PMBOK 第6版の概要まとめ
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは
PMBOKは、プロジェクトマネジメントの知識体系を体系化したガイドブックです。プロジェクト管理のベストプラクティスや標準的な手法をまとめたものと考えてください。
第6版の特徴
2017年に発行されたPMBOK第6版は、それまでの第5版から大きく進化しました。主な特徴は以下の通りです
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プロセスの追加
第5版では47個だったプロセスが、第6版では49個に増えました。新しく追加されたのは「プロジェクト知識の管理」と「リスクに対する戦略の実行」です。 -
アジャイル手法の統合
従来の予測型アプローチに加えて、アジャイルやその他の反復型アプローチについても言及されるようになりました。 -
プロジェクトマネージャーのコンピテンシー
技術的なスキルだけでなく、リーダーシップやビジネススキルの重要性も強調されています。 -
テーラリングの重視
プロジェクトの状況に応じて、PMBOKのプロセスや手法をカスタマイズすることの重要性が強調されています。 -
知識エリアの構成
10個の知識エリアは変わりませんが、各エリア内のプロセスが整理され、より論理的な流れになりました。
知識エリアとは
PMBOKでは、プロジェクト管理を10の知識エリアに分類しています。これらは
- プロジェクト統合管理
- プロジェクトスコープ管理
- プロジェクトスケジュール管理
- プロジェクトコスト管理
- プロジェクト品質管理
- プロジェクト資源管理
- プロジェクトコミュニケーション管理
- プロジェクトリスク管理
- プロジェクト調達管理
- プロジェクトステークホルダー管理
各知識エリアには、複数のプロセスが含まれています。
知識エリアの詳細
各知識エリアについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
1.プロジェクト統合管理
プロジェクト全体を統合的に管理するための知識エリアです。プロジェクト憲章の作成、プロジェクト管理計画の策定、プロジェクト作業の指揮・マネジメント、プロジェクトの監視・コントロール、統合変更管理、プロジェクトやフェーズの終結などのプロセスが含まれます。
2.プロジェクトスコープ管理
プロジェクトの範囲を定義し、管理するための知識エリアです。スコープの計画、要求事項の収集、スコープの定義、WBS(Work Breakdown Structure)の作成、スコープの妥当性確認、スコープのコントロールなどのプロセスがあります。
3.プロジェクトスケジュール管理
プロジェクトの時間管理に関する知識エリアです。スケジュール管理の計画、アクティビティの定義・順序設定、リソースの見積もり、所要期間の見積もり、スケジュールの作成・コントロールなどのプロセスが含まれます。
4.プロジェクトコスト管理
プロジェクトの予算と費用に関する知識エリアです。コスト管理の計画、コストの見積もり、予算の決定、コストのコントロールなどのプロセスがあります。
5.プロジェクト品質管理
プロジェクトの成果物や過程の品質を確保するための知識エリアです。品質管理の計画、品質保証の実施、品質管理の実施などのプロセスが含まれます。
6.プロジェクト資源管理
プロジェクトに必要な人的・物的資源を管理する知識エリアです。資源管理の計画、活動資源の見積もり、資源の獲得、チームの育成・管理、資源のコントロールなどのプロセスがあります。
7.プロジェクトコミュニケーション管理:
プロジェクト内外のコミュニケーションを管理する知識エリアです。コミュニケーション管理の計画、コミュニケーションの管理、コミュニケーションの監視などのプロセスが含まれます。
8.プロジェクトリスク管理
プロジェクトのリスクを特定し、分析・対応する知識エリアです。リスク管理の計画、リスクの特定・分析、リスク対応の計画・実施、リスクの監視などのプロセスがあります。
9.プロジェクト調達管理
プロジェクトに必要な製品・サービスの調達を管理する知識エリアです。調達管理の計画、調達の実施、調達のコントロールなどのプロセスが含まれます。
10.プロジェクトステークホルダー管理
プロジェクトの利害関係者を特定し、管理する知識エリアです。ステークホルダーの特定、ステークホルダーエンゲージメントの計画・管理・監視などのプロセスがあります。
プロジェクトマネージャーのコンピテンシー
PMBOK第6版では、プロジェクトマネージャーに求められる能力として、以下の3つの領域を強調しています:
テクニカルプロジェクトマネジメント
プロジェクト管理の技術的な知識やスキル。
リーダーシップ
チームを導き、モチベートする能力。
ストラテジー・ビジネスマネジメント
組織の戦略やビジネス環境を理解し、プロジェクトをそれらと整合させる能力。
アジャイルとの統合
PMBOK第6版では、従来の予測型アプローチだけでなく、アジャイルやその他の適応型アプローチについても言及しています。各知識エリアの中で、アジャイルやハイブリッド環境での適用方法についても触れています。
プロジェクト環境要因と組織プロセス資産
これらの要素がプロジェクト管理に与える影響について、より詳細に説明されています。プロジェクト環境要因には、組織文化、市場条件、政府や業界の標準などが含まれ、組織プロセス資産には、方針、手順、過去のプロジェクト情報などが含まれます。
プロジェクトガバナンス
組織のプロジェクトガバナンスの重要性が強調されており、プロジェクトの成功に対する組織全体の責任が明確化されています。
プロジェクトマネジメント事務所(PMO)
PMOの役割と重要性についても詳しく説明されています。PMOは組織内でプロジェクト管理の標準化や効率化を推進する部門です。
価値の創出
PMBOK第6版では、プロジェクトが単に成果物を提供するだけでなく、ビジネス価値を創出することの重要性が強調されています。
これらの要素を総合的に理解し、実践することで、より効果的なプロジェクト管理が可能になります。PMBOK第6版は、プロジェクト管理の包括的なガイドとして、世界中の多くのプロジェクトマネージャーに活用されています。
プロセスグループ
PMBOKでは、プロジェクト管理のプロセスを5つのグループに分類しています:
- 立ち上げ
- 計画
- 実行
- 監視・コントロール
- 終結
これらのプロセスグループは、プロジェクトのライフサイクルに沿って進行します。
はい、プロセスグループについてより詳細に説明いたします。PMBOK第6版では、プロジェクト管理のプロセスを5つのグループに分類しています。各グループの特徴と含まれるプロセスについて詳しく見ていきましょう。
立ち上げプロセスグループ
目的: プロジェクトや新しいフェーズを正式に開始し、リソースの投入を承認する。
主なプロセス:
- プロジェクト憲章の作成
- ステークホルダーの特定
特徴:
- プロジェクトの目的や目標を定義する
- 主要なステークホルダーを特定する
- プロジェクトマネージャーを任命する
- 初期のスコープや予算の概要を決定する
計画プロセスグループ
目的: プロジェクトの目標達成に向けた詳細な計画を策定する。
主なプロセス:
- プロジェクト管理計画の作成
- スコープの定義とWBSの作成
- アクティビティの定義とスケジューリング
- コストの見積もりと予算の決定
- 品質管理計画の作成
- 資源管理計画の作成
- コミュニケーション管理計画の作成
- リスク管理計画の作成
- 調達管理計画の作成
- ステークホルダーエンゲージメント計画の作成
特徴:
- プロジェクトの全体像を詳細に計画する
- 各知識エリアに関する具体的な計画を立てる
- ステークホルダーの期待を整理し、計画に反映する
実行プロセスグループ
目的: 計画に基づいてプロジェクト作業を実施し、成果物を作り出す。
主なプロセス:
- プロジェクト作業の指揮・マネジメント
- 品質保証の実施
- チームの育成・管理
- コミュニケーションの管理
- 調達の実施
- ステークホルダーエンゲージメントの管理
特徴:
- プロジェクト計画を実際の行動に移す
- チームメンバーを調整し、作業を進める
- リソースを効果的に活用する
- ステークホルダーとの関係を維持・強化する
監視・コントロールプロセスグループ
目的: プロジェクトの進捗を追跡し、必要に応じて是正措置を講じる。
主なプロセス:
- プロジェクト作業の監視・コントロール
- 統合変更管理の実施
- スコープの妥当性確認とコントロール
- スケジュールのコントロール
- コストのコントロール
- 品質のコントロール
- リソースのコントロール
- コミュニケーションの監視
- リスクの監視
- 調達のコントロール
- ステークホルダーエンゲージメントの監視
特徴:
- プロジェクトの進捗を継続的に評価する
- 計画からの逸脱を特定し、対処する
- 必要に応じて計画を更新する
- プロジェクトの健全性を維持する
終結プロセスグループ
目的: プロジェクトやフェーズを正式に完了する。
主なプロセス:
- プロジェクトやフェーズの終結
特徴:
- 全ての作業が完了したことを確認する
- 成果物を正式に引き渡す
- リソースを解放する
- 契約を終了する
- 学習した教訓を文書化する
- プロジェクト文書をアーカイブする
重要なポイント:
- これらのプロセスグループは、必ずしも順番に進行するわけではありません。多くの場合、重複したり反復したりします。
- 各プロセスグループは、プロジェクト全体だけでなく、プロジェクト内の個別のフェーズにも適用できます。
- プロジェクトの規模や複雑さに応じて、各プロセスの適用レベルは異なります。
- アジャイルやその他の適応型アプローチを使用する場合、これらのプロセスグループの適用方法が異なる場合があります。
PMBOK第6版の活用方法
- プロジェクト計画の立案時に参照する
- プロジェクト遂行中の問題解決のヒントとして使用する
- プロジェクトマネジメントの学習や教育に活用する
- PMP(Project Management Professional)資格の取得準備に使用する
PMBOK第6版は、プロジェクト管理の世界標準として広く認知されています。ただし、これはあくまでガイドラインであり、すべてのプロジェクトに同じように適用できるわけではありません。プロジェクトの特性や組織の文化に合わせて、適切にカスタマイズすることが重要です。
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