「ユニコーン企業のひみつ」は従来型企業の従業員にとって果たして救いになるのだろうか
おとぎ話
「ユニコーン企業のひみつ」を読んだとき、これはおとぎ話なのではないかと思った。
9.2 「Spotify の文化」や 9.3 「9.3 良い文化ってどんな感じ?」では Spotify の文化を説明している。
文化についての感覚を言葉で表現するのは難しい。まずは Spotify で働くっていうのはこんな感じだったな、という私の感覚を共有するところからはじめたい。
- あなたならやれるはず
- みんなのことも信じて大丈夫ですよ
- 私たちはみんな一緒にいますよ
- 誰もが助けるためにいるんです
- 恐れることはありません
- 応援してますよ
- 何か必要なことはある?
- オープンで誠実にいきましょう
- 他者を尊重しましょう
- 信頼していますよ
- それを決める権限がありますよ
- がんばって!
( p. 133より )
9 章「文化によって強くなる」ではテック企業 (Apple, Google, Facebook, Amazon, Spotify, NETFLIX, PIXAR) の文化を説明している。テック企業と言えど企業ごとに文化は異なるとしたうえで、そのうち Spotify の文化を説明したものである。
Spotify がこのような文化を作っている理由はある。それは、何を作るのか未定だから。何をどこの誰に売るのかも未定だから。それを手探りしながら進める必要があるから。これはリーンスタートアップでもお馴染みの「プロダクトマーケットフィット」を見つける仕事のことである。
そのためにチームに権限を委譲し、チームには時間もお金も(!)自由に使わせる。そのようなことができるのはチームを信頼しているから。そしてそれだけの仕事をチームに求めてるから。
もちろんそれにともなう責任もある。本書には書かれていないが、信賞必罰のようなこともあるのではなかろうか。
従来型企業あるいはエンタープライズ企業
( p. 153 10章「レベルを上げる」 で「従来型企業」という言葉が出てきたので「従来型企業」という言葉が印象に残っているんだけど、「従来型企業」はこの本でいう「エンタープライズ企業」のことでいいんですよね? )
エンタープライズ企業の特徴は以下のようなものがある (pp. 6-7)
- 社内業務の自動化
- 業務の効率化
- 予算があり、計画があり、プロジェクトがある
受託開発というか請負の仕事が当てはまる。私が過去から現在まで勤務してきた企業の仕事はすべて請負の仕事だった。
従来型企業の目的とテック企業の目的がそもそも異なるので比較にならないし、従来型企業はその目的を果すために従来型企業の仕事のやりかたが最適なので、従来型企業がテック企業の真似事をしても意味は無い。だから、多重請負 SIer とか、Excel しか触らない上流工程といった構造の業界にいるのであれば、冒頭のような「良い文化」を作る意味も必要もないのである。
Spotify の文化は理想郷なのだろうか
ひとによる。
従来型企業のように仕事を管理されるほうがやりやすいひとも居るだろう。Spotify の文化のように自由にやりたいひともいるだろう。果たして私はどちらなのか。たんに隣の芝生は青いように見えているだけではないのか。
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