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領域理論の文献紹介

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はじめに

はじめまして。記事を開いていただきありがとうございます。
本記事では領域理論の文献紹介を行います。

ただ、もともと別の記事で書いていた領域理論の文献紹介を切り出して記事にしましただけのものです。

よろしくお願いします。

領域理論の文献紹介

領域理論とは、有限近似の理論です。数学的には、順序理論、位相空間論、圏論と深く関わりがあります。

まず、領域理論に興味を持ちましたら、ぜひ私の記事を読んでいただけるととても嬉しいです!
私の記事では、計算的直感を養うためのモチベの説明を丁寧に行っており、ついでにイデアル完備化まで軽く触れており、定理1の非常に簡単な証明も載せています。

https://zenn.dev/mineel5/articles/d6bc627587b72b

領域理論はプログラム意味論の文脈で扱われることが多く、純粋に領域理論の数学的トピックを中心に扱っている教科書は非常に少ないです。
その中でも、Mathematical Theory of Domainsは非常におすすめで、そこまでコンピュータサイエンスしてないので読みやすいかと思います。

また、教科書ではありませんがAbramskyとJungのDomain Theoryはあらゆる文献で引用されている非常に有名な論文(サーベイ?)です。
領域理論に関するトピックを非常に網羅的に扱っており、この中から興味のあるトピックを選んで読むのも良いかと思います。

プログラム意味論にも興味があれば、やはりDomains and Lambda-CalculiSemantics of Programming Languages: Structures and TechniquesCategories for Typesをおすすめしたいです。
いずれも圏論的な説明がしっかりされていて、領域理論にもプログラム意味論にも非常に詳しいです。
(最初のはネットに謎のpdfが落ちているので誰でも読めます。)

もう少し順序の側面を追求して、束論とかも興味のある方はIntroduction to Lattices and Orderはぜひ一度は読んでいただきたい良書です。
順序、束論、領域理論、コンピュータサイエンスって感じの本です。

あとは、Scottの伝統的な教科書(?)のContinuous Lattices and Domainsも有名な本です。
Scottは領域としてまず連続束を提案して、その理論を位相空間論にも触れながら詳しく展開しています。

領域理論といえばScott位相を代表とするorder-theoreticalな位相空間論の話題も見逃せません。
いわゆるpointless topologyと呼ばれる、開集合をどのような点の集まりかではなく開集合同士の関係により定義し、非ハウスドルフ空間のもとで理論を展開する、幾何的な位相空間論とは一風変わった位相空間論と大きく関係があります。
この辺はNon-Hausdorff Topology and Domain Theory: Selected Topics in Point-Set Topologyが詳しかったです。
(ちなみに、Scott位相のモチベについてはこの記事の前提知識パートで割と丁寧に解説しています。)

https://zenn.dev/mineel5/articles/c3b5c13f52cd62

和書では、純粋に領域理論を解説したものは存じ上げないのですが、プログラム意味論は少しだけ領域理論に触れており、コンパクトなSemantics of Programming Languagesという感じで初学者も取り掛かりやすいです。
他にも、位相と論理でも少し領域理論に触れていました。

おわりに

お疲れ様でした。ここまで読んでいただきありがとうございました。

領域理論はなぜか驚くほど和書が少なく、また洋書含めてもコンパクトな本が非常に少なく入門しづらいと感じるかもしれません。
プログラム意味論への応用は領域理論におけるごく一部のトピックにすぎませんが、それでも領域理論とは密接に関わる内容ですので学ぶ際は一緒に学ぶのがよいようにも思えます。
そういう意味では、領域理論の内容は非常に少ないものの、和書の中で最も数学的に厳密かつ網羅的かつ分かりやすくプログラム意味論の解説を行っている横内先生の『プログラム意味論』を読むのが一番よいかもしれません。

改めて、本当にありがとうございました。

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