RFC 9637: IPv6文書作成空間の拡張
要旨
本文書は、文書作成に使用する追加のIPv6アドレス・プレフィックスの予約について説明する。今回のRFC 3849の更新では、既存の2001::db8/32
アドレス・ブロックに、さらに大きなプレフィックスを予約することで拡張する。/20
プレフィックスを追加することで、文書化された例は、より現実的で現在の幅広い展開シナリオをより正確に反映し、大規模ネットワークの最新の割り当てモデルにより近くなる。
本文書の位置付け
本文書はインターネット標準化過程の仕様書ではなく、情報提供を目的で公開する。
本文書は、インターネット・リサーチ・タスクフォース(IRTF)の成果物である。IRTFは、インターネット関連の研究開発活動の成果を公開している。これらの成果は、展開に適さないかも知れない。このRFCは、インターネット・リサーチ・タスクフォース(IRTF)のQIRG研究グループの合意を表す。IRSGによって公開が承認された文書は、インターネット標準のいかなるレベルにも該当しない。RFC 7841のセクション2を参照のこと。
文書の現在の位置付け、正誤表、フィードバックの提供方法に関する情報は、<https://www.rfc-editor.org/info/rfc9637>で入手できる。
著作権に関する通知
Copyright (c) 2024 IETFトラストおよび文書の著者として特定された人物。無断転載を禁じる。
本文書は、BCP 78および文書の発行日において有効なIETF文書に関するIETFトラストの法的規定(<https://trustee.ietf.org/license-info>)に従うものとする。これらの文書には、本文書に関するあなたの権利と制限が記載されているため、注意深く確認して欲しい。文書から抽出されたコード・コンポーネントには、トラスト法的条項のセクション4.eに記載されている改訂BSDライセンスのテキストを含まなければならず、改訂BSDライセンスに記載されているように保証なしで提供する。
1. はじめに
[RFC3849]は、文書作成で使用する予約プレフィックスとして、IPv6アドレス・プレフィックス2001::db8/32
を導入した。この予約の根拠は、文書作成の例を展開されたシステムに関連付ける際に、衝突や混乱の可能性を減らすことであった。
IPv6のグローバルな展開が拡大し、進化するにつれ、個々のIPv6ネットワーク展開シナリオも規模と多様性が増しており、この多様性と範囲の拡大を反映した文書作成が求められている。オリジナルの2001::db8/32
の予約は、多くの現実的な現在の展開シナリオを記述するには不十分である。
この追加のアドレス割り当てがなければ、文書作成プレフィックスは既存の組織や周知のISPにすでに割り振られている、または割り当てられているアドレス・ブロックから引き出すか、現在割り当てられていないアドレス・プールから引き出す必要がある。このような使用は、既存または将来のIPv6アドレス空間の割り振りや割り当てと競合する。文書作成目的のためにグローバル・ユニキャスト・アドレス・プール[RFC4291]から/20
IPv6アドレス・プレフィックスを予約することで、このような衝突を回避できる。
2. 要件言語
この文書のキーワード「MUST」、「MUST NOT」、「REQUIRED」、「SHALL」、「SHALL NOT」、「SHOULD」、「SHOULD NOT」、「RECOMMENDED」、「NOT RECOMMENDED」、「MAY」、および「OPTIONAL」は、ここに示すように、すべて大文字で表示される場合に限り、 BCP 14 [RFC2119] [RFC8174]の記述に従って解釈される。
3. 現在の割り振りと割り当てデータ
地域インターネット・レジストリ(RIR)が公開した割り振りと割り当てデータ([NROStatsReport]を参照)によると、2023年8月に記録された62,770件のIPv6ユニキャストの割り振りと割り当てのうち、25.9%は/32
より大きいサイズであった。最も一般的な割り振りまたは割り当てサイズは/29
で、24.8%で使用された。
エンドユーザに割り当てられた最も大きな4つの割り当ては/19
だったが、これらの割り当ては RIRがIPv6アドレス割り当てポリシーで固定/48
サイト・アドレス・プレフィックスの使用から脱却する前に行われたもので、近い将来、個々のネットワークで/20
以上が必要になる可能性は低い。現実的な広範なネットワーク展開に関連する文書作成ニーズは、/20
を予約することでカバーできると考えられる。
4. フィルタリングと適切な使用
文書作成プレフィックスは、設定や文書作成の例を中継するために使用するもので、実際のトラフィックに使用してはならず(MUST NOT)、グローバルに広告してはならず(MUST NOT)、ルーティングされた本番トラフィックや他の接続に内部で使用してはならない(SHOULD NOT)。文書作成プレフィックスは、bogon[BOGON]とみなされ、ルーティング広告で適切にフィルタリングする必要がある。
5. セキュリティに関する考慮事項
この特殊用途のプレフィックスは、bogon[BOGON]としてマークされ、考慮されるべきである。bogonプレフィックスの場合と同様に、送信元または宛先がこのプレフィックスに属するパケットは、パブリック・インターネット上では破棄し、認めない。
6. IANAに関する考慮事項
IANAは、「IANA IPv6 Special-Purpose Address Registry」[IANA-IPv6-SPAR]に以下を登録した。
アドレス・ブロック: 3fff::/20
名称: Documentation (文書作成)
RFC: RFC 9637
割り当て日: 2024-07
終了日: N/A
送信元: False
宛先: False
転送可能: False
グローバルな到達可能性: False
プロトコルにより予約済み: False
7.参考文献
7.1. 引用規格
[IANA-IPv6-SPAR] IANA, "IANA IPv6 Special-Purpose Address Registry", <https://www.iana.org/assignments/iana-ipv6-special-registry>.
[RFC2119] Bradner, S., "Key words for use in RFCs to Indicate Requirement Levels", BCP 14, RFC 2119, DOI 10.17487/RFC2119, March 1997, <https://www.rfc-editor.org/info/rfc2119>.
[RFC8174] Leiba, B., "Ambiguity of Uppercase vs Lowercase in RFC 2119 Key Words", BCP 14, RFC 8174, DOI 10.17487/RFC8174, May 2017, <https://www.rfc-editor.org/info/rfc8174>.
7.2. 参考規格
[BOGON] Team Cymru, "Unravelling the Mystery of Bogons: A senior stakeholder and IT professional guide", July 2023, <https://www.team-cymru.com/post/unravelling-the-mystery-of-bogons-a-senior-stakeholder-and-it-professional-guide>.
[NROStatsReport] "NRO Stats Reports", <https://ftp.ripe.net/pub/stats/ripencc/nro-stats>.
[RFC3849] Huston, G., Lord, A., and P. Smith, "IPv6 Address Prefix Reserved for Documentation", RFC 3849, DOI 10.17487/RFC3849, July 2004, <https://www.rfc-editor.org/info/rfc3849>.
[RFC4291] Hinden, R. and S. Deering, "IP Version 6 Addressing Architecture", RFC 4291, DOI 10.17487/RFC4291, February 2006, <https://www.rfc-editor.org/info/rfc4291>.
謝辞
シーペン・シャオ、クリス・カミングス、ラス・ホワイト、ケヴィン・マイヤーズ、エド・ホーリー、トム・コフィーン、スコット・ホッグからの貴重な意見に感謝する。
著者のアドレス
ジェフ・ヒューストン
APNIC
メールアドレス: gih@apnic.net
ニック・ブラリオ
Energy Sciences Network
メールアドレス: buraglio@forwardingplane.net
更新履歴
- 2024.8.28
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