討するようにしましょう。

モニクルは技術書典17でブロンズスポンサーとして協賛していたため、ブースに宣伝要素を盛り込むことができました。

読者の方で本記事を参考にした施策を検討する場合は、イベント協賛も合わせて検討することをお勧めします。筆者は技術書典の運営スタッフですが、回し者ではないんです。企業の色を強く出して出展したいなら協賛しといたほうが後で揉めないで済むんです。たぶん。きっと。メイビー。

まとめ

というわけで、開発合宿とアウトプットをもとめての技術書典への企業出展に技術広報をひとつまみ加えると、シナジーがあるんじゃないかという話でした。

元々は「開発合宿レポートネタで技術同人誌を出したい!」というジャストアイデアからスタートした企画だったのですが、誰をどう巻き込んだら筋が通るか考えていたら、技術広報の困りごとと繋げたら巻き込みやすいことに気がついたのでした。

開発合宿でなくても「もっとしっかり社内外にアウトプットしたい」と燻っている施策があれば、成果報告書の代わりに技術同人誌を作ってみるのもいいかもしれません。あなたの会社の仲間たちが熱意を持って取り組んだことなら、それを広く伝える機会を作ることは、きっと会社の活性化につながるはずです。

株式会社モニクル

Discussion