Snapdragon Spaces 対応のARグラスを比較する(MiRZA, ThinkReality A3)
MiRZA と ThinkReality A3の比較
Snapdragon Spaces Platformに対応するARグラスとして現在2種類利用することができます。
外観とスペック
項目 | Lenovo ThinkReality A3 | QONOQ MiRZA |
---|---|---|
外観 | ||
価格(スマホ除く) | 217,800円 | 248,000円 |
プロセッサ | Qualcomm Snapdragon XR1 | Qualcomm Snapdragon AR2 Gen 1 |
ディスプレイ | 1920x1080 45PPD(片目) | 1920x1080(片目) |
視野角(FoV) | 約45° | 約45° |
輝度 | 約200nits | 約1,000nits |
カメラ | 8MP RGB カメラ |
正面RGBカメラ×1(撮影画質:FHD) |
センシング用カメラ | デュアルフィッシュアイカメラ | 側面モノクロカメラ×2 |
重量 | 約130g | 約125g |
接続方式 | USB-C(有線接続) | 無線接続(対象機種のみ) |
対応機種 | Windows PC、motorola edge 30 pro | 現在はAQUOS R9 SH-51E |
全体的な仕様面では上記のような違いがあります。
スマートフォンについて
結論、現状はARグラス毎に対応するスマートフォンを用意しないといけない
最初に確認したのがスマートフォンの入替えです。MiRZA,ThinkReality A3は母艦としてSnapdragon Spacesに対応したスマートフォンが必要です。そしてそれぞれのARグラスに対応したスマートフォンはSnapdragon Spaces対応なのだから以下の組合せが動いてもおかしくないのでは?
- ThinkReality A3 × SHARP R9 SH-51E
- MiRZA × motorolla edge 30 pro
挿してみるだけなので気軽に試してみました。が結論は入替えはできず。今のところ両デバイスを体験するためにはスマホもセットで買う必要がありそうです。
もう少しだけ詳細を書いておきます。
ThinkReality A3 × SHARP R9 SH-51E
この組み合わせについては、ハードウェア的には実は問題ないのかもしれません。というのも、ThinkReality A3については普通のスマートフォンにつないでも何も起きないのですが、R9に接続すると以下のような表示がされます。
これは何らかの理由でA3が起動できない時に出るのですが、これが出ているという事は少なくてもSnapdragon Spaces対応のスマートフォンと認識している可能性があります。
問題は、ThinkReality A3を動かすためのLenovo製のアプリをセットアップする手段がないため、これ以上どうしようもないのですが(検証としてでもいいから試せさせてほしい。何か手段ないですか?Lenovo製アプリ入れる方法)。
MiRZA × motorolla edge 30 pro
こちらはだめでした。edge 30 proは、Snapdragon Spaces非対応のスマホと同じ挙動になりました。MiRZAはSnapdragon Spaces非対応の場合、Bluetooth接続でARグラスの設定が変更しか行えません。この組み合わせはそれが出てきてしまいました。
接続方式
両社のデバイスで大きな違いの1つが母艦となるスマートフォンとARグラスの接続方式です。
ThinkReality A3 | MiRZA |
---|---|
有線接続(長さ1.5m)。 | 無線接続 |
有線接続の場合ケーブルが邪魔になるという話は話題に上がります。どうしても取り回しが難しくなるシーンはありますが、ThinkReality A3については私は気にならないです。理由の1つがARグラスのホールド力が高いことだと思います。ThinkReality A3、MiRZA共になのですが、グラスのヒンジ部分がばね状になっており「つる」がしっかり頭を押さえる形になります。このため「ケーブルに引っ張られた眼鏡がずれる」といったことがあまり起きません。有線接続はなぜか安心します。安定性が確保されているので何かアプリに不具合が出た場合の原因が特定しやすいという面もあると思います。 | MiRZAはBluetoothとWifiによる接続を行っています。このためARグラス自体にバッテリーを搭載しており、充電にはType-C端子で行います。 なおこのType-Cの口は充電専用です。データ通信はおこなえません。 母艦であるスマートフォンとの接続自体はBluetoothで行われますが、ARグラスの描画に関する情報はWifi経由で行われる仕様のようです。無線の最大のメリットはケーブルがないため取り回しが非常に便利であることです。ただ、無線であるが故の接続性の不安定性を持っているように感じます。(この辺りは今後ファームで改善されるところもあるかもしれませんが)。 |
MiRZAについては、無線による接続の不安定さが利用者の体験に影響を与える可能性は少しありそうです。一方で無線で利用できるためアテンドもしやすく便利なのですが。。。
この点においてはThinkReality A3のような有線接続が優位になると考えられます。使い方にもよると思うのですが補助する人がいない場合は安定性を取ってThinkReality A3というシーンも出てくるかもしれません。
視野角や解像度(見え方に関する事)
両デバイスとも視野角や解像度は同じです。この点においては体験における映像品質も大きな違いはなく両デバイスともきれいです。ここではその違いをいくつかピックアップして紹介します。
明るさ
MiRZAがいいところとしてはARグラスの投影部分がクリアレンズになっているところです。このため、伊達メガネレベルで現実空間を見ることができます。これはスペック表からもわかるとおり、映像自体の輝度が高い描画が可能だから実現できています。ThinkReality A3と単純数値比較で5倍違います(ThinkReality A3の方が暗い)。ThinkReality A3や他のARグラスではこの輝度の低さを補うためにサングラスのようなスモークガラスで外光を少し落として補完する形になっています。そとがクリアに見えるという点でMiRZAは評価が高いと思います。とはいえ炎天下のようなあまりに明るいところでとなるとさすがに映像は見えにくくなります。
ちなみにMiRZA,ThinkReality A3共に外光を調整するためのアタッチメントはあります。
コンテンツの見え方
解像度や視野角はほぼ同じのため両対応のアプリは容易に作ることができると思います。MiRZAの方には見え方に関する指針などはないのですが、ThinkReality A3にはあるのでおそらくこちらをベースにコンテンツの設計をするといいと思います。
ホームアプリ
両デバイスのホームアプリについて
ThinkReality A3 | MiRZA |
---|---|
特に変更しなければ頭の向きでポインターを動かし、ポインターを一定時間ボタンの上に止めておくと確定する操作方法 |
スマホコントローラを操作しメニューを選択する操作方法 |
MiRZAアプリについては少し気になることがあります。
- 頭を水平にした状態ではMiRZAアプリの下部のメニューが見えない
気持ち下向きでないと画角にメニューが収まらない現象に遭遇しています(私の起動時の原点などからそうなっているだけかも知れませんが)このためかなりの頻度でメニューを探すことがあります。MirZAアプリの一番面積が大きいメニュー部分ですが×ボタンでとじることができます。その後はその下にあるメニューから再度表示ができるのですがこの部分頭を水平にしたときに視野から見切れています。このためうまく映っていないのかどうか最初戸惑う気がします。
性能
MiRZAでのアプリ起動方法
ここでいう起動方法というのは自分で作ったカスタムアプリを起動する時の話になります。現時点のMiRZAは起動が安定しない印象があります。無線というのもあると思うのですが、色々動かしているときに比較的安定してアプリが起動する手順みたいなものはわかってきました。
- スマホを起動
- MiRZAを起動
- MiRZAの接続を待つ
- 接続したらMiRZAアプリを起動する
- MiRZAアプリのメニューから作ったアプリを起動する
手順4.以降をすっ飛ばして、直接作ったアプリを起動してもアプリは正常に動いているが、MiRZAに映像が映らなかったり動作がおかしくなりがちです。また、起動直後に描画負荷が大きいコンテンツも安定しない傾向にありそうです。
実装で緩和する方法としては、Dynamic OpenXR Loaderを使った方法が有効に感じました。
アプリの起動タイミングとは別(少しずらす)に、OpenXRを開始するとかなり安定感が増した気がします。通常のARアプリはアプリの起動時に、OpenXRが開始され描画が始まるのですが、どうもこの処理の負荷具合でアプリの起動が不安定になっている印象があります。私はスマホにボタンをつけて後からOpenXRを開始するようにしたのですがこの方法はかなり安定していました。
Spatial Meshingの処理
空間認識した情報を可視化するアプリを作成し両デバイスで実行したところ同じ空間で実施するとThinkReality A3の方がかなり早く解析が進んでいました。空間認識をつかったオクルージョンを利用するアプリは実用に耐えられるかチェックが必要そうです。
ThinkReality A3も何度かファームのアップデートの中で最適化された結果が今ではあるのでMiRZAも今後こういったスペック面での改善がされるとは思います。
MiRZAの少し変わった使い方
Snapdragon Spaces Platform検証用に様々な機能をいれたコンテンツを作っているのですが、このコンテンツで少し面白いことができることに。1つのアプリの中で、Dual Render Fusionを利用すると「スマホを操作する人」、「ARグラスで操作する人」という2人で体験できるアプリを構築できることです。無線接続なので、スマホとARグラスそれぞれ別の人が持っても体験できます。
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