Go公式の構造化ロガー(予定)のslogの出力を見やすくしてみる
Go言語ではながらく公式のログ出力にlog
パッケージが使われてきました。しかし昨今のクラウド環境などでのロギングでは構造化ログがほぼ必須であり、そのような流れを受けて公式の構造化ログパッケージ slog が提案されています。
この記事執筆時点で slog は正式に公式に取り込まれたわけではないですが、 1.21 のマイルストーンにはリストされており、それなりの確度で導入されると思われます。これを受けて自分が開発しているプロダクトでも徐々に slog の導入を進めています。
構造化ロギングのインターフェースが公式で定義されているのは良いことですし、JSONで出力する上でslogの利用は現状特に困ったことはありません。しかし同僚と slog の利用について話していたとき「開発時、コンソールに出力されるログが見づらい」という指摘がありました。確かに言われてみると(近代的なロガーと比べて)ちょっと読みづらい。
ということで slog の勉強も兼ねていい感じにログを整形して出力するハンドラを作ってみました。さらに同僚と話をしてみたところ、このあたりのコンソールのログ出力は結構人によって好みが分かれるようなので、だったら可能な限り出力方法を各々の好みにあわせられるようにカスタマイズ性を重視した設計[1]になっています
使い方
handler := clog.New(
clog.WithColor(true),
clog.WithSource(true),
)
logger := slog.New(handler)
logger.Info("hello, world!", slog.String("foo", "bar"))
logger.Warn("What?", slog.Group("group1", slog.String("foo", "bar")))
logger.WithGroup("hex").Error("Ouch!", slog.Int("num", 123))
こんな感じで指定すると、以下のように出力されます。
この他にもAttr(ログの属性値)の整形・出力をカスタマイズするための WithAttrPrinter
オプションや、
user := User{
Name: "mizutani",
Email: "mizutani@hey.com",
}
store := Store{
Name: "Jiro",
Address: "Tokyo",
Phone: "123-456-7890",
}
group := slog.Group("info", slog.Any("user", user), slog.Any("store", store))
linearHandler := clog.New(clog.WithPrinter(clog.LinearPrinter))
slog.New(linearHandler).Info("by LinearPrinter", group)
prettyHandler := clog.New(clog.WithPrinter(clog.PrettyPrinter))
slog.New(prettyHandler).Info("by PrettyPrinter", group)
indentHandler := clog.New(clog.WithPrinter(clog.IndentPrinter))
slog.New(indentHandler).Info("by IndentHandler", group)
ログのフォーマットを text/template
で指定する WithTemplate
オプションなどがあります。
logFmt := `{{.Elapsed | printf "%8.3fs" }} {{.Level}} 📣 📣 📣 <<< "{{.Message}}" 🗒️ `
tmpl, err := template.New("sample").Parse(logFmt)
if err != nil {
panic(err)
}
handler := clog.New(
clog.WithColor(true),
clog.WithSource(true),
clog.WithTemplate(tmpl),
)
slog.New(handler).Info("hello, world!", slog.String("foo", "bar"))
オプション
今のところ実装しているオプションです。
-
WithWriter
: 出力先のio.Writer
の指定 -
WithLevel
: ログレベルの設定。値は slog のLevel
と同じ。デフォルトはslog.LevelInfo
。 -
WithTimeFmt
: 時刻フォーマットの指定 -
WithColor
: 色付き、色なしの設定 -
WithColorMap
: 色の指定。 fatih/color を利用しているので、色の指定方法はそちらを参照。 -
WithSource
: ソースコードのファイルや行番号の出力の有無 -
WithReplaceAttr
: Attr(ログの属性値)の値の置き換え。 slog の ReplaceAttr と同じ。 -
WithTemplate
:text/template
を使ってログのフォーマットを指定 -
WithAttrPrinter
: Attr(ログの属性値)を整形・出力するための
おまけ:Handlerの書き方
slogはログの出力を Handler
というインターフェースで抽象化しています。標準では TextHandler
および JSONHandler
が提供されていますが、自分で独自の Handler
を実装することができます。
Handlerのインターフェースには以下のメソッドが必要です。(詳しくは公式ドキュメントを参照)
-
Enabled(context.Context, Level) bool
: 指定されたログレベルを出力するかどうかを判定します。これは早めにロギング処理をするかどうか判断することでパフォーマンスを向上させます。 -
Handle(context.Context, Record) error
: 実際のロギング処理を記述するメソッドです。ログの出力先やフォーマットなどはこのメソッド内で実装します。 -
WithAttrs
とWithGroups
: これらはログの属性値やグループを追加するためのものです。これらを実装することで、ログの属性値やグループを追加したHandler
を作ることができます。
Enabled
は愚直に与えられたログレベルが設定されたログレベル以上かを判定すれば良いだけです。 Handle
が実際にログを出力する部分なので、ここの実装次第で自由な形式のログを出力したり、あるいは別の処理(たとえばログを転送するなど)を行うことができます。
WithAttrs
はログの属性値を追加して、新たな Handler
を返すメソッドです。属性値は slog.Any
, slog.String
などの形式で与えられます。基本的には元のHandlerを完全にコピーして、属性値を追加したすれば良いだけです。
すこし注意が必要なのが WithGroup
です。これは与えた属性値を入れ子にするための機能です。具体的にどういうことかと言うと、
user := User{
Name: "mizutani",
Email: "mizutani@hey.com",
}
logger := slog.New(slog.NewJSONHandler(os.Stdout, nil))
logger.WithGroup("my_record").
Info("hello, world!",
slog.Any("user", user),
slog.Any("url", "https://example.com/hoge"),
)
というコードを実行すると
{
"time": "2023-06-12T08:47:44.52291+09:00",
"level": "INFO",
"msg": "hello, world!",
"my_record": {
"user": {
"Name": "mizutani",
"Email": "mizutani@hey.com"
},
"url": "https://example.com/hoge"
}
}
というように、Groupで指定された値( my_record
)に後続で指定された属性値が入れ子になって出力されるようになります。
これは属性値追加のメソッド .With
や、ログ出力のメソッド( .Info
や .Error
など)が呼ばれたときに slog.Group
で指定された場合も同様の挙動をすることを期待されています。つまり、
logger.WithGroup("my_record").With(slog.Any("user", user)).
Info("hello, world!",
slog.Any("url", "https://example.com/hoge"),
)
と書いても、
logger.Info("hello, world!",
slog.Group("my_record",
slog.Any("user", user),
slog.Any("url", "https://example.com/hoge"),
))
と書いても同じように出力されるように実装する必要があり、少し実装を工夫する必要があります。ちなみに本家 slog
の実装ではGroupやAttrが追加されるたびに都度バッファに my_record.user={XXX}
のような形式で書き込んで、そのHandler全体をコピーしているようです。 clog
では親Handlerを追跡できるようにし、ログの出力時に再構成するという方法で実装しています。
-
その代わりパフォーマンスについてはあまり重要視していません。これは開発時のロギングにフォーカスしており、本番環境のように大量のログをさばくような状況ではないということを前提としています。 ↩︎
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