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Eaton UPSのバッテリー充電技術、ABMについて調べてみた

2023/11/14に公開

導入

UPSを使う上で誰もが気にするバッテリー寿命。最近はリチウム電池を搭載した長寿命なUPSが出ているが、まだまだお値段が高くご家庭に導入するにはハードルが高い。
我が家にはEaton OEMなHPEのUPSがあり、どうやらABMという充電技術が用いられているらしいので、詳しく調べてみることにした。

https://www.eaton-daitron.jp/techblog/2071.html

日本の代理店が公開しているABM Technologyに関するページがあるが、端折られておりすべての詳細を知ることができないため、本国のPDFから情報をまとめてみた。

https://www.eaton.com/content/dam/eaton/products/backup-power-ups-surge-it-power-distribution/backup-power-ups/power-xpert-9395/Eaton-ABM-White-Paper-AP162001EN.pdf

結論だけ知りたい人向け

ABM Technologyとは、一言でまとめると「これまで満充電になってもずっと充電し、過充電になっていた電池に対して、満充電になったら一定の期間をあけて自然放電させ、再度充電すること」である。

詳しく教えてほしい人向け

バッテリーの種類

まずバッテリーにはいくつか種類があり、車などに用いられる鉛蓄電池などの湿電池、UPSなどに用いられるシールドバッテリーなどがある。このうち、シールドバッテリーの正式名称はVRLA、valve-regulated lead-acid battery、制御弁式鉛蓄電池と呼ばれる。
ABM Technologyは後者のVRLAバッテリーにのみ効果を発揮する。

フロート充電とABM

旧来から用いられている充電方式は、フロート充電として知られている。これは、バッテリーが満充電になった後も充電し続け、常に満充電の状態を保つものである。しかし、過充電により劣化が進むことも同時に課題とされてきた。
ABMではそれを解決するために、満充電になった後、一定の期間を開けて、自然放電により電圧が降下後、再度充電することにより寿命を延ばす。

ABMの流れ

Charge Mode

Charge Mode、充電モードは次の条件下で動作する。

  • UPSが起動した際
  • 15秒以上の電源断が発生し、UPSが稼働した際
  • バッテリーが交換、もしくはバッテリーブレーカーが開き、閉じた際

チャージモードは最大100時間かけ、所定のフロートレベル(電圧)まで充電する。
ここで所定の電圧に達しない場合、熱暴走の可能性があるとみなされ、アラームが鳴る。

ABM Float Mode

その後、24時間のカウントが始まり、その間一定の電圧を維持する。
24時間後、15%の負荷率で360秒、50%の負荷率で45秒間の順にテストされる。テストデータは収集され、以前のデータと比較される。
負荷に対し一定の電圧を下回るとアラームが鳴る。
テスト後再び24時間一定の電圧を維持する。

Rest Mode

Rest Modeは48時間のFloat Modeの後に開始される。
Rest Modeは最大28日続き、以下のような利点がある。

  • バッテリーに常に給電されないため過充電が起こらない
  • 充電器がオフなので熱暴走が起きない
  • リプル電流により損傷しない
  • バッテリーの正極の腐食が大幅に減少する

Rest Mode中バッテリーの電圧は常に監視されており、次のイベントが発生した際に充電が再びされる。

  • 15秒以上の電源断が発生し、UPSが稼働した際
  • 10日以上経過後に一定の電圧を下回った場合(10日以内に一定の電圧を下回った場合はアラームが鳴る)
  • 28日間経つ
  • バッテリーが交換、もしくはバッテリーブレーカーが開き、閉じた際

懸念点はないの?

27日も自然放電させた後のバッテリー容量低下は、5%未満に抑えられているとのこと。15分のバックアップ時間であれば30秒に相当する。逆に5%に抑えるために28日間という設定らしい。

実績とか実験データとか

Eatonは27年前からこの技術を採用していて、技術的、経験的な裏付けがあるとのこと。

図に示されているのは、40度の環境で加速劣化試験の結果であり、7か月目を過ぎたあたりから従来の充電方式との差が出ていることが示されている。

この図は20年以上前に第三者のバッテリー製造業者によって行われた検証結果とのこと。

この図において23/23日と示されているのが従来の充電方式(フロート充電)で、ABMは12/23日で示された曲線である。理想的な25度という環境ならば、理論上寿命は6年延びるとされている。
一般のご家庭などでの環境を30度と見積もると、理論上寿命は4年延びることになる。

まとめ

無効にすると保証切らすぞ!って設定画面で出てくるだけのことはあると納得しました。うちの5PXに使われているバッテリーが日立系列のHR1234W F2というバッテリーで、もっと寿命の長いHRL1234W F2にしたらどれくらい寿命伸びるのかなと思ったり。ただ4年で交換時期だぞーって知らせて来るらしいので、定期的に変えたほうがいいのは変わらない気がしたり。APCはバッテリー充電制御が下手って話も聞くので、Eatonでよかったって思ったり。いずれにせよ使いつぶしだとしてもLongのバッテリーは嫌だなって結論に落ち着きました。

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