アイデアは積極的に捨てよ

2025/01/28に公開

成功するSaaSやモバイルアプリなどのプロダクトを作るために必要なのは、「本当に価値あるアイデアを見極め、それ以外を大胆に捨てる」 ことにあります。

本記事では、アイデアを選別し磨き上げるプロセスと、なぜアイデアを捨てることが必要なのかを解説します。

ダブルダイアモンド

https://www.designcouncil.org.uk/our-resources/framework-for-innovation/

イギリスのデザインカウンシルのイノベーションのためのフレームワーク"ダブルダイアモンド"では、発散(アイデアを広げる)と収束(最良のアイデアに絞る)を繰り返すことで、最終的に最も効果的で洗練されたアイデアを見つけ出す手法です。

  1. 発見 (Discover)
    問題を単に仮定するのではなく、実際に理解する段階です。問題に影響を受ける人々との対話や観察を通じて情報を収集します。

  2. 定義 (Define)
    発見フェーズで得た洞察をもとに、課題を新たな視点で定義します。

  3. 開発 (Develop)
    明確に定義された課題に対してさまざまな解決策を考え、他の分野からのインスピレーションを得たり、共同デザインを行います。

  4. 提供 (Deliver)
    小規模でさまざまな解決策を試行し、効果がないものを排除し、効果的なものを改善していきます。

このプロセスは直線的ではなく、必要に応じて前のステップに戻ることがあります。


アイデアは実際に形にしないと良いアイデアか分からない

ダブルダイヤモンドで重要なのは 「多くのアイデアを試して、不要なものを捨て、最終的に洗練されたものを残す」 プロセスです。

ここで鍵となるのは、アイデアを実際に試すことです。

アイデアは単に思いついた段階では良し悪しを判断できません。実際に形にしてみること、つまり実際に実装をして試すことで初めて、アイデアが実現可能か、ユーザーに受け入れられるかが見えてきます。

繰り返す

ダブルダイヤモンドのプロセスは、1〜4のステップを何度も繰り返すことが重要です。

  1. 発見 (Discover)定義 (Define) のフェーズでは、問題の理解を深めたり、ユーザーからのフィードバックを得たりして、アイデアを再考します。初期のアイデアが本当に解決すべき問題に合致しているかどうかを見極めます。

  2. 開発 (Develop)提供 (Deliver) のフェーズでは、プロトタイプを作成し、それを実際に試してみます。この段階で得られたフィードバックや結果を元に、再度アイデアを改善します。

アイデアのつくり方 ジェームス W.ヤング

ジェームス・W・ヤングの『アイデアのつくり方』は、1988年に出版された、アイデア創出のプロセスについて述べた名著です。

以下のプロセスでアイデアを創出します。

  1. 知識を集める (情報収集)
    多角的な知識を集める。
  2. 情報を整理し、消化する (知識の整理)
    知識が整理できたら、それらを組み合わせて、新しいアイデアの種を見つけます。
  3. 潜在意識に頼る (アイデアの閃き)
    アイデアは無理に考え込むことで出るものではありません。散歩をしたり、休憩を取ったりしてリラックスすることで、潜在意識が働き、アイデアが閃きます。
  4. アイデアを形にする (実行に移す)
    アイデアを思いついたら、それを実際に作り出すことが次のステップです。アイデアをただ思い付くだけでは意味がありません。それを形にし、プロダクトとして具現化することで、初めてその価値が確認できます。
  5. アイデアは育てるもの (アイデアの進化)
    プロダクトのアイデアは最初から完璧なものではなく、実行していく中で育てていくものです。最初は小さなアイデアやプロトタイプでも、フィードバックを得て進化させることで、価値あるものになります。

ジョナサン・アイヴ流

ジョナサン・アイヴ(Jonathan Ive)は、Appleの元チーフデザインオフィサー(CDO)であり、特にMac、iPhone、iPad、iPodなどの革新的な製品デザインで広く知られています。彼のデザイン哲学や美学はAppleのアイコニックな製品群に深く影響を与えました。

  1. アイデアの創出
    アイヴは、機能が大事

  2. プロトタイプの作成
    アイヴは大量のプロトタイプを作成することを重要視しており、それを通じてアイデアを具体化していきました。
    初期のプロトタイプは手作りであることが多く、形を削ったり、加熱して曲げたり、手作業で細部を調整していきました。また、3Dプリンターなどのテクノロジーも使用し、より精密なプロトタイプ作成も行いました。これにより、形状や動作の感覚を実際に手に取って確かめることができました。

  3. プロトタイプの検証と改善
    アイヴはプロトタイプを繰り返しテストし、そのフィードバックをもとに改善を行いました。

  4. プロトタイプの洗練
    洗練された最終デザインを作り上げるために、アイヴは非常に多くの反復作業を行い、最終的には完成度の高いデザインに仕上げていきました。

まとめ

ダブルダイヤモンド、『アイデアのつくり方』、そしてジョナサン・アイヴのデザインプロセスから共通して学べることは、「大量のアイデアを試して、捨てること」 によって、最終的に洗練されたアイデアが生まれるという点です。

なぜアイデアを捨てることが重要か

アイデアを積極的に捨てることは、無駄を省き、本当に価値のあるものに焦点を当てるために必要です。最初に出したアイデアが必ずしも最良とは限りません。むしろ、多くのアイデアを試してみることで、どれが実際に機能し、どれが失敗するかを見極めることができ、その過程で得られる学びが次のアイデアに活かされます。捨てることで、新たな視点を得て、次のアイデアを洗練させていくことができます。

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