一人アドベントカレンダーをやりきる技術
12月になるとアドベントカレンダーという企画をどこかで目にするようになって、もう数年が経ちました。本来の「クリスマスまでの24日間をカウントダウンする日めくりカレンダー」にちなんで、1日1人が記事を書いて公開し、12月1日から25日までの期間に25人が記事を書くという企画です。この企画は技術系のコミュニティでよく行われ、参加者は自分の得意分野や興味のある分野について記事を書きます。
しかし、時々、本来は複数人で行うアドベントカレンダーを一人でやり遂げようとするちょっとおかしな人がいます。目的は自分を追い込むため、まとめて記事を公開したいため、宣伝のためなど、さまざまです。挑戦する人は少なからずいるようです。
私もその一人で、2021年と2024年(今年)に一人アドベントカレンダーに取り組みました。
一人アドベントカレンダーは非常にハードな取り組みで、途中で挫折する人もいますが、私はなんとかやり遂げることができました。この記事では、一人アドベントカレンダーをやり遂げるための技術や心構えについて紹介します。非常にニッチな内容ですが、世界中の3人くらいには役立つかもしれません。なお、内容は筆者の独断と偏見によるものです。
スケジュール
一人アドベントカレンダーでは、合計で25本の記事を書く必要があります。通常の1本のブログ記事執筆を短距離走とするならば、一人アドベントカレンダーはマラソンに相当します。そのため、スケジュールを組んで取り組むことが非常に重要です。
「1日1本書く」は原理的には可能、現実的には不可能
「12月になってから1日1本記事を書くのを25日続ければよい」という考えをよく見ますが、現実的には厳しいと感じます。
- 記事の品質管理: 「短い記事でも良い」と考えるかもしれませんが、記事として公開する以上、一定の品質を保ちたいと考えるのが人間です。特にブログなどを書き慣れている人ほどそうなります。また、記事は本文を書くより構成を考える方が時間がかかるため、短い記事だから早く書けるとは限りません。
- 時間の確保: 平日日中の仕事や休日の予定を忘れてはいけません。特に12月は仕事が繁忙期だったり、クリスマスや忘年会などのイベントがあるため、それらをすべて乗り越えなければなりません。
- 体調管理: 25日間毎日記事を書くのは、体力的にも精神的にもかなりの負担です。1日でも風邪を引いたり、体調が悪くなったりすると、リカバリは困難になります。また、「今日中に記事を書かなければならない」というプレッシャーと常に戦うことになります。
そのため、余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。
具体的なスケジュール
2024年の一人アドベントカレンダーは、以下のような方針で取り組みました。
- 平日は朝に時間を確保して記事を書く。平日5日で1記事を目標
- 休日は集中して記事を書く。休日2日で2記事を目標
この計算だと週3本の記事を書くことになり、25本の記事を書くのに約8週間かかります。2024年の場合は10月28日の週前後から開始する必要があります。
また、アドベントカレンダーのトピックにもよりますが、25日の間で統一したテーマで進行する場合は、事前に構成を考えておくことも重要です。内容の順序というより、話したいことをどのようにまとめるかという整理や、記事の長さに偏りが出ないようにする(極端に短い記事ができないようにする)といったことをあらかじめ考えておくとスムーズに記事執筆ができます。ただし、構成を考えるのも時間がかかるため、そこも加味してスケジュールを調整するのがおすすめです。
さらに、平日1記事、休日2記事というのもそれなりのペースでの進行となるため、体調不良ややる気の喪失に備えて、ある程度のバッファを積んでおくことも重要です。これらを加味した結果、2024年の一人アドベントカレンダーは以下のようなスケジュールで進行しました。
- 10月上旬:テーマの決定、構成の整理&各記事の簡単な内容洗い出しの開始
- 10月26日:記事1本目の執筆開始
- 11月末:力尽きて1週間休む
- 12月22日:記事25本目の執筆完了
2024年の一人アドベントカレンダーの執筆予定と実績
結果としては、バッファを使い切りつつも少し早めのスケジュールで完了することができました。
集中力の管理
先述した通り、一人アドベントカレンダーは文章執筆のマラソンです。個人的には、文字を書くのはコードを書くよりもある意味大変で、より多くの集中力を必要とします。集中力は意外とコントロールが難しいので、自分なりの管理方法が必要です。以下は私が実践していた方法の紹介です。
集中できる時間帯を確保する
特に平日は仕事や生活の時間が大部分を占めるため、作業するための時間を意図的に確保する必要があります。私は仕事が終わったあとに再度集中モードに切り替えるのが難しかったので、必ず朝に時間を確保するようにしました。この2ヶ月間のスケジュールはざっくり以下のような感じです。
- 5:00 起床
- 5:00-6:30 朝の日課+身支度+朝食
- 6:30-9:00 📝 記事執筆
- 9:00-18:00 仕事
- 18:00-21:00 運動+風呂+夕食
ここでは2時間半ほどを執筆時間として確保していますが、実際にはエンジンがかかるまで時間がかかり、集中して作業できていたのは最大でも1時間程度です。そのため、週4〜5日このペースで作業ができたとしても4〜5時間程度の作業時間となり、休日に集中してやる作業時間と同程度になりました。
場所を変える
私は9割ほどリモートワークをしているため、仕事中は自宅となります。そのため、記事執筆のときはメリハリをつけるために外出してカフェなどで作業するようにしていました。今年のアドベントカレンダーのためにスタバに払った金額は1万円や2万円ではきかないくらいの金額だったと思います。
ただ、この方法には別解があるようで、人間は同じ室内でも場所を変えると集中力が高まるという性質があるそうです。私はカフェで作業することが多かったですが、自宅の別の部屋に移動するだけでも効果があるかもしれません。
生成AIの活用
生成AIを活用することで、記事執筆の効率を上げることができます。以下は私が実際に活用した方法の紹介です。
✅️ 誤字脱字や冗長な表現の修正
これは非常に助かりました。アドベントカレンダーに限らず、自分で書いた文章から誤字脱字を見つけたり表現を修正するのは、なかなか大変な作業です。アドベントカレンダーの場合、記事の数も多いため、他の人にレビューしてもらうのも難しいです。しかし、生成AIは(API利用が許される限り)いつでもどれだけでも利用できるので、文章の修正を効率化するのに非常に役立ちました。
(なお、この文章も生成AIで修正しています)
ただし、意図しない修正が出てくることも稀にあります。そのため、バージョン管理システムなどを利用している場合は修正前に一度commitしておいて、修正後の差分を確認しやすくすると便利でしょう。
✅️ 知識の一般性確認
自分が言及しようとしている内容が一般的な解釈なのか、どのくらい前提にしてよいかなどを確認する壁打ち相手として役に立ちます。専門的な内容になるほど独自の解釈や発想が混ざってくるため、これをどこまで丁寧に扱うかなどの判断に迷うことがあります。生成AIは一般的な解や考え方を出すのが得意なため、活用することでよりわかりやすい文章を書く手助けになると思っています。
⚠️ 文章を書かせる
これは半分有効、半分無意味という感じでした。例えばGitHub Copilotを利用していると、自分が書こうとしている内容を先行して書いてくれる場合があります。この文章をもとにして修正することで、細かい表現を考える手間を省き、全体のスピードを加速させることができます。
一方で、全く真逆のメッセージが生成されることも頻繁にあります。特に新しい取り組みや技術についての記事を書く場合は、既存の概念と逆のことを伝えるようなメッセージが必要となることが多いです。生成AIは既存の文章などから学習した既存の概念に近い形の文章を生成するため、意図しない出力になることが多いです。逆に言うと、生成AIからは出力されないようなメッセージであることが新奇性の現れなのかもしれません。
まとめ
ここまで紹介しておいてなんですが、一人アドベントカレンダーは過酷な挑戦であり、万人にはおすすめできません。自分がやり遂げたときは2回とも「もう二度とやらない」と思いました。それでもやろうという奇特な方にとっては、この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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