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AI推進時代におけるAWS・GCP・Azureのシェア変化を考える

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クラウドプロバイダーの市場シェア推移

Synergy Researchのデータによると、2018年Q4から2023年Q4までの期間で、クラウド市場には明確なトレンドが見られます。


(出典)Synergy「Cloud Market Gets its Mojo Back; AI Helps Push Q4 Increase in Cloud Spending to New Highs」

2025年5月12日の記事ではAWSのシェアは30%を切っています。


(出典)クラウドインフラのシェア、AWSがついに30%を切る。Azureは22%と着実に成長。2025年第1四半期、Synergy Researchの調査結果

主要プロバイダーのシェア動向

  • AWS (Amazon): 一貫して30%以上のシェアを維持し市場をリードしていましたが、直近では若干のシェア減少が見られます(34%→29%程度)。
  • Azure (Microsoft): 15%から22%へと着実にシェアを拡大し、最も成長率の高いメジャープレイヤーとなっています。
  • GCP (Google): 7%程度から12%程度へと緩やかにシェアを増加させています。
  • その他のプロバイダー: Alibaba、Salesforce、IBM、Oracleなどはいずれも10%未満で、大手3社への集中が進んでいます。

このデータから、Azureの成長が顕著であり、AWSの優位性は維持されつつもシェアの差は縮まりつつあることがわかります。

各クラウドの現状とAI分野での強み

AWS(Amazon Web Services)

  • 現状: クラウド市場で最大のシェア(約29%)を持ち続けていますが、競合他社との差は縮小傾向にあります。
  • 強み: 仮想サーバやストレージなどインフラ領域に強み。幅広い用途に対応できる総合クラウド。
  • AI分野: SageMakerなどのAI/MLサービスを展開し、最近ではBedrock(生成AIプラットフォーム)を強化していますが、AI特化型というよりはインフラ基盤の上にAIサービスを追加する形となっています。

Azure(Microsoft Azure)

  • 現状: エンタープライズ市場で強く、全体シェアは着実に成長し22%程度になっています。AWSとのギャップを急速に縮めています。
  • 強み: 企業向けソフトウェアやID管理との連携が容易。OpenAIとの戦略的パートナーシップがAIサービス強化の大きな武器に。
  • AI分野: 企業の業務システムや生産性向上ツールとAIを組み合わせたサービス展開が得意。Azure OpenAI ServiceやCopilotなど、生成AI統合サービスで市場を先導。

GCP(Google Cloud Platform)

  • 現状: シェアはAWS・Azureに次ぐ3位(約12%)ですが、着実に成長しており、特にAI分野では存在感を増しています。
  • 強み: 機械学習やビッグデータ、AI分野での技術力が高い。TensorFlow、TPU、Vertex AIなど独自技術を活用したAIサービスが充実。
  • AI分野: 研究開発やデータサイエンス、生成AIなど先端分野での利用が多く、GoogleのAI研究力を直接活用できる点が強み。

企業の成り立ちが与える影響

各クラウドサービスの特徴や戦略には、企業の成り立ちが色濃く反映されています。

  • AWSは、AmazonがECサイト運営のために培った大規模インフラ運用のノウハウを活かし、インフラ志向のサービス展開が中心です。この強みがこれまでの市場リーダーの地位を確立しました。

  • Azureは、Microsoftが長年ソフトウェア開発で築いた企業向けソリューションや開発ツールとの連携が強みです。企業のIT基盤としてのWindowsやOfficeの存在が、Azureへの移行をスムーズにしている要因であり、これがグラフで見られる継続的な成長につながっています。

  • GCPは、Googleが検索エンジンやYouTubeなど大規模Webサービス、そしてAI研究で培った技術力を活かし、AI・データ処理分野に特化しています。このAI分野での先行投資が、現在のAI革命の波に乗る形で徐々にシェア拡大につながっています。

AI時代におけるシェア変化予測

Synergy Researchのデータとクラウド市場の動向から、今後のシェア変化を予測します:

  • AWSは全体シェアで引き続き市場リードを維持しますが、AI特化案件ではGCPやAzureにシェアを一部奪われる傾向が続くでしょう。グラフでも見られる通り、わずかながらシェアが徐々に減少している傾向があります。

  • Azureはグラフで最も顕著な成長を見せており、この勢いはAI時代においても継続すると予想されます。特にOpenAIとの連携による企業向けAIサービスの強化により、エンタープライズ市場でのシェア増加が続くでしょう。

  • GCPはAI分野での技術的優位性を活かし、特に研究開発やデータサイエンス分野でシェア拡大が期待されます。グラフでも着実な成長が見られ、AI推進によりこの傾向は加速する可能性があります。

まとめ

Synergy Researchのデータが示す通り、クラウド市場は大手3社への集中が進む一方で、各社のシェア比率は徐々に変化しています。AI推進が進むことで、GCPとAzureのAI分野でのシェアが拡大し、AWSは全体シェアを維持しつつもAI分野での競争が激化すると予想されます。

特に注目すべきは、Azureの一貫した成長トレンドと、GCPのAI分野での技術力です。クラウド選定の際は、各社の成り立ちや強み、そして市場動向を理解し、自社のニーズに最適なサービスを選ぶことが重要です。AIがクラウド支出を押し上げている現在、適切なクラウド戦略がビジネス競争力を大きく左右する時代となっています。

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