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【流体力学:第1回】連続の式(質量保存則)

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【流体力学:第1回】連続の式(質量保存則)

流体力学を学ぶにあたって,最も根本的な法則の一つが「質量保存則」です.質量は勝手に生まれたり消えたりせず,常に保存されるという物理の基本原理から導かれるのが 連続の式 と呼ばれる関係式です.今回はその導出を一歩ずつ解説していきます.

1. 流体の「体積」と「質量」の関係

流体の中のある領域(体積)を考えます.このとき,その領域内の流体の質量

m(t) = \int_{V(t)} \rho(\boldsymbol{x},t) dV

で表されます.

  • \rho(\boldsymbol{x},t) : 時間 t における流体の密度
  • V(t) : 考えている流体領域(時間により変化する可能性がある)

2. 質量保存の原理

ここで,質量保存の原理は,

\frac{d}{dt} m(t) = 0

と表され,「流体全体の質量は時間に依存せず一定である」ことを意味します.

3. 制御体積による考え方

流体力学ではしばしば「制御体積 (control volume)」を考えます.制御体積は空間中の固定された領域で,その中に出入りする流体を観察します.

制御体積 V 内の質量の時間変化率は

\frac{d}{dt} \int_V \rho dV

で表されます.ここで重要なのは,流体が制御体積の内側に流れ込んだり,流体が制御体積の外側に流れ出たりすることで質量は変化するという点です.

任意空間の境界面 S = \partial V を通して流出入する質量流束は,速度ベクトル \boldsymbol{u} 及び外向き法線ベクトル \boldsymbol{n} を用いて

- \int_S \rho \boldsymbol{u} \cdot \boldsymbol{n} dS

となります.したがって,質量保存の関係式は以下のように書けます.

\frac{d}{dt} \int_V \rho dV = - \int_S \rho \boldsymbol{u} \cdot \boldsymbol{n} dS

ガウスの発散定理

体積積分同士で比較するため,ガウスの発散定理を用います.ガウスの発散定理を使うと,面積積分を体積積分に書き換えることができます.

\int_S \rho \boldsymbol{u} \cdot \boldsymbol{n} dS = \int_V \nabla \cdot (\rho \boldsymbol{u}) dV

したがって,

\frac{d}{dt} \int_V \rho dV = - \int_V \nabla \cdot (\rho \boldsymbol{u}) dV

積分形式から微分形式へ

先ほどの式を移項して,

\frac{d}{dt} \int_V \rho dV + \int_V \nabla \cdot (\rho \boldsymbol{u}) dV = 0

任意の体積 V に対してこの関係が成立するためには,被積分関数が0である必要があります.よって,

\frac{\partial \rho}{\partial t} + \nabla \cdot (\rho \boldsymbol{u}) = 0

が導出できます.これが連続の式(質量保存則の微分形) です.

非圧縮性流体

もし流体が非圧縮性で,密度 \rho が一定(時間・位置に依存しない)ならば,

\nabla \cdot \boldsymbol{u} = 0

となります.これが非圧縮性流体における連続の式であり,「流体は体積を変化させない」という性質を数学的に表しています.

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