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次期C標準 (C23) の内容が固まったらしい

2022/07/24に公開

C23については最近のC言語と、次期C標準(C23)でも軽く紹介しました。

今回、C23入りする内容が大体固まったようなので改めて紹介します。

この記事を書いている時点での最新の公開されたWorking Draftは N2912 N3047 N3054 N3096です。ただし、C2y向けの最初のドラフトN3220もあり、そちらの方が実際の内容に近いかもしれません。

内容については会議参加者の投稿も参考にしています:

というわけで、C23に入る主な機能はこちらです:

C23に入る主な機能

  • POSIXの機能の取り込み: strdup, strndup, memccpy, gmtime_r, localtime_r
  • C++の機能の取り込み:
    • [[]] による属性:標準では [[nodiscard]], [[maybe_unused]], [[deprecated]], [[fallthrough]], [[noreturn]], [[_Noreturn]], [[reproducible]], [[unsequenced]] の8つ(実質7つ)。そのほかベンダー独自のもの [[vendor::attr]] も処理系次第で使える。
    • char8_t (ただしC++とは異なり、 unsigned char のtypedef)
    • u8 文字リテラル(注:u8文字リテラルはC11ですでに導入されている)
    • 定義済みの bool, true, false, static_assert, alignof, alignas, thread_local
    • 1引数の static_assert
    • auto (N3007)
    • constexpr による定数。関数は不可。 (N3018)
    • 基礎となる型を指定した enum (N3021)
    • nullptr (N3019)
    • digit separator
    • 二進数リテラル
    • = {} による初期化 (N2900)
  • 浮動小数点数
    • IEEE 754-2019への対応。これまではIEEE 754-1985を参照していた。
    • TS 18661-1, TS 18661-2およびTS 18661-4の一部は本文に取り込まれ、TS 18661-3(_FloatN 型など)はAnnex Hとして取り込まれた(以前のAnnex HはLanguage Independent Arithmeticだった)。
    • 追加される #pragma#pragma STDC FENV_ROUND, #pragma STDC FENV_DEC_ROUND などです。
  • K&Rスタイルの関数定義の廃止
    • また、定義が伴わない関数宣言の仮引数リストが空の場合は「関数が引数を取らない」ことを表すようになります(N2841)。
  • 必須の引数を持たない可変長引数関数を定義できるようになる(N2975
    • va_start の二番目の引数はoptionalとなる。
    • C++では以前から「必須の引数を持たない可変長引数関数の定義」ができ、SFINAEとかで活用されていましたが、 va_start を使えないため引数にアクセスすることはできませんでした。
  • 2の補数表現が必須となる
  • #elifdef, #elifndef
  • #embed (N3017)
    • ファイルの埋め込みができます。
  • #warning
  • typeof (N2927)
    • C++の decltype は参照型に依存するため、C言語には持ってこれませんでした。
    • キーワードにアンダースコアとかがつかないのは、各種コンパイラーが既に typeof キーワードを提供しているし変数名に使っているやつはいないだろ、というアレがあるんでしょう(適当)。
    • N2927では typeof の他に remove_quals というやつが入ります。一方で remove_quals ではなく unqual_typeof みたいな名前にしようぜ、という提案(N2930)もあり、結局どっちになったの? typeof の他に typeof_unqual も入ります。
  • unreachable() (N2826)
    • GCC/Clangの __builtin_unreachable() とかMSVCの __assume(false) とかC++23の std::unreachable() みたいなやつです。ある種の最適化に役立ちます。
  • _BitInt
  • memset_explicit
    • 以前から似たようなやつにAnnex Kの memset_s がありましたが、引数がちょっと違います。
  • スタックに確保しない可変長配列(ポインターとか引数とか)は必須の機能に昇格されます。
  • オーバーフローを検査する整数演算:ckd_add, ckd_sub, ckd_mul in <stdckdint.h> (N2683)
  • __has_include
  • popcountやclz, ctzなどのビット演算 <stdbit.h>: stdc_count_ones, stdc_leading_zeros, stdc_trailing_zeros など(N3022の一部)

個々の機能についてここで詳しい説明をするといくら時間があっても足りません。いくつかについては私の書いた記事があります。

他のいくつかについては、yohhoy氏の記事があるので紹介しておきます:

標準化委員会の中の人による記事も参考になります:

機能リストについてはcppreferenceの方にもまとまっているようです。

GCCの対応状況

最近のGCCでは一部の機能が -std=c2x で使えるようになっています。

GCC 10では

  • [[]] による属性:標準の [[deprecated]], [[fallthrough]], [[maybe_unused]] と、 [[gnu::ホニャララ]]
  • UTF-8文字リテラル:u8''

などが、GCC11では

  • <stdbool.h> で定義される true, falsebool 型を持つようになった
  • [[nodiscard]] 属性
  • __has_c_attribute

などが、GCC12では

  • digit separators
  • #elifdef, #elifndef

などが、GCC13では

  • nullptr
  • enum の拡張
  • auto
  • constexpr
  • typeof, typeof_unqual
  • alignas, alignof, bool, false, static_assert, thread_local, true のキーワード化
  • [[noreturn]] 属性
  • = {}
  • unreachable()
  • プロトタイプなし関数の削除

などが実装されています。

Clangの対応状況

Clangもバージョン9以降で -std=c2x によりC23の機能の一部が使えるようになっているようです。


この記事は随時アップデートしています。変更履歴はGitHubを見てください。

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