S3でのCORSとCRRの違いを理解する
CORSとCRRはAmazon S3の2つの異なる機能であり、それぞれ異なる目的で使用されます。
CORSとCRRが何の略語かがわかれば、用途の違いも理解できます。
CORS (Cross-Origin Resource Sharing)
CRR (Cross-Region Replication)
以下にそれぞれの機能とその主な違いを表形式でまとめました。
CORS (Cross-Origin Resource Sharing) | CRR (Cross-Region Replication) | |
---|---|---|
目的 | ブラウザが異なるオリジン(ドメイン)のリソースにアクセスするためのメカニズムを提供します。 | S3バケット間でオブジェクトを自動的に複製(レプリケーション)するための機能を提供します。 |
主な利用シーン | Webアプリケーションが他のドメインのリソースにアクセスする必要があるときに使用します。例:Webページが異なるオリジンのS3バケットから画像をロードする場合など。 | データのバックアップ、ディザスタリカバリ、低レイテンシーでのグローバルアクセスを実現するときに使用します。例:東京リージョンのS3バケットのデータを自動的にオレゴンリージョンのバケットにコピーするなど。 |
設定箇所 | S3バケットのCORSポリシーに設定します。 | S3バケットのレプリケーション設定に設定します。 |
課金 | CORS自体の使用に対して追加料金は発生しませんが、データ転送費が発生する場合があります。 | CRRには追加のコストがかかります。これには、データ転送費とレプリケーションしたデータのストレージ費用が含まれます。 |
CORSは基本的に、異なるオリジン間でのリソースの共有を可能にするWeb技術の一部です。一方、CRRはS3の具体的な機能であり、異なるリージョン間でのデータのレプリケーションを可能にします。この2つの機能はそれぞれ異なる目的で使用され、しばしば共存することがあります。
CORS (Cross-Origin Resource Sharing) と CRR (Cross-Region Replication) の併用が考えられるシチュエーションの一つは、グローバルなWebアプリケーションが、ユーザーに対して最も近いリージョンからコンテンツを提供しようとする場合です。
CRRとCORSを併用するケースとして具体的には次のようなシナリオが考えられます:
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データのレプリケーション(CRR):ある会社がグローバルに展開するWebアプリケーションを運営しているとします。この会社はアプリケーションのコンテンツ(画像、動画など)をS3に保存しています。ユーザーに最適なパフォーマンスを提供するため、会社はS3のCRRを使用してコンテンツを全てのAWSリージョンにレプリケートします。これにより、ユーザーはそれぞれ最も近いリージョンからコンテンツを取得できます。
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クロスオリジンリクエストの許可(CORS):このWebアプリケーションはJavaScriptを使って動的にコンテンツをロードします。しかし、このJavaScriptコードが実行されているオリジン(例えば、
https://www.example.com
)とコンテンツを取得するS3バケットのオリジン(例えば、https://s3-us-west-1.amazonaws.com/mybucket
)は異なります。ブラウザの同一オリジンポリシーは、異なるオリジン間でのリクエストをデフォルトでブロックしますが、CORS設定を用いることで、S3バケットはhttps://www.example.com
からのリクエストを許可します。
このように、CORSとCRRは異なる目的のためのものですが、一緒に使われることで、ユーザー体験を向上させる効果を発揮します。
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