🏫

【東京大学ブロックチェーン公開講座第1週】ブロックチェーン概論

2024/04/10に公開

2024年東京大学ブロックチェーン公開講座から学んだこと・気になったことを書いていきます。

本講座は無料かつオンラインで受講可能で、週1回100分の講義が12月まで行われるそうです。また、後半ではグループワークや修了証としてSBT(Soul Bound Token:譲渡できないNFT)の配布を予定しているそうです。

参加希望の方はこちらをのぞいてみてください。

なお、本記事は講座の要約ではなく、講座のポイントを抽出しつつ、筆者の理解や考察を添えてアウトプットしたものとなります。講座内容との差異や筆者の主張(オレンジ背景)が含まれます。

筆者 is 誰

フリーのWebアプリケーションエンジニアで、2年ほど前からブロックチェーン関連プロジェクトに携わっています。EVM(Ethereumベース)ブロックチェーンを利用して、DApps(ブロックチェーンと連動して動くWebアプリケーション)の開発をしてきました。

ブロックチェーン技術やスマートコントラクトをゴリゴリやっているわけではなく、Webアプリ側からブロックチェーンに触れています。

本講座を受講する目的
  1. 体系だったブロックチェーンの知識を身につけたいと感じていたため。2年間に知識ゼロでブロックチェーン関連開発の現場に飛び込んで走りながらキャッチアップしてきたため、知識を整理して不足があれば埋めていきたい。
  2. 東京大学という日本の最高学府でどんな教え方をするのか気になったため。
  3. プロジェクト外の人と関わることでネットワークや気づきを得るため。

ブロックチェーン概論

ブロックチェーンが他の仕組みと圧倒的に異なる点は『トラストレス』であること。トラスト(信用)がレス(ない)、つまり『信用なしに運用されるシステム』。

信用(トラスト)とは何か

実は、現実世界の多くの活動は『信用(トラスト)』によって成立している。
たとえば焼肉屋で松坂牛を注文するとき、売り手と買い手の間では暗黙の『信用』が存在する。

  • 買い手:1000円払って(おそらく)本物の松坂牛が入手できることを期待する
  • 売り手:松坂牛と引き換えに(おそらく)偽物でない1000円が手に入ることを期待する

これは相手であったり、焼肉屋やクレジットカードの運営会社であったり、警察や国家であったり、何かを『信用する』ことで初めて達成される。もしお金を渡しても肉が手に入るか分からない(=信用がない)場合、取引を成立させるのは困難になる。

トラストレスとは何か

『信用』は実世界のいろんな仕組みの根底であることが分かったが、この『信用』がなくても取引を成立させる仕組みがブロックチェーン。

上記の例だと、たとえば肉にQRコードがついており、生産者や生産地、育成条件などがトラックできればその肉の正当性を確かめることができるし、逆に対価として支払われたお金が偽物でないことも確認できる。

以上を踏まえると、ブロックチェーンは「使うことで革新的に何かが便利になる」というより「エンドユーザーができることは大きく変わらないかもしれないが、根底の『不確かさ』を排除する仕組み」であって、インフラ的な要素が強い。

トラストレスの実現方法

以下の3点によって、属人性(属組織性)をなくし、お互いにどこの誰かもわからないサーバー達が、決められたルールに沿って行動することを担保する。

P2P

特定の個人や集団がサーバーをホストしてサービス提供するのではなく、世界中の個人や集団がサーバーを持ち寄って構成されたサーバー群で提供される。構成サーバー(ノード)同士が直接通信し合う出入り自由のネットワーク。

コンセンサスアルゴリズム

ネットワークの参加者サーバー(ノード)が従うべきルールを規定する。
『正しいブロック(データのかたまり。ブロックチェーンでは、データはブロック単位で保存される)』のチェックリストのようなもの。

経済的インセンティブ

ネットワーク参加者が上記ルールに従うインセンティブとして、経済的な利益を提供する。たとえばビットコインネットワークにおいては、ブロックを正しく生成すること(マイニング)で報酬(ビットコイン)を得られる。

ブロックチェーンの特徴

耐改ざん性

各ブロックは前のブロックのハッシュ値を保持している。
ブロックに含まれるデータ(トランザクション)を書き換えるとハッシュ値も変わるので、改ざんするにはそれ以降のすべてのブロックを書き換える必要性がある。これは現実的に不可能であると考えられる。

高可用性

不特定多数の参加者によるサーバーネットワークのため、特定の個人や集団の意思によってサーバーを止めたり仕様を変えたりできない。

透明性

ブロックに書き込まれたデータは公開されるため、誰でも参照・検証できる。

ビットコイン

ビットコインは、2009年にローンチされた非中央集権型の通貨。価値がついており支払いにも利用できるが、変動の幅(ボラティリティ)が大きい。

イーサリアムとスマートコントラクト

ビットコインはブロックチェーン上に送金履歴のみをもつが、イーサリアムのようにプログラムの実行環境として拡張したものも存在する。ブロックチェーン上で保持・実行されるプログラムがスマートコントラクト。

スマートコントラクトを使うことで、実質的に管理者が存在しないトラストレスなシステム(ネットワークもプログラムも管理者不在で実行される)を作ることができる。一方、スマートコントラクト自体にバグがあっても変更が難しいなどのデメリットもある。

イーサリアムでは一般的なスマートコントラクトの規格としてERCを整備している。

ERC20

BTCやETHなど、通貨やポイントとしての性質をもつトークンの規格。トークン同士はおなじ物として扱われる(持ち主によらず1BTCの価値は変わらない)。

ERC721

NFT(Non Fungible Token)の規格。ユニークなIDをもつトークンで、トークン同士がそれぞれ異なるものとみなされる。外部への参照をもつことができ、デジタルアートなどに紐づけて売買されている。

不動産や絵画など、これまでデジタルで取り扱うことが難しかったものをNFTとしてデジタル化し取引の流動性を上げる、といった活用が期待されている。

ステーブルコイン

ビットコイン(BTC)をはじめとした暗号資産は値動きが激しく、決済手段として利用するにはハードルが高い。この課題を解決するために、法定通貨と同じ価格になるように設計されたトークンがステーブルコイン。

価格の固定には主に2つの手法がある。
法定通貨担保型:発行数と同額の法定通貨を裏づけ資産として保持(トラストポイントが発生)
仮想通貨担保型:発行数と同額(法定通貨ベース)の暗号資産を裏づけ資産として保持(トラストレス)

ブロックチェーンの分類

ブロックチェーンネットワークを構成するノードの管理者という視点で、3つに分類できる。ビットコインやイーサリアムはパブリック型。

パブリック型:管理者がおらず、不特定多数のユーザーがネットワークに参加できる
コンソーシアム型:複数の企業などが管理者となり、許可されたユーザーのみがネットワークに参加できる
プライベート型:単一の企業などが管理者となり、許可されたユーザーのみがネットワークに参加できる


第1回ここまで

本記事は、学んだことを自分の言葉で説明するスタイルのため、誤記・誤解などあればご指摘いただけると嬉しいです。

第2回以降の記事を公開しました!
【東京大学ブロックチェーン公開講座第2週】ビットコイン①
【東京大学ブロックチェーン公開講座第3週】ビットコイン②
【東京大学ブロックチェーン公開講座第4週】ビットコイン③

Discussion