[3GPP][4G][EPC]モバイルネットワークのEPCについて解説 - Architecture & Functional編
Purpose
前々から思ってたが、モバイルネットワーク関連の情報はあまり発信されていない(需要がない?)、その影響で新しく入る人に対して大きな壁が出来ており、新人の立ち上がりには時間を要します。この問題を解消する為に新しくこの業界に携わる人に向けて今更ながらEPCの解説します。
Architecture
EPCと呼称されるコンポーネントはMME、SGW、PGWの3つです。
EPCにeNBからアクセスすることで様々な通信サービスを実現することができるます。
以下のアーキテクチャで基本的なデータ通信は行うことができます。
SMSやVoLTE等のサービスについては今回の説明では省きますがIMSと呼ばれるアーキテクチャが必要です。(今度記事書きます)
赤色のコンポーネントでユーザの制御(コントロールプレーン)を担当し、青色のコンポーネントでユーザプレーン(データ通信や音声通信等)を処理します。緑色のeNodeBは両方の処理を担っています。
Figure 4.2.1-1: Non-roaming architecture for 3GPP accesses[1]
Component
各コンポーネントの説明についてはざっとしか記載しないので読み飛ばして問題ないです。
詳細な情報が知りたい人は3GPP[3]を参照してください。
Definitions
-
UE (User equipment)
ユーザが保持している携帯電話のことです。
3GPPではUEと定義されており、この記事でもUEと記載します。
他にもIoT端末でモバイルネットワークとつながる端末はUEと呼称されます。 -
eNodeB
携帯電話事業者が街頭などに設置している基地局です。
ユーザがもつUEはインターネットに通信を行う前にまずeNodeBにつながります。 -
MME (Mobility Management Entity)
無線区間と有線区間のエンドポイント的な役割を担っています。
MMEが全国各所にあるeNodeBから来る信号を受け付けてシステム内部へと転送していきます。 -
HSS (Home Subscriber Server)
契約者の情報やユーザの位置情報が格納されています。 -
EIR (Equipment Identity Register)
UEに付与される固有のIMEIと呼ばれる番号があり、その番号を認証しています。あとはSV -
SGW (Serving Gateway)
ユーザが通信で使用するセッション、ベアラ等のトンネル管理を行います。
図ではSGW-CとSGW-Uに分割されていますが元は一つのコンポーネントでした。
5Gの仕様検討が進む中でコントロールプレーンとユーザプレーンは分割したほうがUXが向上すると判断された為、アーキテクチャに変更が入りSGW-CとSGW-Uに分割されています。 -
PGW (PDN(Packet Data Network) Gateway)
UEが使用するIPアドレスの割当、QoS制御、SGWにパケット転送を行うゲートウェイです。
SGWと同様の理由でPGW-CとPGW-Uに分割されています。 -
PCRF (Policy and Charging Function)
そのユーザが使用できる帯域、速度をPGWに伝えます。
月のパケット使用量が契約した量を超えたときに速度制限をかけるのはコイツのお仕事です。
Functional
EPCの主要の機能を説明しようとすると記事が膨れ上がってしますので、私が大事だと思っているPDNとEPS Bearerをピックアップして説明したいと思います。
PDN connectivity service
EPCは、UEとPLMNの外部パケットデータネットワークとの間の接続を提供します。
これは、PDN connectivity serviceと呼ばれます。
IP PDN接続サービスは、1つまたは複数のService Data Flows(SDF)で構成されるtraffic flow aggregateの伝送をサポートします。
EPS Bearer
EPS Bearerには2種類ありますがこの記事ではGTP-BasedのEPS Bearerを解説します。
- EPCへのE-UTRANアクセスでは、PDN接続サービスはEPS Bearerによって提供される。
- ユーザープレーン(S1-U)がData trafficに使用される場合、EPS BearerはUEとPGW間で共通のQoS処理を受けるトラフィックフローを一意に識別する。
- NAS手順でシグナリングされたパケットフィルターは、PDN接続ごとに一意のパケットフィルター識別子と関連付ける。
- EPS Bearerは、EPC/E-UTRANにおけるBearer LevelのQoS制御のための粒度である。
- つまり、同じEPS Bearerにマッピングされたすべてのtrafficは、同じBearer Levelのパケット転送処理を受けます(cheduling policy, queue management policy, rate shaping policy, RLC configuration, etc.)
- 異なるBearer Levelのパケット転送処理を提供するには個別のEPS Bearerが必要です
Default/Dedicated Bearer
- UEがPDNに接続する際に1つのEPS Bearerが確立され
- PDN接続の存続期間を通じてそのBearerが確立され
- UEにそのPDNへの常時接続を提供します。このBearerはDefault Bearerと呼ばれます
- 同じPDN接続のために確立される追加のEPS BearerはDedicated Bearerと呼ばれます
Traffic flow template(TFT)
- EPS BearerのTFTはそのEPS Bearerに関連するすべてのパケットフィルタの集合である
- Uplink TFT(ULTFT)はTFT内のUplinkパケットフィルタのセットである
- Downlink TFT(DLTFT)はTFT内のDownlink パケットフィルタのセットである
- すべてのDedicated EPS BearerはTFTと関連付けられている。
- TFTはDefault EPS Bearerにも割り当てられることがあります。
- UEは、ULTFTを使用してトラフィックをUplink方向のEPS Bearerへマッピングします。
- PCEF(PGWの課金周りでの別称)またはBBERF(SGWの課金周りでの別称)は、トラフィックをDownlink方向のEPS BearerへマッピングするためにDLTFTを使用します。
- UEは、ULTFTおよびDLTFTを使用してEPS Bearerのアクティブ化または変更手順をアプリケーションおよびアプリケーションのトラフィックフローアグリゲートに関連付けることができます。
- したがって、PGWは、Dedicated BearerへのCreate Bearer RequestおよびUpdate Bearer Requestメッセージにおいて、利用可能なすべてのTFT Information(送信元および送信先IPアドレス、ポート番号、プロトコル情報など)を提供するものとします。
- TFTおよびTFTの動作に関するさらなる詳細は、3GPPを参照してください[4][5][6]
- Downlink方向のEPS Bearer TFTは、単方向トラフィックフローに対応するDLパケットフィルタおよび有用なパケットフローを効果的に排除するULパケットフィルタに関連付けられます
- UEは、EPS Bearerに割り当てられたTFT内のUplinkパケットフィルタに基づいて、Uplink パケットを異なるEPS Bearerにルーティングします[7]
- UEは一致するかまず、すべてのTFTの中で評価優先順位が最も低いUplinkパケットフィルタを評価し、一致しない場合は、評価優先順位の高い順にUplink パケットフィルタの評価を進める
- この手順は一致するものが見つかるかすべてのUplinkパケットフィルタが評価されるまで実行されるものとする
- 一致するものが見つかった場合、Uplink データパケットは一致するUplink パケットフィルタのTFTに関連付けられたEPS Bearerで送信される
- 一致するものがない場合、Uplink データパケットはどのUplinkパケットフィルタも割り当てられていないEPS Bearerを経由して送信されること
- すべてのEPS Bearer(そのPDNのデフォルトEPS Bearerを含む)に1つ以上のUplink パケットフィルターが割り当てられている場合、UEはUplinkデータパケットを破棄するものとする
- Uplink パケットフィルタなしで最大1つのEPS Bearerが存在することを保証するために、PCEFまたはBBERFは、PDN接続のTFT設定に対して有効状態を維持します
- また、必要に応じてUplink方向の有用なパケットフローを効果的に禁止するパケットフィルタをDedicated BearerのTFTに追加します[8]
Bearer Level QoS
- Default BearerのBearer Level QoSパラメータの初期値は加入者データに基づいてネットワークによって割り当てられます(E-UTRANでは、MMEがHSSから取得した加入データに基づいてそれらの初期値を設定します)
- ローミング以外のシナリオでは、PCEFはPCRFとの対話に基づいてまたはローカルな構成に基づいて、MMEから受信したQoSパラメータ値を変更することができる
- PCEFがそれらの値を変更した場合、MMEはDefault Bearerの確立または変更時に、S11 Reference point上で受信したBearer Level QoSパラメータ値を使用するものとする
- ローミングシナリオでは、ローカル構成に基づいてMMEはARPまたはAPN-AMBRをダウングレードし、またはHSSから受信したQCIパラメータ値をMMEでローカルに構成された値に再マップすることができる(例えば、HSSから受信した値が訪問先のPLMNが提供するサービスに準拠しない場合)
- PCEFは、PCRFとの対話に基づいてまたはローカルな設定に基づいてMMEから受信したQoSパラメータ値を変更することができる。あるいはPCEFはBearer確立を拒否してもよい
- MMEは、Default BearerまたはDedicated Bearerの確立または変更中に、S11 Reference pointで受信したBearer Level QoSパラメータ値を変更してはなりません
- その結果、Default BearerまたはDedicated Bearerの確立/変更中にE-UTRANとEPCの間で行われるQoS negotiationはサポートされません
- GTPベースのS8 Roaming interfaceを介してPCEFから送信されたBearer Level QoSパラメータ値がローミング契約に準拠していない場合、ローカル構成に基づいてMMEはDefaultまたはDedicated Bearerの確立または変更を拒否することができます
- Default BearerとDedicated Bearerの区別は、E-UTRANに対して透過的である必要があります
- EPS Bearerに関連付けられたGBR(GuaranteedBitRate)値に関連するdedicated network resourceがBearerの確立/変更時に恒久的に割り当てられる場合、EPS BearerはGBR Bearerと呼ばれます
- それ以外の場合、EPS Bearerは非GBR Bearerと呼ばれます。
- Dedicated Bearerは、GBR BearerまたはNon-GBR Bearerのいずれかとすることができる
- Default Bearerは、Non-GBR Bearerとする。
Figure 4.7.2.2-1: Two Unicast EPS bearers (GTP-based S5/S8)
Summary
EPS Bearerは以下の要素によって実現される
- UEでは、UL TFTがtraffic flow aggregateをUplink方向の EPS Bearerにマッピングします
- PGWではDL TFTがtraffic flow aggregateをDownlink方向のEPS Bearerにマッピングします
- Radio Bearer[9]はUEとeNodeBとの間でEPS Bearerのパケットを伝送します
- Radio Bearerが存在する場合、EPS BearerとこのRadio Bearerの間には 1対1 のマッピングが存在します
- S1 Bearerは、eNodeBとSGWとの間でEPS Bearerのパケットを転送します
- E-RAB(E-UTRAN Radio Access Bearer)は、S1 Bearerと対応するRadio Bearerの連結を指します
- S5/S8 Bearerは、SGWとPGW間でEPS Bearerのパケットを伝送する
- UEは、Uplinkにおけるtraffic flow aggregateとRadio Bearerとの間のマッピングを作成するために、UplinkパケットフィルタとRadio Bearerとの間のマッピングを格納し、UEはUplinkにおけるtraffic flow aggregateとRadio Bearerとの間のマッピングを作成する
- PGWは、DownlinkのパケットフィルタとS5/S8 Bearerとの間のマッピングを格納し、Downlinkのtraffic flow aggregateとS5/S8 Bearerとの間のマッピングを生成する
- eNodeBは、Radio BearerとS1 Bearerとの間の1対1のマッピングを格納し、UplinkとDownlinkの両方において、Radio BearerとS1 Bearerとの間のマッピングを作成すること
- SGWS1 BearerとS5/S8 Bearerの間の1対1のマッピングを格納し、UplinkとDownlinkの両方において、S1 BearerとS5/S8 Bearerの間のマッピングを作成する
- PGWは、PDN接続におけるEPS Bearerに割り当てられたTFTのDownlinkパケットフィルタに基づいて、Downlinkパケットを異なるEPS Bearerにルーティングする
- Downlinkデータパケットを受信すると、PGWは、一致するかどうか、まず、評価優先順位インデックスが最も低いDownlinkパケットフィルタを評価し、一致しない場合は、評価優先順位インデックスが高い順にDownlinkパケットフィルタの評価を進める
- この手順は、一致するものが見つかるまで実行されるものとし、その場合、Downlinkデータパケットは、一致するDownlinkパケットフィルタのTFTに関連付けられたEPS Bearer上でサービングGWにトンネリングされる
- 一致するものがない場合、Downlinkデータパケットは、いかなるTFTも割り当てられていないEPS Bearerを経由して送信されるものとする
- すべてのEPS Bearer(そのPDNのデフォルトEPS Bearerを含む)にTFTが割り当てられている場合、PGWは、Downlinkデータパケットを廃棄しなければならない
Next step
今回の記事はここまでで、次回はUEがEPCに接続する手順について解説していきたいと思います。
また、今後の展望としてはEPCの他のProcedureやIMS(LCS、SMS、Emergency call、etc...)、ETWS(緊急速報)についても記事を書いていく予定です。
Discussion